ナタリー PowerPush - Liaroid Cinema

バンドの新たなページを開く力作「inletPAGE」

僕らの曲作りは映画の効果音を作ることに近い

──今回のアルバムを聴いて思ったんですが、すごく言葉を大事にしてる印象が強くて。エモやラウド系のバンドってどちらかというと、サウンドをより重視してるバンドが多いかと思いますが、Liaroid Cinemaの場合はサウンドと同時に歌詞が耳に入ってきて、言葉の1つひとつが耳に残るんです。そのへんは何かこだわりがあるんですか?

僕は中学、高校の頃にヒップホップをやってた時代があるんですけど、最終的にはロックにリアリティを感じて、歌詞の風景が見えてくるようなサウンドを目指しつつ、言葉の意味を強くしていこうと考えたんです。しかも感情によりダイレクトに響くように。例えば「痛い」っていう言葉にタイトで刺すような音をかぶせたり。僕らの曲作りは映画の効果音を作ることに近い気がします。

──作詞は曲ができてから取りかかるんですか? それとも先に歌詞を書くんですか?

インタビュー風景

歌詞が先です。歌詞を書いてからメロディを考えて、歌詞とメロディがしっかりひとつになったところで曲のアレンジを決めていくんです。

──じゃあ歌詞が軸になって、そこから音の世界が広がっていく?

はい。映画の場合ってまず脚本から書きますよね。Liaroid Cinemaの曲作りもそれと一緒だと思ってます。

──脚本となる歌詞ができたあと、アレンジはどうやって決めていくんですか?

僕は自分がイメージしていることをほかのメンバーに伝えず、まず僕の歌を聴いてもらって、そこで思いついたフレーズを弾いてもらって。そのフレーズが自分のイメージからかけ離れているときは、僕がそのフレーズをコピーして帰って、家でそれを軸に練り直すんです。

──自分のイメージからかけ離れていても、「それは違うよ」とは言わないですか?

言うこともありますよ。僕が曲の主人公の代弁者として「この場面はこういう景色で、これからストーリーがこう展開していくんだよ」と説明してから弾いてもらうこともあるし。だから、映画のサウンドトラックを作ってる感覚に近いんじゃないかな。

監督と脚本家と演者が自分の中でケンカする

──今までのお話を聞いて、矢田貝さんの立ち位置って映画監督に近いのかなという気がしました。

そうですね、このアルバムは僕が監督を務めた映画みたいなものです。自分でも「これは音楽なのか?」って思うときもあるくらいですし。

──でも、その映画の中ではフロントマンの矢田貝さんが主人公でもあるわけですよね。自分の中では監督としての自分と、主演としての自分をどう切り分けているんでしょうか?

その2人はしょっちゅうケンカをしますよ(笑)。そこに脚本家の自分も入ってきて、3人で言い争いになってますね。監督としてはライブまで全て含めて演出を考えているけど、脚本家は言葉の力だけでなんとかなるって信じてる部分があって。そして演者としてはもっと気持ちよく歌いたいから、言葉尻を変えたいとか言い出す。それを見て、脚本家は「マジかよ!」と言いながら脚本を変える羽目になって……常に自分の中で、そういうやり取りの繰り返しです(笑)。きっとこれから先も、このスタンスは変わらないんだろうなと思いますよ。

ライブを観に来ることは音楽を「再生」する作業

──このアルバムを引っさげた全国ツアーも控えています。Liaroid Cinemaのライブパフォーマンスは非常にアグレッシブだと聞いていますが。

僕はお客さんがライブを観に来ることって、イコール音楽を「再生」する作業だと思っていて。一度ライブでその曲を殺してしまわないと、次からまたその曲を再生できない気がするんです。その「死」の部分を念頭に置くことで、よりパフォーマンスが激しくなってるのもあります。

──ライブのたびにリセットを繰り返して、新しいものを生み続けていると?

新しい何かが生まれることもあるし、自分たちがより洗練されていくこともある。作業的にはとても難しいことだと思ってます。

──「再生」って言葉は英語で表現すると「Replay」になると思うんですけど、Liaroid Cinemaの場合は「Rebirth」を指しているのかなという気がしました。

Replayだとただ同じことを繰り返してるイメージがありますよね。そういう意味では、毎回違うほうがいいかなって。まあ実際は、かなり身を削ってますけどね(笑)。

インタビュー風景

Liaroid Cinema「Full-Tenn」Music Video

ニューアルバム「inletPAGE」 / 2012年5月9日発売 / 2400円(税込) / FABTONE RECORDS / FABC-112

  • Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. inletPAGE
  2. Yellow
  3. TenderLOVE, TenderSEX
  4. Full-Tenn
  5. MySpaceFantasy
  6. Not Mirage
  7. chase my letter
  8. Tube Trail
  9. Child-hood
  10. Over the Wind
  11. BlueColoredRain
  12. SONGoftheBITCH
SHBUYA-La.mama 30th Anniversary [relation]×dry as dust 10th Anniversary [Dramatic Rally]
  • 2012年5月18日(金)東京都 渋谷La.mama
[inletPAGE] release Tour
  • 2012年6月1日(金)宮城県 仙台MACANA
  • 2012年6月2日(土)栃木県 宇都宮HELLO DOLLY
  • 2012年6月3日(日)愛知県 「SAKAE SP-RING」
  • 2012年6月10日(日)三重県 三重M'AXA
  • 2012年6月16日(土)東京都 下北沢SHELTER (Tokyo 1st One Man Show)
  • 2012年6月17日(日)群馬県 高崎SUNBURST
  • 2012年6月22日(金)岡山県 岡山CRAZYMAMA 2nd Room
  • 2012年6月23日(土)福岡県 福岡graf
  • 2012年7月1日(日)新潟県 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
[inletPAGE] release TOUR FINAL One Man Show
  • 2012年7月7日(日)大阪府 Live House Pangea
Liaroid Cinema(らいあろいどしねま)

矢田貝年朗(Vo)、米田亮真(G)、延松和哉(G)、荻田祐希(B)、杉本昂(Dr)からなる大阪出身の5人組ロックバンド。2008年9月に矢田貝を中心に結成され、地元を中心にライブ活動を行っていく。2009年に初の音源「a Cinematic Factory」をリリース。翌2010年には1stアルバム「YouMeHerHim」を発表し、エモーショナルな楽曲と予測不能な圧倒的ライブパフォーマンスで注目を集めていく。2012年5月には現編成で初となるアルバム「inletPAGE」をリリース。