音楽ナタリー Power Push - Suck a Stew Dry × 松本素生(GOING UNDER GROUND)

目指したのは“嘘のない音楽”

パワーの源は怒り

──篠山さんは自分に対しても「この先、どうなるかわからない」って思ってます?

篠山コウセイ(Vo, G)

篠山 そうですね。いつ終わるかもわからないし、もともと夢も持ってなかった人間なので。だからいつも困るんですよね。「この先、やりたいことはありますか?」とか「野望はありますか?」って聞かれると。

松本 「現時点ではわかりません」ってことでしょ。でも、どうなるかわかんないよ。篠山くんだって、このアルバムが50万枚売れたらいきなりポジティブになるかもしれないし。

イタバシ ハハハ(笑)。それも人間のリアルですよね。

篠山 売れてもポジティブにならない気がしますけどね(笑)。

松本 篠山くんってどんなことで心が高ぶるの?

篠山 なんだろう? 何をやっていてもすぐに現実に戻っちゃうというか……。無我夢中になれるものがほしいんですけどね。何かにムカついたときとかは似たような心境になってるかもしれせん。

松本 怒りがパワーの源なんだね。俺もそう。

──え、そうなんですか? 「あいつ、ムカつく」とか?

松本 そういうこともありますよ。だからってその怒りをそのまま書き連ねるようなことはしないですけどね。ただ怒りがたまると体に悪そうじゃないですか。それを吐き出す場所でもあるんですよね、曲を作る作業は。曲にすることで、怒りを外に出すというか。猫が草を食って毛を吐くのに似てるかも。

篠山 確かに曲を作ることがストレス発散になってるところはありますね。僕は本質がネガティブだから、ちょっとしたことでもイラッとしたり、違和感を感じてしまうので。それは自分自身に対しても同じなんですけどね。

松本 そこが俺との違いだよね。俺は自分に対して、一切ダメだと思わないから。

篠山 いいですね(笑)。僕、駅の改札で引っかかるだけで「チャージしとけよ、お前」って自分に思うので。

松本 俺は改札に対して「なんだよ、通せよ」って思うかな(笑)。

バンドとかロックは誰かのためにやったら終わり

──「N/A」にはエレクトロなテイストを取り入れた楽曲も収録されていますが、ライブでオーディエンスを盛り上げたいという気持ちはありますか?

篠山 ないですね(笑)。お客さんが盛り上がってくれるのはうれしいけど、自分で盛り上げたいという気持ちはないというか。

イタバシヒロチカ(Dr)

イタバシ そこは最近、バンドメンバーで話し合ったんですよ。それは今回のアルバムにも、次のツアーにも出ると思います。俺としては盛り上げたいという気持ちもあったんですけど……。

松本 チカくんは“ヤッホー系”だからね。

イタバシ そうですね(笑)。でもメンバーと「それって本当に必要なのかな」という話をちゃんとして。

篠山 そういう演出をやるんだったら、自分たちの中でしっかり、盛り上げるということの理由や必要性を解釈できてないとダメだと思うんですよ。そうじゃないとお客さんにも見抜かれてしまうんじゃないかなって。

──最初から「盛り上げよう」と意図するのはよくない、と?

篠山 そうですね。

松本 いいと思うよ。バンドとかロックとかって誰かのためにやったら終わりだと思うから。まあロックの範疇もよくわからないけど。

イタバシ おお。

松本 だってさ、まずは自分でしょ? 自分がやりたいことをやってステージに立つのが楽しいというのが絶対だから。誰かに気に入ってもらうためにやるっていうのは、音楽の役割ではないと思うんですよ。結果的に誰かのためになるのはいいんだけど、最初からそこに向けて音楽をやるのは違うよなって。これ、反省を含めて思ってることなんですけどね。

──というと?

松本 例えばレコード会社のスタッフに「こっちの曲のほうがタイアップが取りやすい」って言われたときに、自分たちとしては別の曲をシングルにしたいのに「そこまで言うなら、乗っかっておくか」って思ってしまったことが過去にあるんですよ。そういうことって今も思い出すからね。「あれは間違いだったな」って。

篠山 あー、わかるような気がします。

──松本さんと篠山さん、共通点が多いですね。

松本素生

松本 曲を書く人だからね。何かを感じることは誰でも同じだけど、それを言葉や音にするためにはさらに向き合わざるを得ないから。さっきから篠山くんが言ってる「そんなにポジティブじゃない」という気持ちもすごくわかるし。ただ、もうちょっと力を抜いて、ラクにしたほうがいいと思うけどね。「へー。そうなんだ」くらいで。

篠山 はい(笑)。

松本 でも言ってることは全部その通りだと思うよ。「いいヤツばかりじゃない、とは言え、悪いヤツばかりでもない」っていうことでしょ? THE BLUE HEARTSの歌詞みたいだけど(笑)。

──GOING UNDER GROUNDもいろんな壁を超えながら、ここまで音楽を続けてきたわけですからね。

松本 はい。メンバーが抜けて、それでもバンドを続けたときに「なるようにしかならないな」って思ったんですよね。思惑を混ぜ込んでも、その通りにはならないし、疲れるだけだなって。あと、自分の人生だから。誰からも何も言われたくないっていうのが本音ですからね。そのスタンスは似てるんじゃないかなって。

