Lotus Juice×Azumi Takahashiインタビュー|「ペルソナ3 リロード」サウンドの裏側にあった、18年前の自分を超える戦い (2/2)

「無償でいいから書き直させてくれ」

──過去の話になりますが、Lotusさんが18年前にオリジナルの「ペルソナ3」に参加した際の話を聞かせていただけますか?

Lotus 無印の「ペルソナ3」のときは友人からの連絡がきっかけだったんですよ。友人から「ゲーム音楽に興味ある?」と聞かれて、試しに曲を聴かせてもらったらめちゃくちゃカッコよくて。「これ本当にゲーム音楽なの?」と思いました。どうやらすでに歌詞があるようなので、僕の役割はラッパーとして歌うことだと思いスタジオに行ったら、けっこうめちゃくちゃな英語の歌詞が用意されていて。「ペルソナ」の音楽を担当している目黒さんに「申し訳ないけどこれは何を言っているかわからない英語になっているから、歌ってもいいけど僕の名前は書かないでください」と伝えたら、「では歌詞を直してもらえますか?」という要望がありまして、その場で書き直したのが無印の「Mass Destruction」です。

──リメイク版に収録されている「Mass Destruction -Reload-」では、当時Lotusさんが書いた歌詞はそのままに、2番の歌詞が追加されています。なぜ歌詞を追加することに?

Lotus これはリメイクの難しいところですが、無印のファンもたくさんいるので、曲自体の印象を変えてしまうわけにはいかないんですよね。特にこの曲はライブでも披露されているし、リミックスもたくさんある。いろんな方の記憶に残っている歌詞をガラっと変えることをせず、僕の思いを詰め込むには2番の歌詞を新たに追加するという形がベストだと思いました。18年前の僕はまだゲームのことをそこまで理解する前に、即興で歌詞を書いていたので、そのときに詰められなかったことも含めて、2番の歌詞にはかなり僕の思いを込めました。

──今回の取材で伺いたかったことの1つに、ラストバトルの曲「Burn My Dread -Last Battle Reload-」の歌詞に関してのことがあります。この曲ではオリジナルの「ペルソナ3」で書かれた歌詞が一新されていますが、これはどういう思いからですか?

Lotus 「Burn My Dread -Last Battle-」に関しては制作サイドから「歌詞はそのまま使います」と言われたんですけど、僕が「無償でいいから書き直させてくれ」とお願いしたんです。無印の歌詞も僕が書いていたんですが、当時はまだこのシーンがどんな意味を持つのかそこまで理解できていなかった。あれから18年経って僕自身が「ペルソナ」のファンになり、今書くならばそれを踏まえてを書く必要があるな、と思いました。

Lotus Juice

Lotus Juice

──新たに歌詞を書く際に、どんなことを考えましたか?

Lotus ラストバトルのネタバレになってしまうので詳しくは話せませんが、「Burn My Dread -Last Battle-」の歌詞は主人公からみんなに向けた言葉なんです。とはいえ、これは僕がただ書きたいだけで書けるものではないので、アトラスのスタッフがOKを出せるクオリティでなければならないし、ファンの皆さんに歌詞まで含めて楽しんでもらえるものにできなければ意味がない。18年前の自分に勝たなければいけないプレッシャーも感じていました。

──「Mass Destruction -Reload-」と「Burn My Dread -Last Battle Reload-」はどちらも高橋さんがボーカルで参加した楽曲でもあります。歌詞のアプローチ以外でも高橋さんが入ることで新しい風が吹く、みたいな感覚もありましたか?

Lotus それはもちろん。すごく心強かったです。別の曲の話になってしまいますが、「キミの記憶」のような楽曲を難なく歌う高橋さんって、すさまじいんですよ(笑)。これほどのボーカリストの方が参加してくださるなら、歌のパートはまったく問題ないと思っていました。

高橋あず美は日本の至宝

──改めて伺いますが、Lotusさんは高橋さんのボーカリストとしての魅力はどこにあると感じていますか?

Lotus 生でライブを観たら一目瞭然なんですけど、高橋さんは小柄なのに歌のパワーがすさまじくある。ステージで共演していると、すごく大きく感じるんですよ。ステージでの存在感があってどっしり構えているから、僕は全然不安に感じたことがないですね。

高橋 うれしい(笑)。

Lotus 本人にも伝えていますけど、僕は日本の至宝だと思っています(笑)。日本が誇るボーカリストです。もっともっと世の中に広く知られてほしい。もうただのファンですね。

──逆に高橋さんから見て、Lotusさんのラッパーとしての魅力はどこに感じますか?

