SiMが9月17日に兵庫・ワールド記念ホールで対バン企画「THE EYEWALL NiGHT vol.1」を開催する。
このイベントは「デカ箱でも対バンライブやりたい!!」「デカ箱はワンマンかフェスでしか成立しないのか!? そんなはずはない!」というSiMのメンバーの思いから企画されたもの。初開催となる今回は“野外FES主催バンド”をテーマに「DEAD POP FESTiVAL」のSiM、「京都大作戦」の10-FEET、「YON FES」の04 Limited Sazabysの3組が競演する。そこで音楽ナタリーでは、イベントに出演するMAH(SiM)、TAKUMA(10-FEET)、GEN(04 Limited Sazabys)による鼎談を実施。ロックバンドが“デカ箱”でライブを行う意味や、フェスを主催するようになってからの心境の変化などを語り合ってもらった。
取材・文 / 小林千絵 撮影 / 草場雄介
アリーナ規模で対バンイベントをやるなんて
──「THE EYEWALL NiGHT」を開催するに至った経緯を教えてもらえますか?
MAH(SiM) 最初、SiMが兵庫・ワールド記念ホールでライブをするという話が持ち上がったんです。でもこれまでSiMはホールやアリーナクラスの会場だと日本武道館と横浜アリーナでワンマンライブをやっていたから、ワンマンライブをやっても面白くないなと思って。そこから「ホールで対バンライブって面白いんじゃないか」「それもツーマンじゃなくて、3バンドくらいでお客さんが観たことない組み合わせでやってみたいね」と話が進み、開催に至りました。
──今回の“野外FES主催バンド”というテーマはどのように?
MAH 「3バンドのイベント」って言うと、俺らは同世代のcoldrain、HEY-SMITH、SiMで「TRIPLE AXE」というイベントをやっているので、お客さんはどうしてもそれと比べてしまうと思うんです。だから3組のうち1組は先輩バンドを呼びたいなと思って10-FEETに声をかけて。で、今回の企画の話が持ち上がる前からずっと「フェスをやってるバンドが集まってイベントやれたら面白いな」となんとなく思っていたので、10-FEETが決まった時点でそれを思い出して、04 Limited Sazabysが呼べたら面白いんじゃないかと。世代的にも俺らよりもちょっと下だしいいなと思って誘いました。
GEN(04 Limited Sazabys) 誘っていただいてすごくワクワクしましたね。僕らみたいなライブバンドがアリーナ規模の会場で対バンイベントをやるなんて、想像したこともなかったので。いつもそうなんですけど、SiMって僕らが思ってるより先に1つ大きいことを考えているんですよね。「僕ら以上に本気で(音楽シーンを)ひっくり返そうとしてるんだな」という気がしてワクワクしました。
TAKUMA(10-FEET) ずっと前に、あるライブの打ち上げでMAHと一緒に飲んでて、そのときに大きな会場でライブをやる楽しさをすごく熱く説かれたんですよ。「こういうことができるんですよ」「絶対やってみたほうがいいです!」って。僕はアリーナクラスの会場でライブを行うことに対しては「いいところもあるけど悪いところもあるよなあ」って思っていたんですけど、実際に武道館でやったMAHが「こういう楽しいことがあったんですよ」と細かく語ってくれて。
MAH ライブハウスから先に行くかどうか……要はSTUDIO COASTとかZeppより大きい、ホールとかアリーナでワンマンをするかどうかってバンドにとって大きな分岐点だと思うんです。TAKUMAさんが言ったように、ホールっていいところも悪いところもあるし、俺らの先輩たちはあえてライブハウスより上に行かないことを選んでいるバンドが多かった。そういう姿がカッコいいと思ってたんですけど、俺らは越えてみようと思って。
GEN わかります。
