音楽ナタリー Power Push - Sugar's Campaign

友達から家族へ “バグ”から生まれた「ママゴト」

Sugar's Campaignが「FRIENDS」以来、約1年半ぶりとなるアルバム「ママゴト」をリリースした。

Avec AvecとSeiho、それぞれのソロ活動も活発な中で作られた本作。2人は「家族」と「偶然」をテーマに制作を始め、1990年代の匂いを放つポップチューン11曲を書き上げた。なぜ彼らは今作のテーマに「家族」と「偶然」を掲げたのか。2人の家族観なども交えながら語ってもらった。

取材・文 / 秦野邦彦 インタビュー撮影 / 関口佳代

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自分たちはこういうことがやりたかったんや

──約1年半ぶりのリリースです。まずは前作「FRIENDS」の反響について聞かせてください。

Avec Avec たくさんのリスナーが聴いてくれたことがまずうれしかったです。広瀬香美さん、aikoさん、ヒャダインさんなど尊敬するアーティストの方が聴いてくれたこともうれしかったですね。

Seiho 僕たち自身、あの作品を外に出してよかったなと思っていて。

Avec Avec 長年のシュガーズとしての活動の集大成みたいな作品やったんでね。

左からAvec Avec、Seiho。

Seiho 僕ら2人、付き合いも長いからわかり合ってる部分もあるし、シュガーズでやりたいことが決まってるから、別にお互いにも外にも説明しなくてもいいと思っているところがあったんですね。そのやりたい音楽を1回作品にして外に出してみることで、改めて「自分たちはこういうことがやりたかったんや」って気付いたみたいな。ただ、周りはシティポップとかAORとかジャンル名をやたら付けてくるんですよね。僕らはそのジャンルがやりたくて作ったわけじゃなく、自分たちのバックボーンにあるものとか本当に好きな音楽を作った結果、ああいう時代性のある音楽になってただけで。

Avec Avec 前のアルバムでいうと「男と女」「大人と子供」っていうのがテーマで、それが1980年代のAORとかシティポップの音と必然的にリンクしただけなんです。

Seiho 最初に用意したテーマで歌詞を組み立てて、音をハメていったら必然的にそこに近くなっただけで。

Avec Avec 子供のノスタルジー感と、僕らが持ってるノスタルジー感を合わせるとたまたま80年代の音楽になった。ジャンル分けされることは、それはそれで悪くないんですけど、僕らが本当にやりたいことはそれだけじゃないのにみたいな。

Seiho けど、80年代の音楽をやり続けることによって結局一緒にされちゃうなっていうのもあって。今回一番意識したのも、そのカテゴライズから抜けることでした。

超越したもの=家族

──アルバム「ママゴト」は、「FRIENDS」からまた一歩進んでる感がありますね。恋人同士が結婚して、1つのテーブルで一緒にごはんを食べてる感じ。

Seiho そうですね。もともとこのアルバムを作るきっかけは、さっき言った周りの評価と自分たちの音楽の狙いとの違和感をどう超えていけるかを2人で話してたときに生まれたんです。そのときAvec Avecが「超越」という言葉をやたら使ってたんですけど、何か超越したものを作ろうとしたときに2人で考えたテーマが「家族」だったんです。

Avec Avec なぜ「家族」かというと、「個人と世界」っていうのはよくあるテーマですけど、意外と「自分と家族」「家族と世界」について考えてることってそんなにないと思うんですよ。歌もそうだし、だいたい自分がどうか、みたいな。だから今、家族というテーマを僕らが1回ちゃんと考えてみようと思って。

Seiho 個人から社会につながる上で、最小単位でコネクトしてる人間の集合体が「家族」っていうもので。

Avec Avec

Avec Avec 僕の中の「家族」の定義は、まず人間関係の中で自分ではどうしようもないものを引き受けざるを得ないことなんです。家族=血族と捉えられがちなんですけど、自己責任を超えて覆い被さってくるものを引き受けることができる関係が血縁以外にあるなら、それはもう「家族」と言っていいと思うんです。

Seiho 僕たちの世代はリベラルに考えてくと、どうしても個人主義的になって、行動のどこまでが自己責任かって話になりがちなんですけど、血がつながってなかろうが他人がやったことの責任を絶対に取らなきゃいけない関係があるなら家族と定義できると思ってるんです。この最小単位でコネクトした関係についていろいろ真面目に考えたいっていうのが2人の中であって。

──何やら哲学的な話になってきましたね。

Seiho もっとライトなことで言うと、例えば家族の中でしか通じない言語って存在するじゃないですか? テレビのリモコンのことを“パチパチ”って呼んでるとか。これはパチパチって呼んでない人たちでも面白がれる話だと思うんです。そういう最小単位のコネクトした関係を追求することで、個人と世界をもう1回見直そうというのが今作のテーマ。

Avec Avec あと「FRIENDS」は「こういうの懐かしいな」「こういう感覚あるよね」みたいな既視感や共感をイメージして作ったんですけど、今回はそういうのじゃないものを作りたかったんです。

Seiho 家族の中の限定された出来事だけど、その現象は世界全員に共通のあるあるになってることとか。

──歌詞にも家族を意識した言葉が登場しますが、これは作詞を手がけたmomoさんや小川リョウスケさんともコンセプトを共有されたんですか?

Seiho はい。momoちゃんには、合宿してたときに遊びに来てもらって、一緒に朝まで話したんです。今回momoちゃんが書いてくれた歌詞に「運命」とか「偶然」って単語が多いんですけど、結婚したり子供が生まれたりすることが果たして決められた道筋なのかどうかってことにすごく興味があって。実際はそうじゃなくて、偶然なんですよね。

Avec Avec その偶然をいかにして運命にしていくか……。そのまんま「ポテサラ」の歌詞に出てくるフレーズではあるんですけど。

Seiho だからこそ僕らは、意図的にバグを起こそうと考えたんです。

2ndアルバム「ママゴト」 / 2016年8月10日発売 / 2700円 / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-64603
2ndアルバム「ママゴト」
収録曲
  1. ポテサラ
  2. ママゴト
  3. 週末のクリスタル
  4. いたみどめ
  5. ただいま。
  6. マリアージュ
  7. いつかの夢から連れだして
  8. HAPPY END
  9. 1987
  10. レストラン-熱帯猿-
  11. SWEET HOME

Sugar's Campaign単独公演「あしたの食卓」

2016年8月25日(木)大阪府 SUNHALL
2016年8月26日(金)東京都 UNIT
Sugar's Campaign(シュガーズキャンペーン)

Avec AvecことTakuma Hosokawaと、SeihoことSeiho Hayakawaの2人によるポップユニット。2011年に始動し、ゲストボーカルを招く形で活動している。2012年1月に「ネトカノ」を YouTube にて公開し、ネットやクラブ、インディーロック界隈など各所で話題になる。約2年半後の2014年8月にアナログ、9月にCDで「ネトカノ」を発売。11月に初の単独公演「ネトカノリリパ」を開催し、SPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビューすることを報告した。2015年1月にメジャー1stアルバム「FRIENDS」を発表。個々の活動と並行してSugar's Campaignとしてマイペースに活動を続け、2016年8月にニューアルバム「ママゴト」をリリースした。