「KCON 2018 JAPAN」特集|K-POPトップアーティストが集結! 評論家 古家正亨が語る“韓国博覧会”の魅力

現在のK-POPサウンドができあがるまで

──昨年は、TWICEや防弾少年団(BTS)が日本でも本格的にブレイクしました。

TWICEやBTSに関しては、もはやK-POPというくくりを離れてグループそのものが評価されていますよね。

──TWICEやBTSもそうですが、EXOやiKON、GOT7、SEVENTEENといった今活躍しているアーティストが、USのヒップホップやR&Bから強く影響を受けたサウンドであるにも関わらず、大ヒットしている理由は何なのでしょうか?

韓国の音楽シーンが、2004年から劇的に変化したからではないでしょうか。

──2004年に何があったんですか?

日本の音楽が韓国で解禁されたんです。今となってはご存知ない方もいるかもしれませんが、韓国では日本文化の流入が法律で禁止されていたんです。それが1998年から段階的に開放されるようになった。2004年は第4次開放の年です。

  • 「KCON 2017 JAPAN×M COUNTDOWN」SEVENTEENのライブの様子。
  • SEVENTEEN

──でも1990年代後半~2000年代前半に活躍したH.O.TやSechs KiesはJ-POP、とりわけジャニーズに強く影響を受けているように思えます。

そうですね。実は韓国の作曲家やプロデューサーたちは水面下でJ-POPを聴いていた。そして、J-POP、それ以前に日本の歌謡曲のテイストを巧みに当時の韓国の音楽に取り込んでいたんです。韓国の一般の人は、それほど日本の音楽に関する情報はありませんでしたから。ただ、2004年に日本の音楽が一般的に解禁されると、韓国の一般層でも、J-POPに似た音楽が、韓国に存在することに気付いてしまうわけです。時々、訴訟沙汰にもなっていましたし。そこで韓国の音楽家たちは、自然と日本からアメリカやヨーロッパの音楽に目を向けるようになっていきました。インターネットが普及し、情報が得やすくなったというのもあると思います。こうして欧米の音楽から受けた影響を、韓国的に調理する現代のK-POPの雛形ができあがったと言えます。

──東方神起が2004年にデビューしたのはある種象徴的ですね。

彼らは韓国の音楽シーンが目指すものが徐々に変わりつつあるタイミングで登場した、まさに象徴的存在と言えると思います。あらゆる意味で革新的でした。近年では、それまでマニアックなイメージが強かったヒップホップが一気に大衆化し、音楽シーンに大きな影響を与えました。偶然ですが、これもMnetの「SHOW ME THE MONEY」「UNPRETTY RAP STAR」といった、ヒップホップを取り上げたバトル番組が大ヒットしたことも関係しています。ヒップホップにバラエティの要素を加えて、視聴者に対してヒップホップというジャンルの音楽の敷居をグッと下げることに成功しました。

韓国におけるテレビの影響力

──ここまでお話を伺っていると、韓国ではテレビの影響力が非常に強いようですね。

それは間違いないと思います。音楽に関して言えば、プロモーションの主戦場はテレビです。いかにテレビに出るか、豪華なミュージックビデオを作って流してもらうか。そこは2000年代前半からあまり変わってない。さらに韓国の音楽シーンはアイドルが中心。インディーズが音楽シーンで大衆化したのは、ここ数年の間になんですね。

  • 「KCON 2017 JAPAN×M COUNTDOWN」GFRIENDのライブの様子。
  • GFRIEND

──インディーズと言えば、HYUKOH(혁오)が日本でも人気です。

ここ4、5年でかなり変わってきたと思います。最近ですと、赤いほっぺの思春期(볼빨간 사춘기)の人気がすごいです。平昌冬季オリンピックの開会式でジョン・レノンの「Imagine」を歌っていたアン・ジヨンが所属してる2人組です。彼女たちは今でもインディーズですが、韓国音楽コンテンツ協会が発表した昨年のデジタル総合ランキング累積集計で、4位のエド・シーラン「Shape of You」に続いて、年間5位に彼女たちの「好きだと言って」がランク入りするなど、国民的な人気を得るグループとして知られています。2月28日にZepp Tokyoでショーケースライブを行い、日本にも上陸を果たしました。

──なぜインディーズのアーティストたちにも注目が集まるようになったんですか?

