小松未可子×Q-MHz|成長するシンガーと異能クリエイター集団の蜜月

泣いてデトックス

──7曲目「Happy taleはランチの後で」は2月末からのツアーで会場限定シングルとして先行販売されました。ホーンやバンジョーが入っていて、スカの軽快さも取り入れられています。

田淵 これも「Blooming Maps」からの延長線上にある曲ですね。軽快なポップが合うという発見から、さらにライブもバージョンアップできるような曲をと考えて。アルバムの中ではド正統派ラインと言うか、シンプルにしっかりといい曲を目指して作りました。歌詞は簡単に言うと「いつでも気楽にやり直そう」、テイクイットイージー的な内容なんだけれど、そのまま素直に書いて普通の“いい歌詞”みたいになるよりは、散文的な書き方のほうがいいんじゃないかと。

小松 歌詞には日々の中で起こりがちなちょっとしたつまずきが描かれていますが、少し言い方を変えてこのテンションでポップに歌うと、人生がガラッと楽しくなっちゃうような空気が出ますよね。

 そうですね。「違う発想からのハッピーエンドもありだよ」という。それがこの曲のテーマです。

──「Pains」は明るい曲調が多いアルバムの中にあって唯一ウエットな楽曲ですね。

畑亜貴(Q-MHz)

 いやあ、やっぱりアルバム1枚のうち1回はみかこしに泣かされたいんですよ。

小松 あはははは(笑)。この曲も私から「こういう曲が歌いたい」とリクエストさせていただいたのですが、私はときどき、とにかくただ切なくなりたいときがあるんです(笑)。それはデトックスに近いと思うんですけれど、泣いてスッキリする感じでしょうか。

 いろいろ経験してきた女性としての心の痛み、それを乗り越えていく力強さが歌詞では描きたかったんです。ただつらく傷付いたところに感情移入して泣くのではなく「ああ、いい涙を流した」と感じられる泣きが欲しかったんですね。

──その感傷的な気持ちに至るプロセスが、ものすごく丁寧なアレンジで誘導される曲だなと感じました。

黒須 そこまで細かく考えてアレンジしたわけではないですけれど、そう感じる理由があるとすれば……全体にあまり重くしすぎていないからだと思います。シンプルがゆえに、1つひとつにフォーカスが当たるような感じになっているのかな。

──確かに、ストリングスで盛り上げたり、ことさらドラマチックに泣かせにかかるような展開はないですよね。

黒須 そうですね。楽器を重ねて盛り上げるみたいな展開はあえて避けました。

トラウマを生んだ「M/MASTER」

──「M/MASTER」は2月のトークイベント「こまQ」で出たアイデアから、小松さんとQ-MHzの皆さんがそれぞれ普段演奏しない楽器にチャレンジするという試みが行われています。

田淵 曲作り自体は実は1年前からスタートしているんですよ。「畑さんが先に歌詞を書いてみるのはどうでしょう」と。

 歌詞を3つ書いて、みかこしに「どのタイプのみかこしで行きたい?」って選んでもらいました。3タイプ違うものを書いて、これは「おまぬけみかこし」だったんです(笑)。

小松 あとは「シリアスみかこし」と……?

田淵 (制作メモを確認して)「ドSみかこし」(笑)。

 ドSみかこしも聴きたかったんですけどね(笑)。

田淵 そのあと「こまQ」で小松さんから「みんなでバンドがやりたい」という意見が出たので、「じゃああの曲をみんなで演奏しよう」と。

 そのときはみんなでワイワイ学芸会みたいな気持ちでいたんだけど、レコーディングに入ったらなかなか大変で……。

田淵 僕と畑さんはトラウマを抱えましたね。

田代 「パートチェンジしたい」って話も「こまQ」で出たんだっけ。誰がどの楽器を担当するかは、会議でそれぞれ出し合って決めたんですよ。畑さんは自分で「私、リコーダー」って立候補したのに、それでそんなに文句を言われても……。

 意外と難しかったんですよ。素人でも演奏できるアレンジにするって言ってたのに、譜面を見たら栗コーダーカルテットもびっくりみたいな(笑)。

──小松さんのドラムのレコーディングは少し見学させてもらいましたけど、田代さんが小松さんの音楽的センスをすごく信頼しているのだなと感じました。

  • レコーディングの様子。
  • レコーディング中の小松未可子。
  • レコーディング中の小松未可子。

田代 マリンバをやっていた人だから、スティック周りは心配していなかったので。簡単なインストラクション映像だけ見てもらっただけでだいたいできていたから、さすがだなと。

さらに結束力の強い作品を

──「おねがいフューチャー」からの流れがまたライブ的で、ここから終盤戦で一気に畳みかけるような勢いを感じます。

田淵 これもけっこう制作の最後のほうで思い付いた曲で、やり散らかすような、アルバムに刺激を与える1曲をと思って作ったんです。ラップあり、掛け声もありみたいな。歌詞もそのままの勢いで書いて、畑さんに「ご参考までに」と渡しました。

 倫理的に問題のあるところは書き換えました(笑)。

田淵 勢いで作りながらも「おっ、この流れでいくと『Swing heart direction』にうまくつながるな」とは思っていました。

──そうですね。既発のシングル「Swing heart direction」がここでいい流れで出てきます。この矢継ぎ早な展開も心地いいし、最後の「Romantic noise」で見事に着地する感じがありますね。

小松未可子

小松 「Romantic noise」が最初に取りかかった曲なのですが、最終的に締めくくりの1曲になりました。

田淵 この曲は「Maybe the next waltz」と同時期に作ってたんですよ、実は。シングルの候補曲として作っていた中の1つが元になっています。

 シングルとしては最終的に「Maybe the next waltz」のほうを選んだけれど、みかこしに向けて書いた曲なので、アルバムの中の曲として改めて作り直したんです。

田淵 Bメロはその段階で作っていたまま残ってるんですよ。僕たちもすごく気に入っていたので、なんとかアルバムの中で効果的な1曲にしたいと思って、改めて磨きをかけていきました。

──こうして2枚のアルバムが完成したことで、また新たな小松さんのポテンシャルも見えてきたのではないでしょうか。

 はい。次に向かっての種がありますね。1つ完成すると、次のことを考えちゃいますね。

──それは小松さんの中にもありますか?

