「イナズマロック フェス2023」×スカパー!|発起人・西川貴教が心血を注ぎ続ける滋賀の祭り (2/2)

滋賀県の祭として定着してほしい

──2日目の開会宣言は滋賀県知事の三日月大造さんが務められていましたが、滋賀県に密着したフェスであるということが、お客さんの間にもすでに浸透しているムードがありました。

特に今年は、開催前に「イナズマロック フェスを草津市のイベントとしてもっとPRしていきたい」という思いのもと、開催地である草津市の自治体の若手職員の方が中心になって、「イナズマ」のロゴを使用した「デザインマンホール蓋」を草津市内の4カ所に設置してくれたので、より浸透している実感がありました。このデザインマンホール蓋は、「琵琶湖を取り巻く水の環境にもっと心を寄せて行こう」というフェスのテーマも意識しています。フェスというのは、いろいろな期待を持っていざ始めたとしても、地域の方々からさまざまな意見が上がったりして、自治体と主催者の間でトラブルが起きることが珍しくありません。でも「イナズマ」は、自治体の中に入り込んで一緒に問題解決に取り組んでいます。実はこういう関係性で成り立ってるフェスってほぼないんですよね。最近は「フェス」という言葉がどんどん馴染みのいい言葉になっていて、今までだったら「◯◯祭」っていうネーミングだった催しが「◯◯フェス」っていうネーミングに変わるなど、フェスの名が付くイベントが増えてきてます。

──確かに、「フェス」という言葉は年々幅広い意味合いで使われるようになってますよね。

さまざまなフェスが台頭していますが、たとえ利益が出なくとも3年ぐらいなら心意気でできるものだと思うんです。ただその後も続けていくとなると収支の問題や地域との関係性に真剣に向き合わざるを得ない。だからこそよくも悪くも淘汰されていきます。一定のクオリティや安心・安全をきちんと担保できるフェスじゃないと生き残っていけない。「イナズマ」はここ5年ぐらい、いろいろな自治体の方が見学に来てくださっているんですが、我々自身も開催で培ったノウハウを抱え込まないようにしています。実際に、我々がサポートしているイベントが増えてきているんですよ。もしかしたら、丸ごとイナズマのノウハウを別のフェスに持っていくことも可能かもしれない。そういう発展のためにも、これからも「限られたスペースを使って何ができるのか」を模索し続けていかなきゃいけないなと思っています。

「イナズマロック フェス 2023」の様子。
「イナズマロック フェス 2023」の様子。

「イナズマロック フェス 2023」の様子。

──今年、会場へのシャトルバス乗り場がJR守山駅前直結になったり、「パークアンドライド」が導入されたり、アクセスが大幅に改善されたのも、地元の自治体と緊密な信頼関係が築けているからなのでしょうか?

そうですね。会場の近くに交通機関がある関東近郊のフェス会場と違って、「イナズマ」の会場である烏丸半島芝生広場はアクセスがすごく不便な場所にあります。だからこそいろいろな面で助け合いながら、いかにして利便性を高めるか、という点と向き合い続けています。例年9月に開催していたところを今年は10月開催にしました。それによって、これまで使っていた会場の最寄り駅からのバス送迎の発着所が使えなくなったんです。別の方法を模索していたところ、お隣の自治体の方からバス送迎についてお声がけいただいて。僕としては「フェスを開催することで住民の方や地域の方にご迷惑をおかけしているんじゃないかな」と思うところが常々あって、「地元の方々に煩わしさを与えないようにするにはどうすればいいか」をずっと考えてきました。でも我々が思ってる以上に、地元の皆さんが「イナズマ」に期待してくださってると感じました。現在も今後に向け、さらに地元の皆さんにこのフェスのことを理解していただき、来てくださる方の利便性を向上させるための方法を模索しているところです。

──滋賀県出身のUVERworldはこれまでに11回出演していますが、やはり「イナズマロック フェス」が滋賀県に密着したフェスというところが大きいのでしょうか?

それは本人たちに聞いてみてほしいところではありますが(笑)、MCでも「ライブをしに地元に帰ってくることはあまりない。だからこそ、『イナズマ』でライブをする価値がある」と話してくれていました。そういう場所を彼らに提供できているのであればうれしいですね。これは僕自身がもっと自覚しなきゃいけないと思ったことなんですが……自分が関わる関わらないに関係なく、僕は「イナズマ」が地元・滋賀県の祭として定着してほしいとずっと思い続けてきました。でも、やっぱり僕が中心になっているフェスなので、出演者の皆さんにとっては西川貴教との思い出や関係値と「イナズマ」が表裏一体になっている。なので無理やり自分を引っぺがさなくてもいいのかなと思ったんですよね。今年、僕自身が積極的に全体を見て回るスタンスに変えたのはそういう気持ちもあります。毎年お客さんがどこから来られたのかを確認しているんですが、7割の方が県外から来てくださってるんです。僕としてはもっと地元の方が来やすいフェスにしたいとも思っていて、駐輪場を作りました。僕が滋賀の田舎に住んでいたときは、2、3駅分の距離を自転車で移動してたんですよね。地元の方に喜んでもらいたくて、滋賀県で育った自分ならではの発想でフェスを作っている部分も大いにあります。