篠山 確かにそうですね。

松本 自分たちがいいと思うことをやって、それが美しく見えたり、醜く見えたりするだけの話だから。「じゃあ、なんでコイツらはバンドやってるの?」って思われるだろうけど、ライブを観てもらえればこぼれ出てくるものが必ずあるんだよね。「もしかしたら、これかもな」と思えるような何かが、楽しくなったり、盛り上がったりするポイントになるっていう。それだけなんだよね、ホントに。

イタバシ すごくいい話を聞けた気がします。

篠山 うん。今日はどんな話になるんだろうって、不安だったんだけど。

松本 よかった(笑)。まあインタビューとか対談とかも「こういうことを話そう」とか考えてもムダだから。なるようにしかならないし、だったら、そのときに思ったことを素直にしゃべったほうが面白いからね。

イタバシ そういえば、僕たちが所属している事務所のイベント「LS LEAGUE」でも競演できますよね。めちゃくちゃ楽しみです。

篠山 よろしくお願いします。

左から、篠山コウセイ(Vo, G)、イタバシヒロチカ(Dr)、松本素生。
Suck a Stew Dry ニューアルバム「N/A」/ 2016年5月25日発売 / Lastrum
ニューアルバム「N/A」
完全生産限定盤 [CD+DVD] / 3132円 / LACD­-0274
通常盤 [CD] / 2700円 / LACD­-0275
CD収録曲
  1. GOEMON
  2. インナーワールド
  3. トロイメライ
  4. レフストアンブルフィ
  5. 失恋、失恋。
  6. 空に星が降る夜は
  7. 冷たいリグレ
  8. F.O.M.H.
  9. 一人じゃ生きれないわけでもない
  10. ヒーローになれずに
  11. ユースフル -used-
完全生産限定盤 DVD収録内容
  • 「夢中でがんばれない君へエールを」恵比寿LIQUIDROOM公演ライブ映像
GOING UNDER GROUND ニューシングル「the band」/ 2016年5月11日発売 / 1620円 / XQLG-1020 / Youth Records
GOING UNDER GROUND 「the band」
収録曲
  1. the band
  2. Drifting Drive
  3. Bonus tracks 弾き語りMEDLEY
    (同じ月を見てた / STAND BY ME / グラフティー / ランブル / orion / かよわきエナジー / トワイライト / 東京)
︎Suck a Stew Dryリリースワンマンツアー「N/A ~Ninja Action Tour~」
  • 2016年6月1日(水)愛知県 SPADE BOX
  • 2016年6月2日(木)大阪府 Music Club JANUS
  • 2016年6月18日(土)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
  • 2016年6月19日(日)宮城県 enn 2nd
  • 2016年6月21日(火)北海道 COLONY
  • 2016年7月1日(金)広島県 BACK BEAT
  • 2016年7月3日(日)福岡県 DRUM SON
  • 2016年7月8日(金)東京都 TSUTAYA O-EAST
GOING UNDER GROUND New single release 記念LIVE「the band」
  • 2016年7月20日(水)東京都 新代田FEVER
LS LEAGUE
2016年6月12日(日)東京都 新宿LOFT
<出演者>
Suck a Stew Dry / GOING UNDER GROUND / マカロニえんぴつ / Official髭男dism / ORIE / The Wisely Brothers
Suck a Stew Dry(サックアステュードライ)
Suck a Stew Dry

ハジオキクチ(G, Cho)が篠山コウセイ(Vo, G)を誘い、2010年に結成したロックバンド。2013年にスダユウキ(B)が加入し、現在はキクチ、篠山、スダ、フセタツアキ(G, Cho)、イタバシヒロチカ(Dr)の5人で活動している。2011年11月にデビューミニアルバム「人間遊び」を発表して以降、ミニアルバム「ラブレスレター」、6曲入りCD「世界に一人ぼっち」、枚数限定CD「アイドントラブユー」とリリースを重ね、10~20代を中心にファンを増やしていく。1stフルアルバム「ジブンセンキ」の発売を経て、2015年3月に4曲入りCD「モラトリアムスパイラル」と初のライブDVD「僕らのジブンセンキ ワンマンツアー2014 Final」、9月にミニアルバム「Wake me up!」をリリース。2016年5月にはニューアルバム「N/A」を発売した。

GOING UNDER GROUND(ゴーイングアンダーグラウンド)
GOING UNDER GROUND

THE BLUE HEARTSに憧れて、松本素生(Vo, G)、中澤寛規(G, Vo)、石原聡(B)、伊藤洋一(Key)が中学時代に前身バンドを結成。河野丈洋(Dr, Vo)が加わり、何度かのメンバーチェンジを経て、高校卒業時に5人体制となりGOING UNDER GROUNDと名乗り始める。インディーズシーンでの活躍を経て、2001年にシングル「グラフティー」でメジャーデビュー。「ミラージュ」「トワイライト」「ハートビート」など、切なく爽やかなメロディで幅広い支持を集める。2005年には「トゥモロウズ ソング」をNHK「みんなのうた」に提供し、新境地を開拓。2006年7月に初の東京・日本武道館公演を行い成功を収める。2007年初頭には彼らの楽曲が原案となった映画「ハミングライフ」が公開された。2009年4月に伊藤が脱退。2011年5月には東京・日比谷野外大音楽堂でワンマンライブを行い、元メンバーの伊藤と共演してファンを驚かせた。同年11月には映画「ハラがコレなんで」の主題歌としてシングル「愛なんて」を発売する。2015年1月に河野が脱退し、現在は松本、中澤、石原の3人編成で活動中。2016年5月に新体制になってから初の全国流通盤としてニューシングル「the band」をリリースした。