小松 「今作ではこれができたから、次はこういうことがやりたいな」という気持ちはあります。それこそ先ほど話に上がった“ドSみかこし”を選んでいたらどうなっていたのかな、という別の可能性もありますし(笑)。レコーディングはいつも同じ空間で、同じ姿勢で歌ってますが、「海辺で逢いましょう」でイメージしたように、実際にちょっと座って歌ってみたりしたらどうなるかな、とか。それから、今回は実現できませんでしたが、Q-MHzの皆さんとリレーで歌詞を書いてみたいです。それはぜひ挑戦したい。Q-MHzの皆さんと一緒にいる時間が長くなるにつれ、皆さんの人となりがさらにわかって、チームワーク、ファミリー感が生まれたので、より結束力の強い作品がまた作れたらいいなあと思っています。

小松未可子とQ-MHz。
小松未可子「Personal Terminal」
2018年7月11日発売 / TOY'S FACTORY
小松未可子「Personal Terminal」完全生産限定盤

完全生産限定盤
[CD+Blu-ray+フォトブック]
5940円 / TFCC-86641

Amazon.co.jp

小松未可子「Personal Terminal」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / TFCC-86642

Amazon.co.jp

CD収録曲
  1. Restart signal
  2. Jump Jump Halation!
  3. SPICE MISSION
  4. Maybe the next waltz
  5. 海辺で逢いましょう
  6. カオティック・ラッシュ・ナイト
  7. Happy taleはランチの後で
  8. Pains
  9. M/MASTER
  10. おねがいフューチャー
  11. Swing heart direction
  12. Romantic noise
完全生産限定盤Blu-ray収録内容

小松未可子 TOUR 2017 "Blooming Maps" @ LIQUIDROOM 2017.08.12

  • また、はじまりの地図
  • Imagine day, Imagine life!
  • 流れ星じゃないから
  • Catch me if you JAZZ
  • HEARTRAIL
  • my dress code
  • Lonely Battle Mode

Music Video

  • Maybe the next waltz
  • Swing heart direction
  • Restart signal

小松未可子×Q-MHz ドライブ&BBQの旅

小松未可子×Q-MHz「M/MASTER」レコーディングMV

アルバム「Personal Terminal」リリースツアー 小松未可子TOUR 2018 "Personal Terminal"
  • 2018年9月8日(土) 大阪府 BIGCAT
  • 2018年9月16日(日) 東京都 TSUTAYA O-EAST
  • 2018年9月24日(月・振休) 宮城県 darwin
  • 2018年9月29日(土) 愛知県 ElectricLadyLand
  • 2018年9月30日(日) 静岡県 Live House浜松窓枠
小松未可子「Personal Terminal」リリースイベント
  • 2018年7月15日(日) 東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース START 15:00
  • 2018年7月22日(日) 大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店 7Fイベントスペース START 12:00
  • 2018年7月22日(日) 愛知県 ナディアパーク アトリウム START 17:00
  • 2018年8月5日(日) 東京都 アニメイト新宿 イベントスペース 1回目START 14:00 2回目START 17:00
小松未可子(コマツミカコ)
小松未可子
1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。2010年にアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタート。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義によるアーティストデビューを果たす。2012年、2013年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでの「Animelo Summer Live」に、2014年1月には東京・日本武道館での「リスアニ! LIVE 4 SUNDAY STAGE」に出演するなど、大規模フェスにも数多く招聘される。2016年9月よりTOY'S FACTORYに所属し、同月Q-MHzプロデュースによるシングル「Imagine day, Imagine life!」を発表。2017年5月には引き続きQ-MHzの全面プロデュースで通算3枚目のオリジナルアルバム「Blooming Maps」を発表した。同年8月にはテレビアニメ「ボールルームへようこそ」エンディングテーマの「Maybe the next waltz」、11月には同アニメの2クール目エンディングテーマ「Swing heart direction」をそれぞれシングルでリリース。2018年7月にはQ-MHzとのタッグで2作目となるニューアルバム「Personal Terminal」を発表し、9月に5都市を回るライブツアー「小松未可子TOUR 2018 "Personal Terminal"」を行う。
Q-MHz(キューメガヘルツ)
Q-MHz
畑亜貴、田代智一、黒須克彦、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)からなるプロデュースチーム。J-POP、アニメソング、アイドルソング、ゲーム音楽など幅広い分野で活躍していたクリエイター4人が集結し、2015年12月に活動を開始した。2016年1月には名刺代わりとなるオリジナルアルバム「Q-MHz」を発表。その後は小松未可子の全面プロデュースのほか、2016年夏に開催されたアニメソングイベント「Animelo Summer Live 2016 刻 -TOKI-」のテーマソング制作、May'n、田所あずさ、ささきいさお、バンドじゃないもん!らさまざまなアーティストの作品で手腕を発揮している。