高橋 まだLotusさんに会う前、デモ音源を聴いてどんな方か想像していたときは、ネイティブの方なのかなと思っていたんですよ。そうしたら、この出立ちでレコーディングに来て気さくに話しかけてくれて、一気に緊張が解れたというか(笑)。さっきも言いましたが、すごく安心させてくれる方というのがまず第一に感じたところです。ラップに関してはいい意味でニュートラルな感じ。捲し立てるような激しいラップじゃなくて、淡々としているけど、心の中ではふつふつと燃え上がっているのが声に出ている。自分の感情のまま波を作って歌う人なので、聴いていてすごく心地がいいです。

Lotus あまりこういう話を真面目にしないので、恥ずかしいですね。

高橋 低音がすごくいい感じに響くんですよね。「ペルソナ」にもすごく合っています。

高橋あず美

高橋あず美

ライブに来ればきっと仲間になれる

──最後に「ペルソナ」ファンに向けて、何か伝えたいことやメッセージはありますか?

Lotus 僕、この仕事を通じて「ミュージシャン冥利に尽きるな」と思った経験があって。「ペルソナ」のライブがきっかけで出会って付き合うことになった男女が、おそろいのタルタロスのタトゥーを入れたのを見せてもらって、それが超カッコよかったんですよ。それと「入院中にゲームをやって、ライブに行きたいからずっと治療をがんばってきました」と声をかけてもらったこともあります。こういう声を聞いて、僕はもうミュージシャンとして最上級のことができたから、いつ引退してもいいかなと思ったんですよ。

──音楽を通じて誰かの人生を支えられたという実感があったから?

Lotus そう。もしかしたら僕の力だけではなし遂げられなかったかもしれない。「ペルソナ」というタイトルのもとこんな素晴らしい仕事ができて、誰かの人生に携われて。もうこれ以上のことはないなって。なので「ペルソナ」というシリーズに参加させてもらって、ずっと誇らしい気持ちです。

高橋 ゲームの音楽に携わらせてもらって、これほど世界にファンがいるのか、ライブを披露するとこんなに喜んでもらえるのか、というのを日々実感しています。行ったことのない土地に行って、もしかしたら私のことなんて知らないかもしれないのに、音楽を通じて一緒に盛り上がれるんですよ。しかもその盛り上がり方がすさまじい。まだまだ行ったことのない土地で歌いたいですし、いろいろな人にこの音楽で喜んでほしいと思っています。

Lotus ゲームを通じてもっともっとみんながつながってほしいし、ゲームから派生したライブのような場所でもつながり合って一緒に楽しむ時間を共有したいですね。ゲームをプレイするうえでは音楽は1つの要素に過ぎないので、まずはゲームに没入することに集中してもらいたいですが、ライブはライブでゲームでは体験できない感動があるので、もしよかったら僕らのライブにも遊びに来てほしいです。そうしたら同じ「ペルソナ」ファン同士、僕らはきっと仲間になれるはずだから。

左からLotus Juice、高橋あず美。

左からLotus Juice、高橋あず美。

プロフィール

Lotus Juice(ロータスジュース)

ソロ活動のみならず、さまざまなゲームやアニメ作品でも活躍するヒップホップアーティスト。9歳で家族と渡米し、ニューヨークやニュージャージーで高校卒業まで過ごす。ネイティブに通用する音楽を目指し、英語詞のオリジナル楽曲を中心として活動。2006年にPlayStation 2用ゲームソフト「ペルソナ3」の音楽制作に参加したことを皮切りに、数多くのペルソナ関連作品の楽曲やライブに参加するように。そのほか「ジョジョの奇妙な冒険~戦闘潮流~」「ソウルイーター」「魔法科高校の劣等生」「黒執事」などのアニメや、映画「シン・仮面ライダー」などの音楽にも携わっている。2024年発売のゲーム「ペルソナ3 リロード」で使用されたLotus Juice, Azumi Takahashi名義の楽曲「It's Going Down Now」が世界的にヒットし、音楽アワード「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」で「Top Global Hit From Japan」にノミネートされた。

高橋あず美(タカハシアズミ)

長野県の乗鞍高原出身のシンガー。高校卒業後に音楽専門学校進学のため上京し、書き溜めた曲で都内を中心にソロライブ活動を開始する。圧倒的な歌唱力を発揮し、DREAMS COME TRUE、YUKI、中島愛、坂本真綾らのライブのサポートやレコーディングなどに参加。2013年に1stアルバム「25 to 26」をリリースする。2018年、アメリカ旅行中にニューヨークの地下鉄で歌った動画がTwitterで話題に。それをきっかけにニューヨークのアポロシアターで開催される「アマチュアナイト」に出場し、全4回のステージを勝ち抜いて、日本人シンガーとしては史上初である年間チャンピオンとなる。2024年発売のゲーム「ペルソナ3 リロード」で使用されたLotus Juice, Azumi Takahashi名義の楽曲「It's Going Down Now」が世界的にヒットし、音楽アワード「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」で「Top Global Hit From Japan」にノミネートされた。