MAH 最初は「いやー、デカいところって言っても、俺らもSTUDIO COASTまででしょ」とか考えてたんですけど、武道館を実際にやってみたらいいところばっかりだったんですよ。ホールとかアリーナでのライブが活動の軸になるのは違うかなと思ったけど、軸はライブハウスに置きつつ、1年に1回くらいそういうアリーナクラスやホールクラスでライブをやるのはすごくいいことな気がした。それで仲のいいHEY-SMITHの猪狩(秀平 / G, Vo)とcoldrainのMasato(Vo)に「絶対やったほうがいい」って言い続けたんです。あいつらも同じように迷ってたから。で、結局HEY-SMITHが大阪の府民共済SUPERアリーナでワンマンライブをやることになって、coldrainも来年武道館でやる。そうなると次は先輩のアリーナでのワンマンが観たくなってきたんですよね。「自分たちがやってこれだけのものができたんだから、先輩たちがやったらもっとすごいものが観れるんだろうな」って単純にワクワクして。ちょうどそのときにTAKUMAさんと飲む機会があったから「10-FEETがやったらきっとすごいっすよ!」って話をしたんです。
TAKUMA その熱い話を聞いているうちに、「いつか(ホールで)企画とかできたらいいな」と思えるようになって……そしたら企画する前に企画に呼ばれるって言う(笑)。でもそのときの話がずっと頭の中に残ってたので「あの言ってた楽しそうなやつ、もう一緒にできんねや!」って思ってうれしかったですね。
ライブハウスを飛び出さない美学
GEN 僕も昔はホールとかアリーナでやりたいと思っていなかったんです。自分の中に“ライブハウスを飛び出さない美学”みたいなものを持ってて。10-FEETとかマキシマム ザ ホルモンって絶対に武道館とか埋められるのにZepp以上はやらない、ライブハウスからは飛び出さないってイメージがあって。その姿を僕らはカッコいいなって見てたので、自分たちもホールとかでライブをやるのは違うんじゃないかって思ってたんです。けど、それこそSiMやHi-STANDARDみたいな先輩たちが武道館とかアリーナとかでライブをやってくれて、「やっていいんだ!」みたいな気持ちになりましたね。
MAH 今GENちゃんが言ったのと同じですけど、俺らはBRAHMANとかKen(Yokoyama)さんが武道館でライブをやったのを見て、「あ、やっていいんだ!」って思いました。まったくカッコ悪く見えなかったから。テレビ出演とかもそうなんですけど、ちゃんと見てみてると、出てるヤツがダサいんじゃなくて、出方がダサいだけだったんですよね。「カッコよく出ればカッコいいんだ」っていうのを先輩たちが証明してくれた。
──“ライブハウスを飛び出さない美学”についてTAKUMAさんはどう考えていますか?
TAKUMA 10-FEETが横浜アリーナとかさいたまスーパーアリーナ、幕張メッセとか武道館を埋められるかどうかわからないから……ずっとKYOTO MUSEでやっとけばバレない。ずっとビビってる(笑)。
MAH いやいや、絶対埋まるじゃないですか!
TAKUMA でもそこが大事やねん。「あのバンドどれだけ動員あんねやろ」「ずっとKYOTO MUSEでやってるけど、ひょっとしたらひたちなかで7万人ワンマンとかできるんちゃう?」っていうイメージを持ってもらったままやっておくことが大事なんじゃないかなと。
GEN TAKUMAさんの言ってること、よくわかります。例えば3万人のお客さんを埋められるバンドが、1万人しか呼べなくなったときに「元気なくなったね」って見られると思うんですよね。でもそうじゃなくて、常にZeppを埋め続ける、ずっとそこに居続けてくれるっていうヒーロー感もあると思うんです。
TAKUMA 半分冗談で言ったんやけど、そう聞いたら悪くないな(笑)。正直に言うと、例えば「自分たちがホールやアリーナでワンマンをやるとしたら何ができるんやろ?」って、イメージができてないだけなんですよね。僕らは勢いだけでやってきたから、ライブハウスやったら伝わるけど、ホールで何が伝えられるかなって。でもMAHがホールでの楽しさを熱く語ってくれて、イベントに誘ってくれた今は、楽しそうやなって思うし、ちゃんと「ホールでライブをするなら?」ということに向き合って想像力を働かせたら楽しいこともできるかもしれないです。だからMAHとかGENとか自分たちより若い世代が大きい会場でライブをやるのはめちゃめちゃ頼もしいです。
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座っている人も楽しませられるように
- THE EYEWALL NiGHT vol.1
- 2017年9月17日(日)兵庫県 ワールド記念ホール
