音楽ナタリー Power Push - エンドウアンリ(PELICAN FANCLUB)×井上竜馬(SHE'S)対談

今、この瞬間を歌う理由

音楽なら“今そのときのモノ”として味わえる

──エンドウさんは歌の持つ魅力をどういうところに感じていますか?

左からエンドウアンリ(PELICAN FANCLUB)、井上竜馬(SHE'S)。

エンドウ 何かを伝えるということは、文章でもできるんですけど、文章を読むという行為はリアルタイム感がない気がするんですよね。例えば昔の文豪が書いた小説って、今でも読むことができるし、貴重なものだとは思うんですけど、やっぱり“昔のモノ”というイメージが強い。でも音楽だったら昔の曲でも、“今そのときのモノ”として味わうことができる気がするんですよ。僕はバンド活動をしていく中で大事にしたいものが変わってきているんですが、最近は“今”を大事にしたいという思いが強くて。

──その気持ちは「OK BALLADE」を聴くと伝わってきます。

エンドウ 「OK BALLADE」の8曲目「今歌うこの声が」に「今歌うこの声が今歌うこの歌だ」っていう歌詞があるんです。その曲を聴いている人からしたら当たり前のことだって感じると思うんですけど、それをあえて歌うことで「あ、今PELICAN FANCLUBが歌ってるんだ」って再認識できる。僕は楽曲に乗る言葉、つまり歌詞はある種の攻撃だと思っていて、それと音楽という“ナマ感”のあるものが合わさって、文章よりすごく強いものになると思うんですよね。

目に見えないけど確かなものを歌いたい

──井上さんはご自身の歌にどのような思いを込めていますか?

井上 俺が音楽を始めた頃、歌は欲求を満たす方法でしかなかったんですよ。大きい声を出して歌うのが楽しいとか、気持ちいいとか。会社員がストレス解消のためにカラオケに行くみたいなそんな感覚だったと思います。

──そこから徐々に変わってきている?

井上竜馬(SHE'S)

井上 そうですね。作品を出すごとに応援してくれるお客さんが増えてきて、そういう人たちにいかにして恩返しができるかっていうことを考えるようになって。自分にとって歌は欲求を満たすものではなくて、応援してくれる人を勇気付けたり、元気付けたりするものになりましたね。

──でも歌詞は人を応援するような内容ではなくて、すごくパーソナルなものが多いですよね。

井上 俺が歌うのは自分の経験や感じたことだけですね。でもリアルなことを歌うと共感してくれる人も多くて、お客さんたちは「悩んでいたことがクリアになりました」とか「現実と向き合う力が湧いてきました」って言ってくれるんです。自分の歌が誰かに届くことで、そうやって言ってもらえると、ほんまにそれだけで十分やなって思いますね。

──なるほど。

井上 あと、「OK BALLADE」を聴いてPELICANと俺らとで共通してるなと思ったことがあって。「記憶について」の歌詞で「目に見えない物を信じたい」ってエンちゃんが歌ってるんですけど、俺らも目に見えない愛という感情について歌った「Un-science」という曲があるんです。その曲で俺は、“俺らはつまり目に見えないものばっかりを信じて生きてきてるんじゃない?”っていうことを伝えたくて。結局、俺らみたいに歌を大事にしたいバンドは、そういう目に見えなくて漠然としてるけど、確かにあるものを歌いたいんですよ。むしろそれだけな気がするんですよね。俺らの活動は自分に芽生えた思いを歌って、お客さんに何かが伝わる。で、またそれを受けて芽生えた思いを歌う……そういうやり取りの繰り返しだと思います。

──エンドウさんはSHE'Sのシングルを聴いてみていかがでしたか?