K-POP自体がコンテンツとして世界的に認められたことで、韓国の音楽文化の多様性を見せる機会が増えてきたからだと思います。あとはオーディション番組の人気が高く、かつてはライブハウスで地道に人気を開拓してきた手法が、テレビを通じて一瞬のうちに注目を集めるようになってきた時代の流れも影響していると思います。それでもいまだにテレビには映らない場所で、数多くの実力派ソロシンガーやバンドが、音楽シーンをしっかり支えています。

──テレビと言えば、昨年男性グループを選抜するサバイバル番組「PRODUCE 101 シーズン2」がヒットしました。

古家正亨

「PRODUCE 101 シーズン2」は、Wanna Oneというグループを生み出して社会的影響力を持ちました。派生グループまで誕生しましたし。「PRODUCE 101」は日本の「一緒に育成していくアイドル」の方法論を韓国的に実践したものです。この番組がきっかけになって、最近は、テレビ番組が主導し人気を獲得する、短期集中型のアイドルが主流になってきています。韓国の特徴として、1つのものがブームになると、世の中がそれ一色に染まってしまう傾向がありますが、今はテレビに出られないと、なかなかヒットに結び付きにくい状況になっています。個人的には、この流れに対する一抹の不安もあるんです。

──どういうことでしょうか?

そもそも韓国のアイドルのいいところは、練習生として事務所がアイドルの卵達をしっかりと育成して、完璧なパフォーマンスを見せるところにまでレベルを持っていき、そこから生み出されるパフォーマンスだったはず。ただ、今はそういったアイドルたちが音楽市場をなかなか牽引できない状況にあります。

──なぜですか?

長い期間をかけて育成するということは、それだけ費用がかかるということ。Wanna OneやI.O.Iのような期間限定の活動だと、投資を回収するのは物理的に難しいでしょう。つまり投資に対する長期的な視点での活動が保証されないと、芸能事務所は短期集中型のアイドルを積極的に輩出するのは難しくなってきます。今は日本的な育成型アイドルが、テレビ局とタッグを組むことで注目されていますが、僕は何事もバランスが大切だと思っています。Wanna Oneのようなアイドルもいるけど、これまでのような完成型アイドルもいる。そのような多様性がなければ、K-POPはいつか飽きられてしまう。個人的には、今後そのあたりがどうなっていくのか注目していますね。

「KCON 2018 JAPAN」

2018年4月13日(金)千葉県 幕張メッセ国際展示場 2~3ホール

「M COUNTDOWN」出演者

CHUNG HA / gugudan / MOMOLAND / PENTAGON / RAINZ / Samuel / Wanna One / WJSN

2018年4月14日(土)千葉県 幕張メッセ国際展示場 2~3ホール

「M COUNTDOWN」出演者

BLK / fromis_9 / GFRIEND / IMFACT / SEVENTEEN / Sik-K / Stray kids / TRCNG / WOOYOUNG(From 2PM)

2018年4月15日(日)千葉県 幕張メッセ国際展示場 2~3ホール

「M COUNTDOWN」出演者

Golden Child / Heize with Davii / IN2IT / MONSTA X / N.Flying / SF9 / SUNMI / THE BOYZ / TWICE

※アーティスト名はアルファベット順

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古家正亨(フルヤマサユキ)
古家正亨
1974年5月22日生。北海道北見市出身。ラジオDJ、テレビVJ、司会業、韓国大衆文化ジャーナリスト。上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。2000年にFM NORTHWAVEで日本初のK-POP専門番組「Beats-Of-Korea」を立ち上げる。2004年にはMTV KoreaでスタートしたJ-POP番組「J-BEAT」で日本人として初めてテレビVJに採用された。2009年には日本におけるK-POPの普及に貢献したとして、韓国政府褒章文化体育観光部長官褒章を受賞。年間200本近い、韓流、K-POPイベントのMCも務める。