ORβIT|音楽に注ぎ込む情熱とこだわり

7人の姿が見えてきた

──HEECHOさんが作詞したリードトラック「Blind」は、ストックしていたデモの中からどういう観点でピックアップしたんでしょうか? サウンド的にトロピカルなエッセンスも感じます。

HEECHO 「僕らがやったらこうなるんだろうな」というイメージが湧いたというか。曲がいいかどうかももちろん大切なんですけど、僕の場合は「僕らに似合うものを」というところを大切にしていると思います。

──歌詞には独特の色気や陰のある雰囲気が漂っています。

HEECHO 最初はJUNEと2人で書いていたんですよ。でもその歌詞がみんなからフラれてしまって。

──1回書いたものがボツになってしまったということですか?

HEECHO はい。

JUNE 最初の歌詞はほかの曲とコンセプトが似ていたので、ちょっと変えたほうがいいなという話になって。最終的にはHEECHOくんが1人で担当することになりました。

HEECHO 「Enchant」では“大人の愛”をいろんな形で表現しているんですが、その中でも「Blind」は一般的じゃない愛を表現しようと思って書き始めた楽曲です。ファンの皆さんが聴いて、喜ぶ部分を考えながら書きましたね。

──先ほどSHUNYAさんが「このアルバムは歌詞にエッジが効いていて、エグみのある世界観になっている」とおっしゃっていましたが、「Blind」はまさにそういう曲ですよね。「罪の目隠しは肌刻む 苦味に変わる血の跡」という。

HEECHO アルバムのコンセプトに合わせて書いた曲なので、僕がそういう人っていうわけではないです(笑)。

一同 (笑)。

YUGO 韓国語と日本語では言い回しが違ってくるだろうに、違和感もなく、すごく綺麗で心に残るような歌詞を仕上げていたのですごいなと思いました。

──ラストには韓国語のフレーズも入っていますね。終わり方がとてもカッコいいです。

HEECHO ミニアルバムの打ち合わせで「今回は韓国語も入れよう」という話になって、最初はこの曲のいろんなところに入れていたんですけど、ちょっと中途半端な感じがあったので、最後だけにしました。

──ブリッジの「愛の実を盗んで」から「煌く赤く浮かぶ月」まで、7人で順番にソロをつないで歌っていますよね。この歌割りは、作詞を手がけたHEECHOさんの案ですか?

HEECHO はい。この曲を初めて聴いたときから、ブリッジの部分は7人が1行ずつ歌うのが絶対いいなと思ったんです。パフォーマンスも想像しながらデモを聴くんですが、ここは7人の姿が見えてきたので。けっこうこだわったところです。

──この曲に限らず、歌割りはリーダーのHEECHOさん主導で決めているんでしょうか?

HEECHO そうですね。

──パートを振り分ける役目を担えるのは、それだけHEECHOさんがみんなの歌声の魅力や特性を把握しているからだろうなと思います。

HEECHO ……恥ずかしい(笑)。でも、デモを聴いたときに頭の中にそのパートを歌ってるメンバーの声が聞こえて、パート割りがすでにできていたりします。

──それは「Blind」に限らず?

HEECHO どの曲を聴いても、ある程度はイメージできますね。

──なるほど。皆さんレコーディングはいかがでしたか?

SHUNYA めちゃくちゃ難しかったです(笑)。

JUNE 一番難しかった。

YUGO 本当につらかったです、この曲だけは……。

HEECHO この曲は「00」の楽曲を含めても一番難しい曲なんです。みんなよくがんばってくれましたね。

SHUNYA ゆったりとした楽曲に聴こえるけど、ビートが強い曲だから、細かなリズムを感じながら歌わなきゃいけないんです。最初に録った歌を聴いたときに、みんな顔が真っ青になりましたもん。それで、何回も録り直して。

HEECHO 日本組が録ったのを聴いたら、もともとうまく録れていたのに、みんな満足できず「録り直したい」ということだったので。メンバーの聴く耳が肥えて、求めるもののレベルが高くなっていて、成長したなって。いいことだと思いました。

ラップで苦戦してる姿を初めて見た

──3曲目の「Never gonna get away」はYUGOさんが作詞を手がけた楽曲です。クールなトラックに艶やかな歌詞が乗せられていますね。

YUGO 実は最初、SHUNYAと一緒に書いていたんですよ。

SHUNYA うん。

YUGO そのときは“花”をテーマにしていたんですけど、ほかの楽曲と似ていたので、ちょっと視点を変えて、僕のほうで“楽園”をコンセプトにして書きました。

──前回作詞を担当された「みずたまり。」はさわやかな雰囲気だったので、YUGOさんの中に「歪な愛の出口に鍵をかけて」というような、大人っぽくて艶やかな表現もあるんだなと驚きました。ご自身としては自然と書けたんですか?