エンドウ 僕はカップリングの「Time To Dive」という曲が好き。竜馬が「“なんとなく”を信じてみよう 全てはここからだ」って歌っていて、その言葉になんかグッと背中を押されましたね。

──確かにPELICAN FANCLUBの「記憶について」にある「目に見えない物を信じたい」という歌詞と、SHE'Sの「Time To Dive」にある「衝動的で根拠もないけど “なんとなく”を信じてみよう」という歌詞はどちらも前向きに見えないモノを信じている感じがしますね。

エンドウ 歌詞を見てると同じ人が書いてるんじゃないかっていうぐらい、すごく似てるんですよね。PELICAN FANCLUBのアプローチの仕方、SHE'Sのアプローチの仕方はあれど、結局のところ同じことを歌ってるっていうのは面白いなと思いました。

PELICAN FANCLUB ミニアルバム「OK BALLADE」 2016年6月8日発売 / 2160円 / UKDZ-0169 / DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT
「OK BALLADE」
Amazon.co.jp
収録曲
  1. 記憶について
  2. アンナとバーネット
  3. for elite
  4. Ophelia
  5. M.U.T.E
  6. 説明
  7. youth
  8. 今歌うこの声が
SHE'S メジャーデビューシングル「Morning Glow」 2016年6月8日発売 / 初回限定盤 [CD+DVD] / 1836円 / TYCT-39038 / Virgin Music
「Morning Glow」
Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. Morning Glow
  2. 日曜日の観覧車
  3. Time To Dive
DVD収録内容

Live Footage "She'll be fine -chapter. 0- at Shibuya Club Quattro, 3.14.2016"

  • Un-science
  • Change
  • Evergreen
  • ワンシーン
  • 遠くまで
PELICAN FANCLUB 2016 CULT'UR OF PELICAN FANCLUB
  • 2016年6月23日(木)愛知県 Live & Lounge Vio
  • 2016年6月24日(金)大阪府 CONPASS
  • 2016年6月29日(水)東京都 clubasia
  • 出演者 PELICAN FANCLUB / The Mirraz
SHE'S「SHE'S Major Debut Single『Morning Glow』RELEASE TOUR ~The Everglow -chapter.1-~」
2016年7月20日(水)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
出演者 SHE'S / cinema staff
2016年7月26日(火)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
出演者 SHE'S / 雨のパレード
2016年7月28日(木)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
出演者 SHE'S / GLIM SPANKY
PELICAN FANCLUB(ペリカンファンクラブ)

PELICAN FANCLUB

エンドウアンリ(Vo, G)、カミヤマリョウタツ(B)、クルマダヤスフミ(G)、シミズヒロフミ(Dr)からなる4人組ロックバンド。2014年10月にタワーレコード限定で100円シングル「Capsule Hotel」をリリースし、耳の早い音楽ファンからの注目を集める。2015年1月に1stミニアルバム「ANALOG」を発表。8月にUK.PROJECT内のレーベルDAIZAWA RECORDSよりアルバム「PELICAN FANCLUB」をリリースした。全国ツアーのファイナル公演として東京・WWWにてワンマンライブを行う。2016年6月にミニアルバム「OK BALLADE」を発表し、The Mirrazを迎えたツーマンツアー「PELICAN FANCLUB TOUR 2016 “CULT'URE OF PELICAN FANCLUB”」を開催する。

SHE'S(シーズ)

SHE'S

井上竜馬(Vo, Key, G)、服部栞汰(G)、広瀬臣吾(B)、木村雅人(Dr)からなる4人組ピアノロックバンド。2011年に結成して地元大阪を中心に活動を続け、2012年に行われた「閃光ライオット2012」ではファイナリストに選出された。2014年7月に初の全国流通盤となるミニアルバム「WHO IS SHE?」を発表し、2016年5月には2ndミニアルバム「WHERE IS SHE?」をリリース。2016年2月に3枚目のミニアルバム「She'll be fine」を発売し、3月に全国5都市のワンマンツアー「She'll be fine -chapter.0-」を開催した。6月にリリースするシングル「Morning Glow」で、Virgin Musicからメジャーデビューを果たす。