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出演者
SiM / 10-FEET / 04 Limited Sazabys
- SiM(シム)
- MAH(Vo)、SHOW-HATE(G)、SIN(B)、GODRi(Dr)の4人からなる湘南で結成されたレゲエ・パンクバンド。2004年11月に結成され、数度のメンバーチェンジを経て2009年に現編成となる。パンク、ハードコア、スクリーモをベースとする轟音サウンドにスカやレゲエのエッセンスを取り込んだ“レゲエパンク”サウンドで頭角を現す。ライブハウスシーンを中心に活動し、2011年「KiLLiNG ME」のMUSIC VIDEOの視聴回数がインディーズバンドとしては異例の再生回数を記録(現在1600万回以上再生)。同曲を収録したアルバム「SEEDS OF HOPE」もスマッシュヒットを記録した。メジャー10社以上が獲得に乗り出す中、ユニバーサル・ミュージックをパートナーに選び、2013年4月に4thシングル「EViLS」、10月に3rdフルアルバム「PANDORA」を発売。その後も着実にリリースを重ね、2015年11月には日本武道館公演も完売させた。2016年4月には4thフルアルバム「THE BEAUTiFUL PEOPLE」を発売。同アルバムのリリースツアーでは全国26公演すべてがソールドアウトとなる。野外開催2年目となる自身主催イベント「DEAD POP FESTiVAL」を大成功に収め、10月にツアーのグランドファイナルとして行った神奈川・横浜アリーナでのワンマンライブも即日の完売となった。2017年3月から4月にかけて実施したワンマンツアー「THE BEAUTiFUL PEOPLE TOUR -season II- "ONEMAN SHOWS 2017"」では全国10カ所で28000人以上を動員した。7月に「DEAD POP FESTiVAL 2017」を主催。9月には兵庫・ワールド記念ホールで対バン企画「THE EYEWALL NiGHT vol.1」を実施する。
- 10-FEET(テンフィート)
- TAKUMA(Vo, G)、NAOKI(B, Vo)、KOUICHI(Dr, Cho)の3名によるスリーピースバンド。メロディックパンク、ヘヴィメタル、レゲエ、ヒップホップ、ギターポップ、ボサノバなどのさまざまなジャンルを取り入れたサウンドで人気を集めている。また精力的にライブ活動を続け、その迫力満載のライブパフォーマンスや人間味あふれる深いメッセージが込められた楽曲、笑顔を誘い出すキャラクターでもファンを魅力。さらに日本はもとよりアメリカや韓国、台湾でもライブを行うなど、活動の幅を世界に広げている。また自身で主催するフェス「京都大作戦」も例年大成功におさめている。2017年に結成20周年を迎えた。
- 04 Limited Sazabys(フォーリミテッドサザビーズ)
- 2008年に愛知県名古屋市にて結成された、GEN(B, Vo)、HIROKAZ(G)、RYU-TA(G, Cho)、KOUHEI(Dr, Cho)によるロックバンド。2013年5月に発表した2ndミニアルバム「sonor」より日本語詞を多く取り入れ、楽曲の幅を広げる。メロディックパンクやギターロック、ラウドロックなど、さまざまなジャンルのバンドと競演を重ね、2014年2月に3rdミニアルバム「monolith」、同年9月に1stシングル「YON」をリリース。2015年4月に1stフルアルバム「CAVU」を日本コロムビアから発売し、メジャーデビューを果たした。同年10月にメジャー1stシングル「TOY」を、2016年3月に1st DVD「MOMENT」を発売。4月には初の主催フェス「YON FES 2016」を大成功に収めた。ニューシングル「AIM」を6月に発表し、9月に2ndフルアルバム「eureka」をリリース。2017年2月に初の東京・日本武道館公演を成功に収め、6月にその模様を収録したBD/DVD「LIVE AT NIPPON BUDOKAN」を発売した。8月にシングル「Squall」を発表。11月からはワンマンツアー「04 Limited Sazabys “Squall tour”」を開催する。