YUGO

YUGO 「みずたまり。」よりもスムーズに書けたような気がします。日本語ならではの言い回しとかも意識しつつ、作詞していきましたね。

TOMO YUGOっぽい表現もあるよね。「適切な不具合は 煙に巻いて全て just fake it」とか、そう感じた。

JUNE YUGOが普段聴いてる音楽の影響を感じる。

YUGO 僕は普段、邦楽のバンドやシンガーソングライターさんの曲を聴いていて。それが自分の表現のルーツになっているのかもしれないです。

JUNE 僕は今回初めてYUGOが書いた歌詞でラップをしたんですけど、正直難しかったですね。

SHUNYA ラップで苦戦してるJUNEくん、初めて見たよね(笑)。

YUGO 僕がけっこうギリギリに歌詞を仕上げちゃったから、JUNEに歌詞を送ってからすぐレコーディングだったのに、よく対応してくれました!

JUNE いつも僕は無意識に自分が言いやすいようなリリックを書いていたんだと思います。YUGOが得意な感じのラップ詞をどうやって表現しようかなってがんばった。なかなかうまく言えず、何回もテイクを録って、なんとかやっといいものが1本出て……どの単語を手こずったのか、ファンの皆さんに当ててもらいたいです(笑)。

YOONDONG 僕もラップをしていますが、日本語の発音が難しくて。「逃げられない」という歌詞があるんですが、そこをなかなかうまく発音できなかったです。

YOUNGHOON まだ発音がうまくできないんですか!?

YOONDONG 「逃げられない」のところを何回も何回も録り直しました。

TOMO  YOUNGHOONくんスルーされた(笑)。

JUNE うまくラップできない気持ち、わかります……。

2面性がある楽曲

──4曲目「Dionaea」は、穏やかな曲調に乗せてとても深い愛が歌われているなと。作詞はJUNEさんが手がけています。

JUNE ほかの4曲はけっこう難解な歌詞だと思うんですが、この曲はできるだけわかりやすく、簡単な日本語で書きました。でも、「Dionaea」=「ハエトリグサ」の花言葉を知ってから楽曲を聴くと、また違うストーリーを感じられるんじゃないかなって。二面性がある楽曲なので、そのギャップも楽しんでいただけたらと思います。

──前作ではヒップホップ調のトラックに乗せて強いリリックを書かれていましたが、この曲のような柔らかい表現も自然とJUNEさんから出てきたものですか?

JUNE そうですね。何回かちょっと歌詞を変えたりはしたんですけど、そんなに苦戦した記憶はないです。サビも同じフレーズの繰り返しなので。

YUGO サビで「ぎゅっと」というフレーズを繰り返し使っているのが、僕はJUNEらしくていいなと思いましたね。

SHUNYA ハエトリグサって食虫植物だから、ハエを食べるようなイメージが強かったんですけど、君を守りたいから包み込むというところに発想を飛ばしたのは上手だなと思いました。

JUNE

JUNE でも、ハエトリグサの意味を知ったら、“守る”じゃなくて……という仕掛けがあるんですよね。

SHUNYA 面白い歌詞なんです。

──サビの「ぎゅっと 抱きしめ」からのJUNEさんとYUGOさんのささやくような儚い歌声が印象的でした。1番は「ぎゅっと」をJUNEさん、そのあとのフレーズをYUGOさんが歌って、2番はそのパートを逆にしているんですよね?

JUNE はい。サビの歌詞は同じなんですけど、歌う人を逆にするだけで雰囲気も変わりますよね。僕の「ぎゅっと」は、YUGOより大人の抱きしめ方になってるんじゃないかな(笑)。

YUGO 子供なりの抱きしめ方もあるからね! 感情フルスロットルで、歌詞の世界観に入り込んで歌いました。

一晩しか咲かない花

──そしてミニアルバムはピアノバラード「Flor Lunar」で締めくくられます。

JUNE この曲はTOMOが入れたいと言っていたんですよ。

TOMO 僕たちそれぞれのボーカルの個性を生かせるのはバラードだと思って、ミニアルバムに1曲は入れたかったんです。デモの中にもう1曲いいなと思うバラードがあったんですけど、そっちの曲は冬っぽい印象を受けたので、まだ隠し持っています(笑)。「Flor Lunar」はアルバムのコンセプトにも合うし、「これでいきましょう」とメンバーに伝えたところ、みんな賛同してくれました。この曲に関してはHEECHOさんがパート分けをするときに僕にも相談してくれて、一緒に「ここはこの人が歌ったほうがいいかも」と話し合いながらパートを決めていきました。

