音楽ナタリー Power Push - 佐藤聡美

“初期”衝動ではなく“今”だから歌えるビートパンク

「甘いもの食うの好きですよね?」「大好きですっ!」

──そしてリード曲2曲に挟まれているのが、佐藤さんの初作詞曲「I am a cloudy girl」です。

そうなんですよねえ。なんか挟まっちゃった(笑)。

──でもリード曲2曲と遜色ない出来映えだと思いますよ。まず雨女や晴れ女ならぬ「私は曇り女」っていうタイトルだから、ちょっとメロウな曲なのかなと思ったら……。

佐藤聡美「しゅがちゅん。~星たちの宴~」の様子。

ふふふふふ(笑)。

──雲を綿あめ、太陽の光をジャムに見立てて……。

「We are 甘党!」という掛け声とともに食べちゃって(笑)。

──ちょっと話がそれますけど「☆」の「Sweet! Sweet!! Sweet!!!」といい、佐藤さん、歌の中で甘いもの食うの好きですよね?

大好きですっ!(笑)

──で「冬将軍」「桜前線」と時間の経過を歌いつつ、いつも「太陽みたいに笑う君」がいてくれるから曇り空でも無敵でいられる、という構成になっている。だからいい意味で裏切られた。言うなれば雲や天気をお題にした大喜利がすごくうまい印象を受けたんです。

ありがとうございます! アルバムの制作が始まった頃から「作詞をしてみたいな」と思っていたので「紙ヒコーキ~」のレコーディングに立ち会ってくださったタクヤさんに相談してみたんですよ。「作詞ってどうやればいいんですか?」って。そうしたら「普段からブログやTwitterで言葉を書くことを習慣にしていると、意外とフレーズって出てくるものだから大丈夫だよ」「やってみたら?」って言っていただいて。それで「なんかできるかも!」って思って書いちゃっただけといえば、だけなんですけどね(笑)。

曇りはみんなを身近に感じさせてくれる

──それってけっこう勇気のある決断ですよね。「紙ヒコーキ~」って「手紙 ハガキ」「声を上げて」と、サビの頭のフレーズが全部3字の音節で切り分けられるようになっている上に、各音節とも必ず真ん中の1文字で韻を踏んでリズムを作るようになっている。すごくテクニカルな詞じゃないですか。

なぜかその詞を書いた方のアドバイスを真に受けて「私にもできるかも」って思っちゃいました(笑)。

佐藤聡美「しゅがちゅん。~星たちの宴~」の様子。

──でもバッチリ書き切りましたね。

それはきっとエンドウ.さんの曲が先にあったから書けたんだと思います。

──あの明るいスカパンクを聴いて、cloudyな天気のことを書こうと思ったんですか?

本当に「I am a cloudy girl」なので(笑)。

──あっ、曇り女でしたか(笑)。

「なんだよ、曇りって中途半端だな」って感じではあるんですけど(笑)、でも私にとって曇りはみんなを身近に感じさせてくれるものなんです。イベントのたびにファンの方は「佐藤さん、今日も安定の曇り空です」って笑ってくれるし「曇ってるほうが過ごしやすくていいですよ」「雨が降ってないからラッキー」ってフォローもしてくれる。それがすごくうれしいから「ライブやイベントの日にこの曲を聴きながら会場に向かってもらったら面白いだろうなあ」って思いながら書き始めていて。あと「あっ、肩の力を抜いても大丈夫だ」って気付けた今の私なら、曇りでも大丈夫。ちょっとイヤなことも見方を変えれば「うん。OK! OK!」って言える気もして。だから「どんなことでも何かをきっかけに『結果オーライ!』って認められるかもしれないよ」って伝えたかったんです。なんて言うんだろう? エンドウ.さんのあの明るくてかわいい曲を聴いたとき「強いメッセージなんて逆に何もない曲、気の抜ける曲、気を抜くことを許せる曲を書けたらなあ」って思ったから、こういう詞になった感じなんです。

正真正銘、私が書いた詞です!(裸で)

──実際の作詞作業はどうやって?

