Rainy。「Rainy。UNIVERSE」インタビュー|2008年生まれ、若き歌姫のバイオグラフィ (2/2)

「これ正解やん!」

──ここからは新曲についても触れていきます。「名探偵コナン」の新エンディングテーマとなった「...and Rescue Me」は、GARNET CROWのAZUKI七さんが10年ぶりに歌詞を書かれたとのこと。GARNET CROWと言えば「名探偵コナン」のテーマソングを数多く歌ってきたアーティストですし、コナンファンからしても大事件ですよね。

そうなんです!「私が歌わせてもらっていいの!?」という気持ちになってしまうぐらい、幸せな出来事でした。作詞していただけることが決まってから改めてGARNET CROWさんの曲を聴き返したんですけど、AZUKI七さんが書く歌詞は抽象的なフレーズを多用しながらも、聴く人の心に刺さる唯一無二の言葉選びが特徴だと私としては思っていて、「...and Rescue Me」も心を鷲づかみにされましたね。

──鷲づかみというのは、具体的に言うと?

「これ正解やん!」と思ったんです。音楽に正解はないかもしれないけど、「これは正解やん」と。冒頭のギターがゆらゆらと流れているところから、ジャカジャーン!と勢い付いて、「残酷なくらいに憂鬱な目覚め」というインパクトのある歌詞が乗る。この3段階で始まるところは「きたきたー!」と盛り上がれるポイントだと思っています。初めて聴いたときもずっと体が乗っていました。

──歌詞の内容については、どのように解釈してますか?

先ほども言ったように、どこか抽象的だけど「どうして私の心がわかるんだろう」みたいな、心にピタッとハマるような歌詞だなと感じました。決して具体的に言い切ってるわけではないのにどうしてこんなに刺さるんだろうって。「このフレーズってこういう意味なのかな?」と考えて、自分の中で世界観を再構築していきました。例えばサビに「二人が出会ってしまった夏がまた来る 季節は巡るだけ」という歌詞があるんですけど、2人のシルエットを思い浮かべて、AZUKI七さんの言葉から自分なりの絵を想像して歌いました。今までもいろんな曲を歌ってきて、自分なりの世界を作り上げてきたけど、また初めて見る世界を作った感覚です。ちょっとフィルターがかかったような、色褪せた情景を思い起こさせる歌詞が、疾走感と切なさのあるメロディにマッチしていて、最高の曲だなって思いました。

私はRainy。だから大丈夫

──「Rain your World」は全英詞の楽曲で、日本だけでなく世界で活躍したいと考えるRainy。さんらしさが詰まっていますね。

「Rainy。という雨があなたの心にも降り注ぐよ」ということを歌った曲になっていまして。「Iʼm your Tinker Bell」という歌詞があるんですけど、「私はあなたのティンカーベルで、いつでもあなたのそばに飛んでいくからね」とかわいさを表現しつつ、「Rainy。ってこんな感じの子なんだよ」と伝えています。それをかわいらしく跳ねているようなメロディに合わせて歌いましたね。

──そのほかにも歌い手としていろんな引き出しを覗かせる楽曲がある中、「ME」はRainy。さん自身が作詞されただけあって、ほかの楽曲とは一線を画す生々しさがあります。

デビューが決まって「Rainy。はどうやって成長していくべきなのか」「どうやったらもっと私の名前が広まるのか」「このままでいいのか」っていろんな葛藤を抱えていたときに書き殴った文章がもとになっています。どちらかと言えば悲しい雰囲気なんですけど、「自分は自分でいればいい」というサビの歌詞は、どれだけつらくても、どれだけ他人に笑われたとしても、自分が自分のことを信じていれば人生はいい方向に行くから大丈夫だ、と自分を鼓舞するつもりで書きました。皆さんにも共感してもらえるように、あえて抽象的なフレーズを使っているのもポイントです。ぜひ自分に当てはめて聴いてほしいです。

──ただ純粋に音楽が好きで芸能の世界に飛び込んだものの、想像以上の葛藤や壁が待ち受けていたというRainy。さんの心情が色濃く描かれている印象を受けました。この解釈で合っていますか?

合ってます! まさしくそういう曲ですね。

──若くして音楽の世界に足を踏み入れて、大きなタイアップを任されるなど順調に活動しているように見えていても、やはり葛藤することがあるんですか?