西川貴教
西川貴教

「イナズマ」の遺伝子

──「イナズマロック フェス」を始めてから、西川さんの1年のサイクルは大きく変わりましたよね。

そうですね。本番3日間のためだけに動いている感覚はもうありません。今や一番おいしいお店を決定する「イナズマロック フェス」の前哨戦イベント「イナズマフードGP in 草津」もありますし、一部のスーパーでフェスのチケットが購入できたり、コンビニで関連グッズを手に入れられたりして。1年を通して、いろいろな地域や団体の方から「イナズマのノウハウを自分のところに還元してほしい」というお話をいただくこともあり、今後はさらに効果的にノウハウを提供するために、それらを組織としてしっかりまとめていきたいと思ってます。ノウハウを発信することによって、さまざまな地域が潤うシステムを作っていきたいです。

──フェスのオーガナイザーとして、音楽活動とはまったく違う筋肉を使われている。

結果的にそうなってますね。コロナ禍以降、独立や個人事務所、エージェントといったフレーズが耳に入ることが増えてますよね。僕はそういった動きをかなり前倒しで始めていただけだと思います。今、僕の事務所は27期目なんですが、設立当初はアーティストが代表を務めることについて、あまり理解してもらえませんでした。いろいろなところから「その指示はアーティストのわがままなのか、事務所の代表としての指示なのかはっきりしてくれ」みたいな、どこか面倒臭そうな対応をされ、煙に巻かれることも多かったんです。でも自分が裸足で歩かないとそこが熱いのか冷たいのか、痛いのか痛くないのかがわからないのと同じで、自分が直接肌で感じたから発信できることがたくさんあるんですよね。今の状態で歩き続けていると、大きな賞をもらったり、毎年大きな規模のコンサートを続けていったりするようなアーティストにはなれないのかもしれないけど、これまで日本にいなかった、新しいアーティスト像は作り出せているんじゃないかなと。自分だけが自由に泳げる海を探し続けて今ここにたどり着いているという自負がありますし、新しいアーティストのあり方を創出することに価値を感じています。

「イナズマロック フェス 2023」の様子。
「イナズマロック フェス 2023」の様子。

「イナズマロック フェス 2023」の様子。

──04 Limited SazabysのGENさんがMCで「自分たちが『YON FES』を立ち上げたのは『イナズマロック フェス』の影響も大きかった」とおっしゃってました。イナズマロック フェスをミュージシャン主催のフェスのロールモデルにする後輩アーティストはどんどん増えていきそうですよね。

フォーリミがそう言ってくれただけでも挑戦してきた価値があったと思います。「YON FES」のスタッフには「イナズマ」の創設メンバーもいるので、兄弟フェスといっても過言ではありません。これからもどんどんいろいろな方々と助け合っていきたいと思っているので、そういう近しいフェスが増えていってほしいですね。「イナズマ」の遺伝子をこれからも広げていきたいですし、利益を搾取するシステムとしてのフェスにせず、フェス文化のいいところを踏襲し続けていきたいです。フェスはみんなに開かれていて、みんなが楽しめるものであるべきだと思っています。15年前と比べたら、動員数や経済効果は格段に上がっていて、それはすごくありがたいことなんですが、僕らにとって数字以上に大事なのが皆さんからいただく「今年のイナズマ、楽しかった」という言葉です。そのためにやってますからね。僕自身がステージに立つことで受け取ることができているものを、皆さんにお返ししていきたいんです。

──最後に、11月24~26日の3日間、スカパー!の「フジテレビTWO」チャンネルで今年のイナズマロック フェスが1日3時間ずつ、計9時間ものボリュームで放送されますが、それについてコメントをお願いします。

かなり時間を割いていただいてますよね。今回の放送を通じて雷神ステージのライブをお届けしますので、ぜひオンエアでフェスの雰囲気を感じ取っていただきたいです。とはいえ放送でお届けするのはフェスの半分にすぎません! 興味を持った方は来年ぜひ会場に来ていただけたらうれしいです。

西川貴教

キャンペーン情報

「スカパー!熱狂フェス #テレビだけだと思うなよ」

「スカパー!熱狂フェス #テレビだけだと思うなよ」

スカパー!では、10月1日(日)から11月30日(木)まで「スカパー!熱狂フェス #テレビだけだと思うなよ」と題したキャンペーンが展開されている。「スカパー!熱狂フェス」は、放送はもちろん、配信、バーチャル空間やリアルイベントに至るまで、ユーザーが楽しい体験をより拡張できるような“熱狂”コンテンツをたっぷりとそろえた施策。コンテンツのラインナップは今後も続々追加される。加入者はもちろん、そうでない人も、「スカパー!史上最大の熱狂フェス」にぜひ参加してみては。期間中にはプレゼントキャンペーンも実施予定。詳細は公式サイトにて確認を。

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プロフィール

西川貴教(ニシカワタカノリ)

1970年9月19日生まれ、滋賀県出身。1996年5月にT.M.Revolutionとしてシングル「独裁 -monopolize-」でメジャーデビュー。「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」など数々のヒット曲をリリースした。2008年には「滋賀ふるさと観光大使」に任命され、翌2009年から大型野外ロックフェス「イナズマロック フェス」を主催。2018年3月には西川貴教名義で初となるシングル「Bright Burning Shout」をリリース。2023年4月に西川の2ndツアーの模様を収めたBlu-ray / DVD「TAKANORI NISHIKAWA LIVE TOUR 002 "SINGularity II -過形成のprotoCOL-"」、6thシングル「Never say Never」を発表した。また6月には舞台「バーン・ザ・フロア BE BRAVE. TOGETHER.」、8月から9月にかけてはミュージカル「スクールオブロック」に出演。10月には「イナズマロック フェス 2023」を3日間にわたり開催した。