3人のクリエイターはどのようにReolと「金字塔」を打ち立てたのか?全員参加の座談会で明かされる幕内

Reolのアイコン感、マスコット感

Reol 今回はGigaが「ハーメルン」と「insider」のパラミックスをしてくれたんだけど、私は仕上がりがそれぞれ全然違うと思ったんですよね。

ケンモチ そう?

Reol ケンモチさんのオケはなんか濡れているというか。

Giga 湿気? でもなんかわかるな。

Iimori そこはケンモチさんがリバーブの鬼だからじゃない?

Reol そうそうそう。空間系の広がりが独特で、1つひとつの楽器が耳に響いてくるんだけど、どこかでなじんでる感じなの。それをGigaがミックスすると……。

ケンモチ パキッとなるよね。

左からReol、ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)、Giga、Masayoshi Iimori。

Iimori 音の方向性で言えば、僕のほうがGigaさんに近いですもんね。

Reol そうそう。だから「ハーメルン」はけっこうミックスで印象が変わったというか。

ケンモチ 最初はもっと自分の曲はアルバムの中で浮くんだろうなと思っていたんですけど、最終的にGigaちゃんがミックスして、Reolちゃんの声が入った瞬間に「あ、やっぱりReolっぽい曲になるんだ」と思った。

Iimori それはすごく思った。やっぱりミックスがエグいですよね。「insider」を作るときに過去作品をめっちゃ聴いたんですけど、Giga先生のプロデュース能力はヤバイなと思いました。

Reol ニコ動を中心に活動していたときに「Gigaのミックスはすげえ!」と思って頼んだんですけど、私の声とGigaのミックスの相性が異常にいいんです。

Iimori わかります。パキパキにして加工感がありつつも、もとの声が残っている。そのギリギリの線が絶妙ですよね。

Giga (照れ笑い)

──GigaさんとしてはReolさんの声のミキシングはやりやすいですか?

Reol やりづらいんでしょ?(笑)

Giga (笑)。最近はほぼReolとしか曲を作ってないから、ほかのアーティストとの曲作りがどうなるのか知らない感じはありますけど、こんな声ってあまりいないじゃないですか。リファレンスがないから、独自のものになってる気がします。

──そういった声の特性もそうですし、スタンスや佇まいなんかも含めて、Reolさんのシンガーとしての魅力や独自性をGigaさん、ケンモチさん、Iimoriさんはどう捉えていますか?

Iimori Reolさんはしゃべり声と歌声が近いんですよね。それって歌がうまい人の天性のものな気がするんです。あと自然に出している声なのに力強いのは独特ですね。

ケンモチ 僕はReolのアイコン感、マスコット感みたいなところが好きなんですよね。あとは声がレーザービームみたいにパーンとどこまでも伸びていく感じで、それが加工されたものじゃない。しかもライブで2時間くらい歌い続けてもまったく声が変わらないし、いい意味でちょっと人間離れした感じが面白いですね。

Gigaはすごい耳を持っている

──アイコン感というのはよくわかります。詞とか曲と並列で、ご自身の存在も含めたアートフォームになっていて、曲ごとやアルバムごとにご自身の見え方も変化させることまで込みで作品にしているというか。

Iimori わかります。

Reol 普段の自分の姿ではアー写とかを撮りたくないというのはありますね。原色でビビッドなものが好きになったのは、楽曲に引っ張られている部分が相当あって、作品と自分の興味の矛先は一緒な気がします。

──今作の制作にあたって、新たに興味が出てきたものはありますか?

Reol パルテノン神殿とか、古代ギリシア時代の建築は見たいです。あとは砂漠とか。これまで全然興味なかったけど、行ってみたくなってますね、今は。コンセプトのある作品を作ると、その世界観に近い情景を見に行きたくなるんです。でも、それが先行することはなくて、私の場合、作品のモチーフになりそうなものをいっぱい見たからといって曲にはならない。だからルーブル美術館に行っていろんな美術品を見ても、「ああ、楽しかったな」で終わって、感じたものを曲にはしないと思う。いい曲を聴いても、結局それと同じような曲は全然できないし。

ケンモチ ああ、わかる。

Reol やっぱり“これまでにないもの”を作らないとつまらないから。空想で作るのが好きなんです。歌っていることは実際に思っていることだけど、外枠はフィクションにしたい。

──そうやって楽曲を作っていくうえで欠かせないGigaさんの存在だと思うんですが、改めてReolさんの思うGigaさんの魅力はどんなところですか?

ReolとGiga。
ReolとGiga。

Reol たぶん私よりも音が聞こえているところですね。すごい耳を持ってると思います。音の積み方やアレンジがすごいと思う人はたくさんいても、それがエンジニアの手に渡った瞬間に変わったりバランスが崩れたりするんですよね。でもGigaはどっちも自分でやるし、自分でやるのがベストなんだろうなというのがわかるから、音楽家としてそういう均衡を自分で取れるのは魅力だと思います。ただ、人としては……あの、知り合ったころは全然自我がなかったんで。

Iimori え、どういうこと?(笑)

Reol 本当にロボットみたいで(笑)。でも、私のやろうとする突拍子もないこととか、「こういうのが面白い」「こういうことしたい」ということってだいたい具体性がないし、それを現実にするにはどうしたらいいのかという部分が度外視されているんだけど、それを面白がって技術にはめ込んでいくのがうまい。Gigaと映像を作ってくれているお菊はそういう面が強いですね。

Giga 自分はそんなに「これが作りたい」とかはないけど、“新しい何か”が作りたいから。Reolから突拍子もないことを提案されて、それと自分のエッセンスを足して作っていって「新しいものができた!」と思えるのは楽しいかな。

Reol Gigaが作って私が歌うという2人のクリエイティブが連結していくことが大事なんです。でも友達の側面のほうが強くて、たまたま共通言語が音楽だったから音楽をやっている感じで、もしお互い別の適性があったら音楽はやってないだろうな。お菊も含めた3人でやれる術は音楽と映像だけど、もし私がお笑い芸人とかを目指してたら、Gigaに「ボケやってよ」って一緒に吉本に入っていてもおかしくはないと思います。待って、めちゃくちゃ適当なこと言ってるかも今。

Giga ……。

Reol その顔、何(笑)。