学校生活と音楽活動を両立するって決めたのに時間が追いつかないとか、自分で決めた道だけど友達が遊んでいるのを見て「うらやましいな」と思っちゃうこととかがどうしてもあって。そういうときは「私はRainy。だから大丈夫! 今、後悔したとしても明日後悔することないよ」と無理矢理に自分を鼓舞していたんですよ。だけど、そのままがんばり続けるのも違うなと思ったんです。1回立ち止まって思いっきり悩んでみようと思って悩んだ末に書いたのが「ME」なので、もう解釈はバッチリ合ってます。

──まさにドキュメンタリーのような曲なんですね。

そうですね。「ME」は自分で書いたのもあって、歌詞が私自身と重なりますね。とはいえ、どの曲も自分と重ねて歌うところはあります。

──自分自身と重ねて歌うと言えば、今作は12歳のときにレコーディングした「絆炎」と、その曲を14歳になって歌い直した「絆炎 - Symphonic Style-」の両方が収録されています。年齢を跨いで同じ曲を歌ってみて、感触は違いました?

12歳のときはファンタジーチックに歌っていたんですけど、14歳で歌ったときは自分と向き合うような、自分自身に語りかけるようなイメージで歌いました。それこそ12歳と14歳では経験値も違いますし、今は歌唱力も土台ができているので、「絆炎 - Symphonic Style-」は地に足をつけて、風が吹く中で悠々と歌っているイメージです。

視界をがっちりホールドする構成

──今回のアルバム制作で印象に残ってることはなんでしょう?

あの……全部っていう回答はなしですか?

──全然アリですよ。

やっぱりどの曲も色が濃くて、本気で大切にしたいなって思える曲と思い出ばかりなんです。むしろSunny。(Rainy。ファンの呼称)のみんなが抱く印象が気になります。「これを聴いたら何を思うんだろう」とすごく気になっていて。

──個人的には、アルバムの1曲目からラストに向かうにつれてRainy。さんのパーソナリティが濃くなっていく印象を持ちました。

私もそう思いました! 「...and Rescue Me」で幕を開けて、「Rain your World」でRainy。の人柄を解釈してもらって、それ以降は視界がガチッとホールドされて「もうRainy。の曲しか聴けない」というマインドになっちゃう曲順になってると思います。

──アルバムの前半は「こんな曲も歌えるよ」とレンジの広さで魅せて、後半から「Rainy。というアーティストの芯には何があるのか」を紹介している構成であるように感じました。

ありがとうございます! その通りだと思いますし、そこを感じていただけてうれしいです!

──改めて「Rainy。UNIVERSE」は、デビューから現在までの集大成と言える1枚だと思います。だからこそ聞きたいんですけど、音楽活動を始めて今日まで大事にしてきたことはなんでしょう?

私は自分の意見が確立できたら、ほかの人に「これどう思いますか?」と聞いて、自分の意見に客観的な視点を加えるのが好きというか……そうしないと気が済まないんです。主観で終わるんじゃなくて、客観性を加えるのが自分の絶対的なルール。いろんな視点に間違いなんてないと思うし、お互いが言葉に対して思ってるイメージってちょっとずつ異なると思うんですよ。だからこそお互いの理解を深める表現を大事にしています。

──15歳なのに達観してるというか、主観と客観の両方をいいバランスで持っているんですね。

ラジオを始めたのが力になってる気がしています。これまでは、人の意見を聞いても流してしまうところがあったんですけど、今は第三者に言ってもらった大事な部分を頭の中で文にして、「ここはマーカーを引けるところだな」という感じで、要点をまとめています。そして自分と相手の考えていることの中間を抜き出して「こういうニュアンスで合ってますか?」と確認を取って、一緒に答えを探していく。そんなイメージで歌を紡いでます。

──記念すべき1stアルバムが完成したことで新たに見えた、次なるビジョンはありますか?

まずは先ほども言った通り、「Rainy。UNIVERSE」はいろんなRainy。を知ってもらえるアルバムになったと思っています。今後は1つの曲を通してずっと同じ顔をするんじゃなくて、いたずらそうに笑うRainy。とか、悲しげに歌うRainy。とか。もっといろんな表情を見せられる楽曲をたくさん作って、それらをまとめたアルバムをまた発表したいと思ってます!

プロフィール

Rainy。(レイニー)

2008年6月28日生まれのシンガー。2022年4月にアニメ「名探偵コナン ゼロの日常」エンディング主題歌となった「Find the truth」でデビューを果たす。同年9月にはTGC 2022 公式応援ソング「All or Nothing」、2023年2月にはNintendo Switch™用ゲームソフト「FIRE EMBLEM ENGAGE」のエンディング主題歌「絆炎」を発表。15歳の誕生日である6月28日に1stアルバム「Rainy。UNIVERSE」をリリースした。