SHUNYA 歌詞に関しては前作で「Lazurite」の作詞を担当してくださったKanako Katoさんにお願いしました。「Flor Lunar」というタイトルはスペイン語で、日本語に訳すと“月下美人”。ひと晩しか咲かない花なんです。この曲には儚くて切ない雰囲気があると思います。

──出だしのTOMOさんの歌声から、その世界観に引き込まれますね。

TOMO

TOMO 前作でもバラード曲「Serenade」の歌い出しを担当させてもらったんですけど、バラード曲の歌い始めって、楽曲の世界観を作るのがすごく大変で。いいスタートを切らなきゃ歌い出しにしてもらった意味がないので、すごく心を込めて歌いました。

SHUNYA 2番手の僕は、それをつなぐのが逆にプレッシャーでもあります(笑)。「Lazurite」もYOUNGHOONさんから始まって、次が僕だったんですよね……。

TOMO でも、SHUNYAは本当にすごく上手に歌えているよ。

──ストレートなピアノバラードだからこそ、ORβITの7人それぞれの歌の魅力が際立っていると思います。先ほどSHUNYAさんもおっしゃっていましたが、こういったバラードだとYOONDONGさんの歌のよさがよりわかりますよね。

TOMO YOONDONGさんの歌、本当にいいんですよね。

YOONDONG 楽しんで、メンバーに負けないようにがんばってレコーディングをしました。バラードをレコーディングするときはいつも楽しいです。ORβITは7人全員ボーカルがうまいグループだから、毎回絶対にバラードはあってほしいです。

──最後の「綺麗なままでいたいの、と うつむく花がひらり」というYOUNGHOONさんの、余韻が残るような儚い歌声もとても印象的でした。

SHUNYA あそこはえげつないですね。

YOUNGHOON ありがとうございます。その部分はただ歌う感じじゃなくて、歌詞をそのまま話すようにしたんです。

メンバーに認めてもらうことが一番うれしい

──ジャケットはどのようなイメージでデザインしたんですか?

「Enchant」ジャケット

SHUNYA 植物をバンッとメインにするんじゃなくて、昔使われていた森の中にあるお城の植物を窓の外から見る、という感じで切り取りました。窓の部分をくり抜いてパッケージにしているんです。そもそも表紙の部分をくり抜けるかどうかというところから始まり、どういう見え方になるのか想像しながら進めていきましたね。

JUNE SHUNYAがすごいのは、1を2にするんじゃなくて、0から作り出すところだと思う。それってなかなか簡単にできることじゃないと思うんですよね。

TOMO 想像力がすごいよね。

SHUNYA メンバーに認めてもらうことが僕はすごくうれしくて、一番のモチベーションになっているんです。「こういうデザインを考えたんですけど、どうですか?」って聞いたときに、「ありがとう!」「いいね!」と言ってくれるメンバーがいるから、僕はこうしてデザインができるし、6人に成長させてもらっている。いつもメンバーにデザインを提出するときは緊張するんですけど、今回もみんなから「いいね」と言ってもらえてうれしかったです。

SHUNYA

──ミニアルバムが1枚できあがって、改めて手応えとしてはいかがですか?

SHUNYA 先ほどHEECHOさんも「Blind」は今までで一番難しい曲と言っていましたが、ORβITはこういう曲もできるんだなという、自分たちの表現の幅が広がったような作品になったんじゃないかなと思います。

HEECHO 僕としては「1個終わった、次のことやろう」という気持ちですね。

一同 (笑)。

HEECHO このミニアルバムの作業はもう終わったので。作品の良し悪しを判断するのは世の中の皆さんだと思いますし、僕たちとしてはすぐ次のことをやるのが大事だと思います。

──ORβITとしては今後何を大切にして、どういう姿勢で活動していきたいですか?

HEECHO 何よりも“7人で考えて作る音楽”を大切にしたいです。ダンスパフォーマンスでの表現も大事だけど、僕たちはまず歌手だと思っているので、まずは楽曲を最善にして、そこからいろんなところに表現を広げていきたいです。

SHUNYA 音楽を大切にしているからこそ、早くライブもやりたいですね!