KING|41歳のRYOが20年間歌い続ける理由

初めてアーティスト写真を撮影

──では、シングル「NEVER END,CRY」について聞かせてください。現在のRYOさんの心境がリアルに反映された楽曲だと思いますが、曲を制作したのはいつ頃ですか?

「NEVER END,CRY」は2年くらい前に作って、ライブで磨き上げてきたんです。この曲をシングルとして選んだのは、自分の意志というよりも、スタッフの皆さんの意見を取り入れた結果なんですよね。曲を聴いてくれる側の気持ちを客観的にジャッジできる方々だから、皆さんの考えを優先させたほうがいいと思ったので。

──確かにメロディもキャッチーだし、初めてKINGの音楽を聴いたリスナーにもアピールできそうですよね。

レコーディングのときも、プロデューサーにしっかりディレクションしていただいたんです。僕はもともとシャウト気味のボーカリストで、すごく吠えてるんですね。「NEVER END,CRY」のデモも叫ぶように歌ってるんですけど、プロデューサーから「イキんだ感じを抑えて、鳥がキレイにさえずるように歌ってください」って言われて。

──メロディを生かすために?

KING

そうですね。最初は大変だったんですよ。僕が好きなボーカリストの方って、みんなハスキーな声なんです。D'ERLANGERのkyoさん、ZI:KILLのTUSKさん、KATZEの中村敦さんとか。僕の地声はキラキラ声だったので(笑)、無理矢理喉を締めてハスキーにしていたところもあって。いきなり「イキるのをやめて」って言われても……という部分もあったんですが、それがすごく新鮮だった。ディレクションしてもらえること自体もひさびさだったし、自分のアンダーグラウンド的な歌い方をメジャーで通用するところまで引き上げてもらったと言うか。今回はKINGのRYOのためにたくさんの方が動いてくれているし、「ライブでは今まで通りのRYO節でいいけど、シングルではもっと広い人たちに届くようにしよう」と言われて、すごく納得できたんです。そういう考え方もロックだし、芯が通ったことを言ってもらえると「なるほど」と思えるので。

──このタイミングで我を通すのは違うと。

はい。初めてアーティスト写真も撮りましたから。今まではライブハウスの楽屋で写真アプリで撮った写真を使ってたんですけど、「そろそろしっかり撮りましょう」と言われて(笑)。

望まれる限り、なんとしても続けていくんだ

──「NEVER END,CRY」はもともと、どんなテーマで制作された楽曲なんですか?

この曲はサポートのMORIくんが作曲してくれたんです。wyseの活動も忙しいのに、僕のライブのサポートをしてくれて、しかも作家として曲も書いてくれて。以前、MORIくんのアコースティックライブを観ていたら「RYOくんは今、1人でがんばってる。僕は彼の光になってあげたい」と言っていて。たぶん本人は何気なく言ったんだと思いますが、自分にとってはすごく印象的だったんです。その出来事も含めて、そのときの自分の気持ちをそのまま書いたのが「NEVER END,CRY」の歌詞ですね。「この叫びは終わらない」という内容なんですが、その気持ちは今もまったく変わってなくて。「望まれる限り、なんとしても続けていくんだ」って。無意味に継続するのは違うけど、努力しながら継続するのは大事なことだと思うんです。

──なるほど。

あとは「夢を持ち続ける」ということですよね。よく「お客さんが1人でも100人でも1万人でも気持ちは同じ」なんて言いますけど、それは違うなと思っていて。僕が望んでいるのは1人よりも10人、10人よりも100人なんです。少しでも上を目指しながら、そのうえで1人ひとりに対して歌うことが大事なんじゃないかなって。そういう自分の人間性を見てもらいたいと思うし、もっと言えば自分自身が武器だと思うんですよね。這いつくばってでも歌い続ける姿を見てもらって、「自分もがんばろう」と気持ちになってくれたらなって。それさえあれば、僕自身は笑われても何をされても、全然恥ずかしくないので。

──カップリング曲についても聞かせてください。2曲目の「FIRE BIRD」はヌケのいいギターサウンドを軸にしたアッパーチューン、3曲目の「beautiful world symphony」は壮大なスケール感を備えたロックナンバーですね。

