ナタリー PowerPush - SCOTT MURPHY
J-POPカバーベスト発売記念 思い出の5曲&まんだらけ探索
J-POPや洋楽のヒットソングをパンク&ロックアレンジでカバーする「GUILTY PLEASURES」シリーズで知られるアメリカ人アーティスト、スコット・マーフィーがカバーベストアルバム「GUILTY PLEASURES BEST」をリリースした。このアルバムにはこれまでに発表してきたカバー曲から、厳選された人気ナンバーを収録。さらに、THE BOOM「島唄」とスピッツ「チェリー」の再録バージョンと、最新カバー3曲も追加された充実の内容となっている。
今回の特集でスコットはベストアルバムについてだけでなく、これまでに聴いてきたJ-POPの思い出についても語ってくれた。さらに、東京・中野ブロードウェイ内の「まんだらけ」中野店をスコットと探索。初めて訪れた中野ブロードウェイにて、ジャパニーズサブカルチャーのディープな側面に触れた。目にするもの1つひとつに驚きを隠せない彼の表情にも注目だ。
取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 中西求
Part 1:「GUILTY PLEASURES BEST」インタビュー
自分が好きじゃなかったらいいカバーにならない
──ソロとして「GUILTY PLEASURES」シリーズを始めて3年ちょっと経ちました。これまでにいろんな日本人アーティストの曲をカバーしてきましたが、カバーするときに気を付けてることって何かありますか?
うまくできてるかわからないけど、「もし自分がこういう曲を書いて、ロックやパンク調に演奏したらどうなるだろう」ってこと。いつも自分が好きな曲を選んでるから、メロディの良さを壊さないように気を付けて、自分なりのものにしようとがんばってます。それと、わからない漢字があったら最初に調べて、その意味を理解します。そして、どういう気持ちで歌えばいいかを考えて、曲に感情を込めていくんです。
──このベストアルバムにはこれまでスコットさんがカバーしてきた曲がずらりと並んでますが、この中で特にレコーディングが大変だった曲ってありますか?
「乾杯」とか初期の頃にレコーディングした曲は、まだ日本語を話すのが上手じゃなかったから、歌詞を覚えるのが特に大変でした。しかも、ライブもしなきゃならなかったから、本当に苦労しました。
──ライブじゃ歌詞を見ながら歌うわけにいかないし。
あの頃は歌詞の意味を理解できずに歌ってました。知らない言葉もたくさんあったし、もちろん今でもたくさんあるんですけどね。
──では、特に思い出深い曲を選ぶとしたらどれでしょう?
そうですね……「どんなときも。」は「HEY!HEY!HEY!」に出演したときに槇原敬之さんの前で歌ったし、「LOVEマシーン」ではモーニング娘。の元のメンバーと一緒に歌った。「15の夜」では尾崎豊のバックバンドと一緒にレコーディングをしたし……このベストアルバムに入ってる曲は思い出深いものばかりで、1曲選ぶのは難しいですね。
──このアルバムを聴いたときに改めて思ったんですけど、僕ら日本人にとって洋楽であるマイケルもAEROSMITHも含めて、ここに入ってる曲って日本の音楽ファンなら誰でも知ってるであろう曲ばかりで。メロディが口ずさめたり一緒に歌えたりするし、何よりちゃんと日本語でカバーしているから余計に入りやすいんです。
選曲するときは、まず自分が好きな曲で、「ライブで演奏したらみんな一緒に歌える曲、みんなで楽しめる曲」であることはいつも意識してます。自分が好きじゃなかったらいいカバーにならないし、そもそもカバーしたくないですし。
「島唄」を4年後にまたカバーするとは思わなかった
──今回新たにレコーディングした「楓」「冬がはじまるよ」「I DON'T WANT TO MISS A THING」ですが、スピッツや槇原敬之に加えて、なぜAEROSMITHをピックアップしたのか気になりました。
このベストアルバムはマイケル・ジャクソン以外は日本語の曲ばかりだったので、洋楽のカバーもやってみたくなって。何がいいんだろうって考えたとき、AEROSMITHの「I DON'T WANT TO MISS A THING」はすごくいい曲で、日本人も知ってそうだと思ったので選びました。
──AEROSMITHを知らなくても、この曲は映画「アルマゲドン」で聴いたことがあるという日本人も多いと思います。そういえば、このアルバムがリリースされた直後にAEROSMITHが日本でツアーをするんですよ。
え、そうなんですか? それは知らなかった(笑)。
──すごいタイミングだなと思って。相乗効果で盛り上がったら面白いですね。
うん、そうなったらうれしい(笑)。
──それと、ALLiSTER時代にカバーした「チェリー」と「島唄」を今回再レコーディングしてますね。以前はまだ日本語も上手じゃなかった頃に録音したと思いますが、改めて今カバーしてみてどうでしたか?
