音楽ナタリー Power Push - 日本工学院ミュージックカレッジ presents Summer Rise 2015

ザ・チャレンジ×伊東歌詞太郎×学生座談会&レポートで振り返る「Summer Rise 2015」

沢田チャレンジ×伊東歌詞太郎×日本工学院八王子専門学校 ミュージックカレッジ コンサート・イベント科学生 座談会

どっちがどっちのお客さんかわからない

──学生の皆さん、本日は長丁場お疲れさまでした。まずは自己紹介をお願いします。

嶋田一輝 コンサート制作コースの嶋田一輝です。今回は運営の取りまとめをしてました。

天野皓太 コンサートPAコースの天野皓太です。今回は伊東歌詞太郎さんのマイクセッティングを担当してました。

今野舞 コンサート照明コースの今野舞です。今回はザ・チャレンジさんのムービングライトを担当してました。

長濱純奈 コンサート舞台コースの長濱純奈です。今回は舞台監督を担当してました。

大石美佑 イベント企画コースの大石美佑です。今回は転換中に流す映像の企画・制作と、当日のオペレートを担当していました。

──今回のイベントは企画および運営を学生さんたちが行っていますが、ブッキング案も学生さんが考えたそうです。

沢田チャレンジ(Vo) えー! そうなんだー!

伊東歌詞太郎 ど、どうして僕らだったんですか?

沢田 普通組み合わせないよね、ここ!(笑)

嶋田 学生の中にザ・チャレンジさんと伊東歌詞太郎さんのファンが多いんです。本当に決まったときは同級生と「すごいねー!」って盛り上がってました。

歌詞太郎 うれしいです。でもたまたまこのタイミングでのブッキングっていうのが……実は僕たち1回母校で会ってるんですよ!

沢田 今年の冬ぐらいだっけね? たまたま母校で用事があって、行ったら歌詞太郎くんがいて。先生に「お互い音楽やってるんだよ」って紹介されて。

歌詞太郎 「いつか対バンできたらいいですねー」なんて言ってたらこんなに早く(笑)。

沢田 たぶんあのとき会ってなかったら、組み合わせ的にあまりにもシーンが違うからもしかしたら断ってたかもしれない!(笑)

──ニコニコ動画出身のアーティストさんと競演されるのは今回が初めてですか?

沢田 そうです! 僕たちずっと下北沢でロックバンドとしてやってきたから、やっぱりちょっとシーンが違うじゃないですか?

歌詞太郎 そうかもしれないですね。異種格闘技戦というか……。音楽じゃないところで出会うっていうのがまた偶然の縁ですよね。

──学生の皆さんは今日2組のライブを観ていかがでしたか?

ザ・チャレンジのリハーサルを盛り上げる学生。

天野 今日のライブは今まで観たことがないぐらい一体感のあるライブで。自分もよくライブに行くんですけど、例えば伊東歌詞太郎さんのファンの方がザ・チャレンジさんの曲の振り付けを分かってたり、そういうことがあんまりなかったので、すごいなあって思って観てました。

嶋田 素晴らしい空気感のライブに、自分たちが参加できたんだなあと思うとうれしくて。

沢田 今日本当に全体的に空気が温かかったよね。どっちがどっちのお客さんかわからなくて。狐のお面を付けてる人は歌詞太郎くんのファンなのかなって思ったんですけど。

歌詞太郎 僕も、サングラスかけてる人はザ・チャレンジのファンだろうなっていうのはわかりました(笑)。

ザ・チャレンジ

長濱 伊東歌詞太郎さんのライブのときにお客さんが振っていた緑色のサイリウムが幻想的できれいでした。

歌詞太郎 きれいですよね。僕が緑色が好きっていうだけで指定とかはしてないんですけど、ライブになるとファンの皆さんが持ってきてくれて。

沢田 僕歌詞太郎くんのライブを2階席から観てたんですけど、うちのお客さんも緑のサイリウムを持ってきててびっくりしたんですよ! いつも全身黄色でそろえてライブに来てくれるゴツめの男の子がいるんですけど、目立つからどこにいてもわかるんです。その子を見たら緑のサイリウムを大きく振ってたから、どっち推してるの!?みたいな(笑)。

歌詞太郎 うわー!(笑) 調べて来てくれたんですかね、うれしいです。「楽しもうぜ!」っていう意識を持ってくれてるんですね。

全然フィールド一緒じゃん

沢田 こんなにフィールドが違うのに、双方のお客さんがイベント全体を楽しんでくれるのはうれしいですよね。

歌詞太郎 そっか……! 僕あんまりフィールドが違うっていう意識を持ってなかったのかもしれません。

沢田 でも確かに、今って歌い手とロックバンドってすごい距離が近くなってきてますよね。逆に歌詞太郎くんに聞きたいんですけど、バンドを結成して活動していこうっていうんじゃなくて、インターネットで活動し始めた理由って何かあるんですか?

歌詞太郎 実は僕、もともとずっとバンドをやってて。でもやっぱりうまくいかなくて解散してしまって。僕も下北で超ライブしてたんですよ。MOSAiC、SHELTER、CLUB Queとか……。

沢田 えー! 全然フィールド一緒じゃん! じゃあ歌詞太郎くんは実は超下北っ子だったんだね。俺は下北沢GARAGE出身で、ずっとGARAGEでやってたんだけど。

──歌詞太郎さんはもともとバンドとして活動を始めたからこそ、ロックバンドとの隔たりを感じなかったんですね。

沢田 そっか、じゃあずっとバンドをやってる感覚なんだね! 俺が歌詞太郎くんを知ったきっかけが歌い手の活動だっただけで。

歌詞太郎 なんだろう。どんなときでも僕は全力で歌を歌っているだけで、それが自分の中で変わらないスタンスなんですよね。

ザ・チャレンジ

沢田 なるほどね。やっぱり世代がちょっと違うだけで音楽を発信する環境っていうのが全然変わってるんだなって。ボカロ作品って同じアーティストでも1曲1曲のMVのトーンがけっこう違うじゃないですか。それが衝撃的で。それって作ってる方が毎回異なるからだと思うんですけど、ロックバンドって同じようなトーンでバンドの“ブランド”を作っていくから、その感じが違うっていうのが面白いなって思って。

歌詞太郎 そうか! なぜ僕はそこをすんなり受け入れることができたんだろう。

沢田 VOCALOIDっていうものを自然に受け入れられたから?

