音楽ナタリー Power Push - kōkua

10年の時を経て結実した プロフェッショナル5人の「Progress」

この結果にはかなり傷付いています(笑)

──そして根岸さん作曲の「黒い靴」ですが、この歌詞は破格ですよ。「人は10の幸せと 10の不幸を持って生まれて それが順番に起こる / そこに3つのウソと3つの誠実を加えて それが足のサイズになる」って、よくこんなとんでもないフレーズが浮かびましたね?

スガ 我ながら今回のナンバーワン(笑)。

武部 うん。異議ナシ(笑)。

──「THE LAST」の直後で出がらしかと思っていたら、「あれ? まだ残ってたじゃん!?」みたいな。

スガ ネギちゃんの曲に引っ張られるように書きました。まあ正直ね、それぞれ曲を出し合うと言っても「まあまあ、でもやっぱ俺様の曲が一番だろ?」ぐらいの気持ちだったんですよ(笑)。でも蓋を開けてみたらみんなすげえよくて、このネギちゃんの「黒い靴」に至ってはドラマのタイアップまで決まっちゃって……歌詞はいいのが書けたけど、この結果にはかなり傷付いています(笑)。

──そして「Stars」に対して、邦楽のカバーは岡林信康さんが70年に発表した「私たちの望むものは」です。

武部 これはさっき話したカバー候補の議論を経て、最終的にスガくんの提案にみんなが賛同して決まりました。

スガシカオ(Vo)

スガ ずっと歌ってみたかったんです。でも重たい曲だから、ある意味ソロでやると意味を背負わなきゃならない気がしていたので、今回はいい機会だった。

武部 「Progress」と「夢のゴール」に共通する、今の時代に投げかけるべきメッセージが感じられた。いいチョイスだったと思いますね。

──この曲のアウトロの音響処理がまたすごく効いていて。個人的な感想ですが、普遍的な幸福の追求や、高度経済成長を経た日本人が得たものや失ったもの、ひいてはJ-POPのヒストリーとか、さまざまな背景と情報量がこの数十秒に内包されているように聞こえました。で、この流れからラストの「Progress」のイントロが聞こえたとき、改めて鳥肌が立ちました。

スガ そう感じてもらえたら武部さんの狙い通りですね。

武部 うん、ここはこだわらせてもらいました。

スガ 実は「ちょっとやりすぎかも?」という意見もあったので、普通にフェードアウトするバージョンも作ってみたんだけど、最後は全員「武部さんに任せます」と。俺も含めて白旗じゃないけど、責任を負いきれなくなっちゃって。結果的にこのアルバムの根幹を孕んだ箇所になりましたね。

武部 最近は配信や曲単位の販売のせいで、アルバムをアルバムとして聴いてくれる人が少なくなってしまったじゃないですか。でもせっかくこんなメンバーがそろったんだから、僕としてはどうしてもアルバムであることの強い意味合いと高い作品性を打ち出した作りにしたかった。だから選曲も、曲順も、ものすごくこだわりました。

──なるほど。

武部 それと今回のレコーディングでは今井邦彦くんの存在が大きかった。彼はミスチルや布袋さんの作品を手がけてきた最高峰のエンジニアで、サウンドメイクにおける重要な肝を担ってくれた、kōkuaの6番目のメンバーだったね。

スガ 「Progress」のシングルから録ってくれているので、僕らの個性もよくわかってくれている。言わばkōkuaサウンドのトーンを決めてくれたのは彼でしたね。

kōkuaは僕にとって無敵のバンド

──さて、全曲について語っていただきましたが、改めてアルバムを作り終えた感想をお願いします。

kōkuaレコーディングの様子。

武部 リスナーの皆さんがどう感じるかについては、楽しんでもらえるよう祈るだけです。ただ、これだけは自信を持って言いますけど、今多くの人がやりたいことをやりきれていないJ-POPの世知辛いフィールドにおいて、プロを目指す人や、今プロで音楽をやっているミュージシャンなりアーティストの方々に「あ、こんなことやっていいな、ズルいな」と少なからずうらやましがってもらえることはできたんじゃないかと。実際、そう思われるようにやりきったという自負もあるので。

スガ そうですね。まあ掲げる旗も看板もメッセージもきちんと固まったし、ツアーにも出るし、俺のソロよりもタイアップで使いやすいみたいだし……。

──だいぶ根に持ってますね(笑)。

武部 歌詞も歌も自分なのにね(笑)。

スガ あのねえ、これ、俺にはかなりシリアスな事実なんだよ!?(笑) でもだからこそ、kōkuaは僕にとって無敵のバンド。「次のアルバムはまた10年後かな?」なんてみんなで話していますけど、案外もっと早く次の機会があるかもしれませんね。

1stアルバム「Progress」2016年6月1日発売 / 3240円 / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-64578
「Progress」
収録曲
  1. 夢のゴール
    [作詞・作曲:スガシカオ / 編曲:武部聡志、小倉博和]
  2. 幼虫と抜け殻
    [作詞・作曲:スガシカオ / 編曲:kōkua]
  3. 砂時計
    [作詞・作曲:スガシカオ / 編曲:kōkua]
  4. 1995
    [作詞:スガシカオ / 作曲・編曲:屋敷豪太]
  5. BEATOPIA
    [作曲・編曲:武部聡志]
  6. Blue
    [作詞・作曲:スガシカオ / 編曲:kōkua]
  7. Stars
    [作詞・作曲:ミック・ハックネル / 編曲:kōkua / 日本語詞:スガシカオ]
  8. 道程
    [作詞・作曲・編曲:小倉博和]
  9. kōkua's talk 2
    [作詞:スガシカオ / 作曲・編曲:武部聡志]
  10. 黒い靴
    [作詞:スガシカオ / 作曲・編曲:根岸孝旨]
  11. 私たちの望むものは
    [作詞・作曲:岡林信康 / 編曲:kōkua]
  12. Progress
    [作詞・作曲:スガシカオ / 編曲:武部聡志、小倉博和]
kōkua Tour 2016 「Progress」
2016年6月4日(土)
福岡県 福岡国際会議場メインホール ※公演終了
2016年6月14日(火)
愛知県 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
2016年6月17日(金)
大阪府 NHK大阪ホール
2016年6月24日(金)
東京都 NHKホール
kōkua(コクア)

スガシカオ(Vo)、武部聡志(Key)、小倉博和(G)、根岸孝旨(B)、屋敷豪太(Dr)という日本の音楽シーンの第一線で活躍するアーティストたちによるバンド。2006年にNHKのドキュメンタリー番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」の主題歌「Progress」制作のために結成された。スガのデビュー20周年イヤープロジェクトの一環として2016年に再始動。6月に1stアルバム「Progress」を発表し、同月に初の全国ツアーを開催する。