面白かったです。「島唄」は初めてカバーした曲だったから、ちゃんと歌詞の内容を理解してからまた録音できて楽しかった。あの頃は「島唄」を4年後にこうやってまたカバーするとは思わなかったなあ。
──最初は日本盤ボーナストラックのためにカバーしたんですよね。そこから何年か経って、カバー曲だけでベストアルバムが出せるまでになるとは。
「島唄」のカバーはすごくいい経験になったから、そのあと「チェリー」も「TSUNAMI」もやりたくなって。もっとカバーしたいと思ってたけど、まさかここまでやるとは思わなかった(笑)。
自分のオリジナル曲にも日本っぽい雰囲気がある
──カバーアルバムをたくさん作ったことで、自分のオリジナル曲に影響はありました?
もちろんありましたよ。いろんなカバーをすることで、その曲の魅力や独特なコード進行やメロディにも出会うことができたし。意識はしてないけど、そのエッセンスは自分の曲に出てると思います。たまに自分が書いた曲をアメリカの友達に聴かせると、「これはちょっと日本の曲っぽい雰囲気がある」って言われるんです。
──今までのカバーアルバムには最後にオリジナルソングが必ず1曲入っていますけど、前作「GUILTY PLEASURES ANIMATION」に入っていた「世界の果てへ ~Around The World」はほかのアニソンカバーと比べても違和感なく聴くことができました。
うれしい。それは自分にとって最高の褒め言葉です。
──最後に、カバーのみならず今後どういうことに挑戦していきたいですか?
ALLiSTERのアルバムも出したいと思いますし、ソロのオリジナルアルバムも出したい。それと今、WEEZERのリヴァース・クオモと一緒にプロジェクトも進めています。ロックアレンジでカバーするのは大好きだから、「GUILTY PLEASURES」シリーズは今後もできるだけ続けたいと思うけど……何をカバーしたらいいと思いますか?
──あははは!(笑)
まだ出会ってない日本の音楽もあるから、それを聴いたときにまたインスパイアされるかもしれないですね。
CD収録曲
- ドラえもんのうた(大杉久美子)
- 乾杯(長渕剛)
- どんなときも。(槇原敬之)
- LOVEマシーン(モーニング娘。)
- First Love(宇多田ヒカル)
- 15の夜(尾崎豊)
- 未来予想図II~VERSION'07~(DREAMS COME TRUE)
- SAY YES(CHAGE and ASKA)
- 夢をあきらめないで(岡村孝子)
- ゆめいっぱい(関ゆみ子)
- 川の流れのように(美空ひばり)
- なごり雪(イルカ)
- THRILLER(マイケル・ジャクソン)
- BEAT IT(マイケル・ジャクソン)
- サザエさん(宇野ゆう子)
- はじめてのチュウ(あんしんパパ)
- チェリー(スピッツ)
- 島唄(THE BOOM)
- 楓(スピッツ)
- 冬がはじまるよ(槇原敬之)
- I DON'T WANT TO MISS A THING(AEROSMITH)
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スコット・マーフィー
アメリカ・イリノイ州シカゴ出身の男性ロックアーティスト。1995年にメロディックパンクバンドALLiSTERを結成し、インディーズやメジャーから数々のアルバムを発表する。2001年に初来日公演を成功させ、これがきっかけとなり日本に興味を持ち、独学で日本語をマスター。2006年には自身がお気に入りのJ-POPナンバーを日本語でカバーした楽曲を含むアルバム「GUILTY PLEASURES」をリリースした。 2007年にELLEGARDENとともに全国33カ所におよぶ大規模なジャパンツアーを行うが、ツアー終了後にバンド活動を休止。以後、ソロ活動をスタートさせ、「GUILTY PLEASURES」シリーズを定期的に発表している。また、2009年には全曲オリジナルによるアルバム「Balance」もリリース。2010年にはALLiSTERも再始動させ、精力的な音楽活動を続けている。2011年11月にこれまでカバーした楽曲からセレクトされたベストアルバム「GUILTY PLEASURES BEST」をリリース。
2011年11月21日更新