KING

この2曲は新曲ですね。「FIRE BIRD」は僕が作詞作曲したんですが……41歳までロックシンガーを続ける人って、そこまで多くはないじゃないですか。何回落ちても這い上がってきて、やっとここまでたどり着いて。それを「火の鳥」に例えたのがこの曲なんです。夢に向かって進もうとしている人や、僕と同じくらいの年齢の方に「もう1回やってみよう」と思ってもらえるような曲になったらいいな、と。「beautiful world symphony」の歌詞の中には「握りしめたのは こぼれてゆくのが怖いから 強がっていたんだ」というフレーズがあって、それは、「負けたくない」って力が入っているとどうしても掌を閉じてしまいがちだけど、それを開いてみたら、もっと世界が広がるんだよっていう。その美しい世界の中でみんなが交じり合っているイメージですね。

──どの曲もメッセージ性が明確ですね。

作詞作曲は得意ではないんですが、曲ができるときは頭の中にイメージが浮かぶんですよ。普段はライブばっかりやってるから、なかなか制作のほうに切り替わらないんですけど(笑)。今回はいつも以上に幅広いリスナーに聴いてもらたいと思って作ったシングルだから、いつも以上に曲を研磨したんです。歌詞も何度も書き直しました。

新しいことにワクワクする41歳

──この先のビジョンについてはどう考えていますか?

さっきも言いましたけど、たくさんの人たちが自分のために動いてくれてるし、そこにはちゃんと愛もあって。今まで僕が作ってくれた人間関係も大事にしなくちゃいけないし、身が引き締まる思いです。これまで培ってきたものがあるからこそ先に進めるので。以前は「この人、苦手だな」って人もけっこういたし、僕のことを苦手と思っていた人もいたはずなんですけど、そういうことも全部受け止められる年齢になったんですよね。今まで接点がなかった方とも交差する場面があるだろうし、今はすべてに対して“ありがとう”という気持ちですね。

──なるほど。

こういう取材もそうですけど、初めて体験することも多くて、自分の世界がどんどん広がっているのを感じているんですよ。もちろん地に足は着いてるんですけど、新しいことに対してはバカになって楽しみたいなと思っていて。そういう41歳、ちょっとワクワクするじゃないですか(笑)。

──そうですね(笑)。

KING

自分の身の丈はわかっているんですけど、ファンの人たちは、僕が夢を持ち続けてるからこそ応援してくれてると思うんですよ。「私が応援してる人は、ちょっとのことではあきらめないんだよ」って。具体的に掲げてる目標としては、「ライブハウスで負けない存在になる」ということです。今のKINGの音楽を一番表現できるのは、やっぱりスタンディングの会場だと思うので。あとはサングラスをカッコよくかけられるアーティストになることですかね(笑)。

──最後にお聞きしたいのですが、20年間、何があっても歌い続けられた原動力はなんだと思いますか?

あきらめが悪いからじゃないですかね、やっぱり。僕は昔から飽きっぽい性分なんですけど、歌だけはやめようと思ったことがないので。よっぽどハマってるんだと思うし、ちょっとメルヘンな言い方になりますけど、前世でも歌ってたんじゃないかなって(笑)。ステージに立ってるとき「今、死んでもいいな」って思うことが年に数回あるんですよ。あと、ライブが終わったあとに気持ちがこみ上げてきて、ボロボロ泣いてしまったり。そういう瞬間を味わうと、ずっと歌っていきたいと思うんですよね。

KING「NEVER END,CRY」
2016年5月24日発売 / FREEBIRD RECORD
KING「NEVER END,CRY」

[CD]
1620円 / QAFJ-10001

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収録曲
  1. NEVER END,CRY
  2. FIRE BIRD
  3. beautiful world symphony
KING(キング)
KING
1990年代からヴィジュアル系シーンで活動するボーカリストRYOのソロプロジェクト。2002年に解散したヴィジュアル系バンド・LAIDのフロントマンとして活躍したのち、バンドとしてKINGを結成する。しかしながらメンバーの脱退が相次ぎ、ソロプロジェクトに転向した。年間120~130本という精力的なライブ活動を行い、2017年5月にニューシングル「NEVER END,CRY」をリリースする。