お風呂に入りながら。脱衣所にノートとペンを置いておいて、湯船に浸かりながら「どうしようかな?」って考えて、フレーズを思い付くたびにお風呂を上がってパーッと書き出して、また肩までお風呂に浸かってっていうのを繰り返し……。

──全裸で作詞(笑)。

そうだ! 私、裸だ!(笑) あと移動中にフレーズを思い付いたときには親友宛にLINEで「これは歌詞。忘れない。メモ」っていうメッセージとともにそのメッセージを送りつけてました。

佐藤聡美「しゅがちゅん。~星たちの宴~」の様子。

──いや、スマホのメモ帳アプリに書き留めておけばいい気が……。

でも、普段どっちをよく使うかって言ったら……。

──LINEだ、と。

だから親友に送りつけておいて、あとから「なんのこっちゃ?」っていう親友からの返信が添えられた自分のメッセージを読み返すという。で、完成させたあとディレクターに送ったら「これは絶対にエンドウ.さんに手伝ってもらったか、添削してもらったに決まってる」って疑われまして……。あんまり認めたくはないんですけど(笑)、エンドウ.さんって私のギターの師匠的存在でもあるからっていうことで。

──その「認めたくない」発言然り、佐藤さんは折に触れエンドウ.さんを軽くDisりますよね(笑)。クリスマスライブのときも「エンドウ.さんのギターとカシムラさんのベース、どっちが高いでしょう?」って聞かれたら「かっしーはプロだから高いものを使ってるはず」って失礼極まりないことを言い出してみたり(参照:佐藤聡美、暮れの表参道で太巻き寿司にチョコクリームを塗りたくる)。

あの人、ホメるとすぐに調子に乗るし、厳しくいこうかなと思っているので(笑)。ただエンドウ.さんが「いや僕、何もしてないです」って言ってくれるまで、本当に“師匠”の手が入ってるものだと思われてはいました。

──じゃあ改めて宣言しておきましょうよ。

正真正銘、私が書いた詞です!(笑)

ニューアルバム「Fanfare」/ 2015年6月10日発売 / スターチャイルド
初回限定盤 [CD+DVD] 4212円 / KICS-93190
通常盤 [CD] 3132円 / KICS-3191
CD収録曲
  1. 未完成の地図
    [作詞:内田直孝(Rhythmic Toy World) / 作曲・編曲:川原祥太]
  2. 紙ヒコーキ舞うこの場所で
    [作詞・作曲・編曲:楠瀬タクヤ]
  3. I am a cloudy girl
    [作詞:佐藤聡美 / 作曲・編曲:エンドウ.(GEEKS)]
  4. 君のとこまで
    [作詞:Uki(SHAKALABBITS) / 作曲:MAH(SHAKALABBITS) / 編曲:SHAKALABBITS]
  5. ミライナイト
    [作詞:moyu / 作曲:KEYTARO / 編曲:Coral Echo]
  6. 虹色のプレリュード
    [作詞・作曲・編曲:エンドウ.(GEEKS)]
  7. 夏のカケラ
    [作詞:eNu / 作曲・編曲:R・O・N]
  8. 追憶の果実
    [作詞:坂詰美沙子 / 作曲:山口朗彦 / 編曲:大久保薫]
  9. stella message
    [作詞:eNu / 作曲:AKI-KAN / 編曲:菊谷知樹]
  10. OVERHEAD
    [作詞:hotaru / 作曲・編曲:工藤嶺]
  11. Smile Cracker
    [作詞・作曲・編曲:エンドウ.(GEEKS)]
  12. Le jour
    [作詞・作曲:善智 / 編曲:菊谷知樹]
  13. Brave Morning!! -Studio Live ver.-(※通常盤のみ収録)
    [作詞・作曲・編曲:エンドウ.(GEEKS)]
初回限定盤DVD収録内容
  • 佐藤聡美 1st Tour「しゅがちゅん。~☆を集めにいくツアー2014~」ファイナル(東京公演)本編
  • メイキング映像
佐藤聡美(サトウサトミ)

宮城県仙台市出身の女性声優、ボーカリスト。2007年に声優デビューを果たし、2008年にはアニメ「地獄少女 三鼎」の御景ゆずき役、2009年からは「けいおん!」シリーズの田井中律役を務め、知名度を全国区のものにする。また「けいおん!」シリーズの劇中バンドにして、出演声優陣で結成された放課後ティータイムが歌う楽曲は軒並みビッグヒットを記録し、2010年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでのライブ「けいおん!!ライブCome with Me!!」に出演。以降も人気アニメの主要キャストを歴任する一方で、2014年2月、シングル「ミライナイト」でアーティストデビューし、同年6月には安野勇太(HAWAIIAN6)、ピエール中野(凛として時雨)、原昌和(the band apart)、locofrankらが参加する1stミニアルバム「☆」(スター)をリリースした。また2014年10月にはアニメ「失われた未来を求めて」のオープニングテーマ「Le jour」を、2015年2月にはデビュー1周年を記念して配信限定シングル「stella message」を発表。そして同年6月に楠瀬タクヤ(Sabao、ex. Hysteric Blue)、SHAKALABBITSの提供曲などを収録した初のフルアルバム「Fanfare」を発売した。