ナタリー PowerPush - Ricky
10年の歴史を最新型にアップデート セルフカバー含む2ndソロアルバム
Rickyが2ndソロアルバム「R☆MUSTER」を12月15日にリリースする。前作「R☆POP」で確立された独自のエレクトロポップサウンドが、今作ではシンプルながらもよりディープに進化。オリジナル曲だけでなく、DASEINやR*A*Pといった彼がこれまでに参加してきたバンドのセルフカバー曲も存分に楽しむことができる。
ナタリーではRickyと、アレンジ/トラックメイキングを手掛けた樫原伸彦にインタビューを実施。新作のコンセプトからセルフカバーの選曲基準、複数のアレンジャー起用、そして今年の春に復活を果たしたDASEINの今後についてまで、たっぷり話を訊いた。
取材・文/西廣智一 インタビュー撮影/中西求
メジャーデビュー10年の節目にセルフカバー
──「R☆MUSTER」はセルフカバーあり、新曲ありというバラエティに富んだ内容になっていますが、どうしてセルフカバーをしてみようと思ったんですか?
Ricky ライブで過去の曲を演奏するとき、最近の楽曲とサウンド面で差を感じることがあって。特にバラードやミディアムテンポの楽曲に関しては、もっと今のサウンドで表現したいって気持ちが強くなってきたんです。それで、メジャーデビュー10年目という節目の年に、本格的なセルフカバーをやってみようと思って。
──選曲する際にコンセプトはありましたか?
Ricky 自分が今でも歌いたいメロディと歌詞を持った楽曲であるということが、一番のポイントかな。最初はオリジナル曲とR*A*Pの曲である程度まとめていこうかなと思ってたんですが、今年DASEINを復活させてみて改めてDASEINにも良い曲がたくさんあるなと気付かされました。解散してしまったバンドの曲ってソロになるとなかなか歌いづらいけど、良い曲はやっぱり残していきたいし、それを歌い継いでいけるのは僕しかいないと思うので、「流離人 -サスライビト-」みたいなDASEINの代表曲をカバーしました。R*A*Pの曲もバラード系をチョイスして、“聴かせる楽曲”をコンセプトに選曲していったんです。
みんなが聴いて良いと思えるものを作りたい
──カバーする際に一番気を付けた部分、気を遣った部分ってどういうところですか?
Ricky 1stアルバム「R☆POP」はサウンド的にもああしたい、こうしたいといろいろ挑戦をしたんですけど、逆に今回はシンプルな音でいこうと。まず「イチバン☆星」と「他愛」のアレンジを樫原さんにお願いして、とにかく歌がメインのアレンジになるよう心がけました。
樫原 今回はピアノを軸にしたアレンジのオーダーが多かったかな。
Ricky そうですね。いち歌い手として、みんなが聴いて良いと思えるものを作りたいっていうのがあったんですよ。そのときにまずピアノの音色が浮かんで、柔らかいアレンジがいいなと思って。
──前作ではトラックをブラッシュアップするやり取りを何度も続けて、完成するまでに2年くらいかかったというお話を以前聞きましたが、今回は最初からRickyさんの中でやりたいことがハッキリしてたんですね。
樫原 前作のときよりも、サウンドデザインについての依頼内容が明確だったので、アレンジャーとしては非常に仕事がやりやすかったです。でも、依頼どおりにアレンジしてみたら意外に音が薄くて、僕は「えっ、本当にこれでいいの?」って何回か訊いたけど「いいんです」と(笑)。
セルフカバーだけど「これがオリジナルだ」
──確かに前作と比較すると、バックトラックの音数は少ないですが、その分歌の強さやコーラスの厚みが前面に出てますよね。
Ricky そこは、自分は歌手であり自分の声で曲を作りあげていくっていう気持ちの表れだと思うんです。カバーにはどれも原曲があるわけですけど、原曲ではエレキギターが入るドラマティックな展開を、あえてシンプルにして歌で抑揚をつけるっていう。自分で言うのもなんですけど、歌唱力で魅せていく、表現していくことを自分に課したんです。
──そういう表現ができるようになったのも、10年間活動してきた成果なんでしょうか。
Ricky 自分ではそれほど意識してないんですけど、やっぱりこれだけ歌ってきてるんで多少は成長してるかなっていうのはあります。
──既存の楽曲を新たに料理するのって、アーティストにとっては大きな挑戦ですよね。でも、今作でのカバー曲は原曲のイメージを残しつつも、ちゃんと「2010年のRicky」にアップデートされてるなと感じました。
Ricky 僕自身も、セルフカバーだけど「これはオリジナルだ」っていうぐらい、新たな気持ちで歌ってます。アレンジを依頼する際に、どのアレンジャーさんにも「僕は今後、今回のバージョンを原曲として歌っていきたい」とお伝えして、リミックスっぽくするんじゃなくて一から曲を仕上げていく感じでお願いしました。それがきっと新鮮さにつながったのかな。だから、原曲を知っている人にも自信を持ってオススメしたいです。
──完全に新曲を作った感覚なんですね。
Ricky そうです。できることならセルフカバーっていいたくないくらい(笑)。僕が書いてきた曲には変わりないけど、まだRickyのことを知らない人もたくさんいるので、これを純粋なオリジナルアルバムとして聴いてもらいたいと思ってます。
CD収録曲
- イチバン☆星
- 他愛
- 背徳の空の下で
- 深雪
- 君がいたColors~はじまりの朝~(新曲)
- 砂の城
- メトロリズム(新曲)
- Ga.rA.Ku.tA
- 流離人 ーサスライビトー
- 我ここに在り
<BONUS TRACK>※通常盤のみ収録
- 春風、吹く日に…(新曲)
Ricky(りっきー)
10月20日生まれの自称宇宙人ボーカリスト、本名Ricky Astrovich Primakov。2001年1月1日にDASEIN(元SEX MACHINEGUNSドラマー JOEとの2人組ユニット)のシンガーとしてメジャーデビュー。激しいドラムとハートウォーミングな歌声が融合した「HYPER BEAT ROCK」という独自のスタイルを打ち立て、2004年1月の解散まで精力的に活動する。その後はRicky自身が率いるバンドR*A*Pや、野村義男らによる仮面ライダーオフィシャルバンドRIDER CHIPSのボーカリストとして活躍。2009年にはテレビアニメ「鋼殻のレギオス」から生まれたヴィジュアル系バンドChrome Shelledに参加するほか、Ricky名義でのソロ活動も始動させる。さらに、2010年4月にはDASEINとしても復活ライブをSHIBUYA-AXで実施。シャンソンで基礎をしっかり学んだ歌唱力をもとに、状況に応じて声色を変化自在に操り、さまざまな楽曲を歌いこなす進化系ボーカリストである。