歌詞太郎 いや実は僕、もともとネットの音楽っていうのは一切知らなくて。初めて動画を投稿する前に、VOCALOIDっていうものがあるらしいってことを知って。ほかの人が投稿している曲をカバーしても別にいいものらしいぞってことで、「ボーカロイド 一番有名」で検索したんですよ。

一同 あはははは(笑)。

歌詞太郎 それで一番上に出てきたのが「メルト」っていう曲で。それをまず投稿してみようって思って。

沢田 それが「歌ってみた」の始まりだったんだ。

歌詞太郎 そうですね。知らない文化ではあったんですけど、知ったらなぜ自分が受け入れることができたのかっていうのは、沢チャレさんの話を聞いているとちょっと自分でも不思議ですね。

沢田 不思議だけど、その文化に違和感がなかったっていうことだよね。歌詞太郎くんの作品を観たり聴いたりしていると、歌詞太郎くんって1人の人間なのにいろんな側面があるのがすごいなあって。僕歌詞も自分が全部書いてるから、自分たちのバンドが発信する言葉は、自分で管理したいっていう気持ちがどっかであるんですよ。でもたぶん歌詞太郎くんは自分が歌えば必ず自分のものになるっていう自信があるから、誰の歌でも歌えるんだろうなって思って。

伊東歌詞太郎

歌詞太郎 例えば自分で書いた曲をネットにアップすると自由に歌われたりするわけなんですけど、1人で歌ってるよりも何倍ものスピードで拡散されて、自分が作った曲がいろんな形で世の中に出ていくんです。それはやっぱり曲が愛されないと無理なので、カバーされるのは僕としてはすごくうれしいなあと。

沢田 そこがもうルールが違うんですもんね。いや、いい悪いとかじゃなくて、歌詞太郎くんと話していてすごく刺激になるなあ……。根っこがロックバンドって聞いて、俺たちがやってることとボカロ音楽ってまったく違うことじゃないんだなあって。

──歌詞太郎さんは沢田さんと最初に会ったとき、どういう印象を受けましたか?

歌詞太郎 初対面のとき、すごく丁寧な方だなあって感じて。それでミュージックビデオを観て「お!」って思って。

沢田 「思ってたのと違う!」って?(笑)

歌詞太郎 「なるほど! ザ・チャレンジはその名の通りチャレンジしてるなあ」って。

──歌詞太郎さんは今日のライブのMCでも「チャレンジ」という言葉を何度も口にしてましたね。

歌詞太郎 どう考えても意識してましたからね!

沢田 これまたうまいんですよ、 MCが!

歌詞太郎 いやいや(笑)。ザ・チャレンジが6月に赤坂BLITZで行ったワンマンを観させてもらったときに、沢田さんが「チャレンジしていきたい」っていうMCをされてたんですよ。その言葉にすごく共感して。チャレンジを止めたときに人間って成長が止まると思うし、僕もライブ中は前回のライブを超えるっていうのを必ず考えるようにしてるんです。

Contents Index
ライブレポート&学生活動レポート
沢田チャレンジ×伊東歌詞太郎×学生座談会
日本工学院ミュージックカレッジ

日本工学院ミュージックカレッジのコンサート・イベント科は、コンサート制作コース、コンサートPAコース、コンサート照明コース、コンサート舞台コース、イベント企画コースの5コースで構成される学科。コンサート・イベントの最前線で活躍するスタッフを育成している。八王子キャンパスでは学校内にある1000人収容のホールで授業および実習が行われ、プロの現場と同じ環境で学ぶことが可能。毎年夏と冬には東京・赤坂BLITZやオリンパスホール八王子で、学生たちの手によって作り上げられたイベントが開催される。

ザ・チャレンジ

ザ・チャレンジ

沢田チャレンジ(Vo)、チャレンジオノマック(Vo, G)、タラコチャレンジ(Vo, G)、ヤンキーチャレンジ(B)、ドラゴンチャレンジ(Dr)の5人からなるロックバンド。2010年に沢田チャレンジの「バンドやりてえなー」というつぶやきをきっかけに、彼と交友のあったメンバーで結成された。“アミューズメントロックバンド”というテーマを掲げており、さまざまな挑戦を行ってファンを楽しませている。2015年4月にEMI Recordsからミニアルバム「スター誕生」でメジャーデビューを果たす。同年8月にはメジャー1stシングル「すっぽんぽん」を発表する。

伊東歌詞太郎(イトウカシタロウ)

伊東歌詞太郎

2012年1月に動画共有サイトに“歌ってみた”動画を初投稿。ボーカロイド楽曲などのカバーで大きな注目を集める。現在の動画総再生数は2000万を超え、ロックからバラードまで幅広く歌いこなす歌唱力から「歌唱力おばけ」とも称される。2014年1月、TOY'S FACTORYより「一意専心」でCDデビューし、2015年4月に2ndアルバム「二律背反」をリリース。またボカロP・レフティモンスターとのユニット「イトヲカシ」としても活動しており、日本47都道府県での路上ライブのほかタイ、シンガポール、フランス、オランダ、ドバイでも世界路上ライブツアーを実施した。