LAID BACK OCEAN|突拍子もないバンドがベストアルバムで示す、筋を通した10年間

LAID BACK OCEANの結成10周年を記念したベストアルバム「色+色」(イロトイロ)が2月3日にリリースされた。

アルバムはバンドの熱量を表すような楽曲で構成された「赤盤」、バンドの真骨頂でもあるピアノを軸とする楽曲で構成された「青盤」の2枚組。現在入手することのできないレア音源や、既発曲を現メンバーで録り直した最新音源、新曲「COLOR COLOR」を含む全30曲が収録される。

音楽ナタリーではYAFUMI(Vo)にインタビューを実施。YAFUMIは、2008年に解散したゼリ→を2019年に自身のソロプロジェクトとして期間限定で活動再開させ、現在はLAID BACK OCEANと二足の草鞋を履いている。そんな彼に2組の活動を両立している心境や、LAID BACK OCEANの10年の歴史、「色+色」の制作エピソードについてじっくり語ってもらった。

取材・文 / ヤコウリュウジ 撮影 / NORBERTO RUBEN

残ったメンバーで何かを始めたかった

──LAID BACK OCEANが音楽ナタリーの特集に登場するのは初ということもあり、まずはバンドの歴史について聞かせてください。メンバー構成だけを考えれば、2008年11月にゼリ→が解散してから少し経って、ゼリ→のYAFUMI(Vo)さん、KAZUKI(G)さん、YUTARO(B)さんという3人に、新しいメンバーを加えた形でスタートしたのがLAID BACK OCEANですよね。

ゼリ→には解散せざるを得ない事件が起こったけど、それでも残った3人で何かを始めたいという意思があって。意識を切り替えてまたバンドをやりたかった。それがLAID BACK OCEANのスタートでした。

──当初からピアノをフィーチャーしたロックをやることも決めていたんですか?

その当時はピアノロックバンドがまだあまりいなかったし、新しい挑戦として、伴奏じゃなくリフを弾くピアニストを入れたバンドがやってみたかったんです。ピアノにこだわって始めたからか、歴史を振り返れば何年かごとにピアニストが代わっていって、そのたびに「もう、ピアニストがいなくてもいいんじゃねえか」みたいになったけど、やっぱりピアノにはこだわりたくて。

──2011年発売の1stミニアルバム「夢の修理屋」に収録された「カップラーメンジェネレーション」が、LAID BACK OCEANが初めて発表した曲でしたが、張り詰めたテンション感があって、新しくバンドを始める覚悟が全面に出ていたように感じました。

そうですね。この曲ができたから、ちゃんとバンドとして始められたという感覚がありました。

──そこから数年はマスを意識したというか、ピアノロックを多くの人に届ける、響かせることを念頭に置いた活動を展開していた印象があります。今回リリースされるベストアルバム「色+色」に収録されている曲だと「wataridori」「サーチライト」「心の箱」あたりなど。

それはホントにそうで、活動の質を変えたかったんです。当時所属していたマネージメント事務所が、わりと大きなタイアップとかテレビ出演を狙えるところで。だから服装1つにしても、そういうことを意識してました。

音楽人生において一番大きな出来事

──順調な活動に見えましたが、その後メンバーが脱退し、活動休止されましたよね。

YUTAROが辞めたのは大きかったですね。ひょっとしたら、今までの音楽人生において一番大きな出来事だったのかも。活動をしていく中で、あからさまにYUTAROのテンションが下がっていくのがわかったし。

──ただ、その後もバンドとしては前へ進まれていましたよね。

はい。事務所を移籍して2年ぐらい経ったタイミングでメジャーデビューが決まったんです。ライブでもそのことを発表して、みんなで盛り上がって。ただ、そのあとメジャーデビューの話がグダって、なくなったんです。あれ、どういうことだったのかいまだによくわかってないんですけど……大人の世界は怖いということですかね(笑)。

──ハハハハ(笑)。でも、そのメジャーデビューが頓挫してから、LAID BACK OCEANはCDを氷漬けにして発売したり、音がない世界を表現したミュージックビデオを制作したりと、単純に新曲を発表するのではなく、そのパッケージの仕方や届ける方法にまでこだわる企画「RE:SOUZOU PROJECT」をスタートさせました(参照:「RE:SOUZOU PROJECT」)。

YAFUMI(Vo)

メジャーデビューがなくなったことや「RE:SOUZOU PROJECT」はバンドのターニングポイントになったと思います。ゼリ→もそうだったけど、音楽を始めたきっかけが「美しいメロディに感動した」「心に響く美しい歌詞を書きたい」とかじゃなくて、「こんなモノがあっていいんだ!?」という気持ちだったんです。ゼリ→が解散して、まったく違うバンドとして自分の歌詞の世界観を掘り下げていくことにフォーカスしてLAID BACK OCEANを始めたんだけど、メジャーデビューがなくなって、外的要因に振り回されるのはくだらねえなと思ったんですよね。そんなとき、メジャーで発表するつもりだった作品をそのままインディーズで出そうと事務所に言われたけど、即答で「いや、それはないでしょ」と答えて。CDという概念に収まらない表現を追求させてほしいと話して、「RE:SOUZOU PROJECT」を始めたんです。

──「RE:SOUZOU PROJECT」を始めたことによって、音楽性にも変化が起きましたか?

起きましたね。ずっと複雑なアレンジをしてきたバンドなんですけど、楽曲先行じゃなくて、「こういうことやりたいからそれに沿う楽曲を作る」とか、そういうことをやるようになった。例えば「CDを氷漬けにしてみんなの元へ届けたい、そのためにはどういう楽曲がふさわしいのか」と考えたり。

──LAID BACK OCEANは普通のロックバンドでは選ばない、一般的なバンドの枠組みを越えた企画や活動も展開していますよね。そういったことを踏まえると、バンドを10年やってきたという感覚とはまた違うモノがあるような気もします。

それは言い得て妙というか。ある時期から、ロックバンドをやってるという感覚はないですね。むしろ、そういう垣根をなくしたいと思ってるのかも……。

──バンドとしての在り方を模索している?

そうですね。常日頃から「ロックバンドとはなんなのか?」とすごく考えるし、このコロナ禍においてどういった役割を担えばいいのか、ずっと自問自答してましたから。今って、こっちが正しくてあっちが悪いみたいな二極化された時代ではないと思うんです。でも、ロックバンドは二極化されたメッセージを得意とするものだから、伝え方をバージョンアップしていかないと面白くなくなる。従来のやり方じゃメッセージなんて伝わるわけがない、というところまできてるんじゃないかと感じるし。