2003から2011年までRYTHEMのメンバーとしてメジャーフィールドで活動し、解散後2015年途中まではNeat'sとして作詞作曲編曲から音源の販売まで自ら手がける完全DIYで活動してきた新津由衣。彼女が本名の新津由衣に名義を変え、3度目のデビュー作となるアルバム「Neat's ワンダープラネット」を発表した。
2015年から、SEKAI NO OWARI、ゆず、SKY-HIなどを手がけるプロデューサーチームCHRYSANTHEMUM BRIDGEと組んで3年かけて作り上げられた「Neat's ワンダープラネット」。そのプロモーションとして受けた最初のインタビューが音楽ナタリーだという新津は開口一番「今日はめちゃくちゃ緊張してるんです」と打ち明け、この3年間にあったこと、アルバムに込めた思いなどをじっくり語ってくれた。
取材・文 / 高岡洋詞 撮影 / 藤井拓
弱い自分を見せる覚悟が決まり本名名義に
──まず、アルバム完成までに3年かかった理由から伺ってもいいですか?
楽曲制作にも時間はかかったんですけど、それ以上に自分の精神面が変化したことに一番、3年という時間の意味を感じています。3年前と今ではモチベーションや覚悟が全然違うんですよ。◯だったことが×になったり、×だったことが◯になったり。後者のほうが多かったけど、とにかく自分の価値観が変わっていく3年間でした。改めて「私はなぜ音楽をしてるのか」「なぜやめられないのか」というところにも向き合って、すごく弱い自分にも出会いました。ブログにもその思いを書いたんですけど(参照:【お知らせ】わたしの革命。【超長文】|新津由衣 Official Blog powered by Ameba)、最後の生まれ変わり、最後の革命だと思って、土の中から出てきたんです。
──約1年前のそのブログでは、アーティスト名を本名にすることに込めた思いをつづっていました。そのときには覚悟が固まっていた?
ほぼ固まってましたね。それからも日々気付くことはたくさんあって、まだ発展途上ですけど、弱い自分を世間に見せる覚悟をしたかな、あのときに。本名には、今までの自分のすべてを、何も否定することも恥じることもなく引き受ける覚悟が詰まってます。弱さも傷も、世間の色眼鏡も、全部飲み込んでやるって腹をくくったのが、あのタイミングでした。
CHRYSANTHEMUM BRIDGEとの出会い
──その境地に至るまでを詳しく聞かせてください。
今作の私にとって最大のチャレンジは、人と一緒に作ることでした。プロデューサーのCHRYSANTHEMUM BRIDGEとの出会いは3年前にさかのぼるんですけど、当時私はNeat's名義でソロ活動をDIYでやってたんです。2014年に3枚目のアルバム「MOA」を出したあたりで、自分の根底にあったものに出会えたような感覚があって。私の表現に絶対に欠かせない、子供のときの自分ですね。そのことで1つの完成形を見てしまって、制作スランプに陥ったんです。焦って2カ月で100曲ぐらい作っては、「MOA」のクオリティを超えられないと思って全部パソコンのゴミ箱に入れて、途方に暮れていました。そんなときに偶然、FacebookでCHRYSANTHEMUM BRIDGEの保本真吾さんからメッセージが来たんです。「プロデューサーをしています。一緒に作りませんか?」って。ウソだと思いますよね(笑)。ファンの方かなと思って、「今度ライブがあります。チケットはこちら」って返信したら、購入してくださって。
──保本さんの本気ぶりが伺えますね。
それでお話ししたんですけど、一度は断ったんです。人と一緒にやることで、自分が作り上げてきた大切なものを崩されちゃうのが怖くって。でも帰り道に「いや、待てよ」と。保本さんの作品もよくよく聴いて、これは面白いかもなと思ったんです。オーケストラの音をバンドサウンドと混ぜた音作りは私もしたかったんですけど、技術が追いつかなくて全然できなかったものだから、そこが糸口になるような気がして。あとから「ごめんなさい、間違えました。もう一度お話ししたいです」ってメールをして、ゴミ箱から20曲ぐらい吸い上げてお渡ししました。そこから2曲、「まずこれを形にしてみましょう。ならなかったらならなかったで」と。
──どの2曲ですか?
「ホップチューン」と「FLAG」です。「ホップチューン」は、自分が酔っ払って化け物になったと妄想をして、その化け物がパレードしてるイメージで作ったんです。それを説明していない段階で保本さんが「パレードみたいで面白い」と言ってくれて。
──伝わったんですね。
「弾き語りなのに、なんでパレードってわかったの?」って思いました。「実は化け物のパレードなんです」と言ったら、「じゃあティム・バートンの映画のサウンドトラックみたいな世界観や、Jellyfishのイメージも近いかもね」って具体的なワードをくれて、「つながった!」ってすごく手応えを感じました。
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自分を完全に手放したら無敵になれた
- 新津由衣「Neat's ワンダープラネット」
- 2018年7月11日 / SLIDE SUNSET
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[CD]
3024円 / SSSA-1001
- 収録曲
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- Overture
- FLAG
- ワンダープラネット
- 愛のレクイエム
- Bye-Bye-Bee-By-Boo
- Unite
- フローズン・ネバーランド
- スイム・イン・ザ・ワンダー
- 月世界レター
- ホップチューン
- BIG BANG!
- 新津由衣LIVE
「Ethereal Pop 2018~ワンダープラネット~」 -
2018年10月28日(日)東京都 UNIT
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チケット受付
- 新津由衣(ニイツユイ)
- 1985年8月生まれのシンガーソングライター。2003年、高校生でシンガーソングライターユニットRYTHEMとしてメジャーデビューする。8年間活動を続け、2011年2月に解散。同年より作詞作曲編曲、アートワークや販売までも自ら手がけるソロプロジェクトNeat'sを始動させる。CDリリースはもちろん、世界初の野外ワイヤレスヘッドフォンライブなど一風変わったライブなどで話題を集めた。2015年、SEKAI NO OWARI、ゆずなどを手掛ける音楽プロデューサーチーム・CHRYSANTHEMUM BRIDGEとタッグを組み、作品制作を開始。2018年7月に本名名義・新津由衣でアルバム「Neat's ワンダープラネット」をリリースした。