「やっておけばよかった」を減らしたい
──お話を聞くと、壁にぶつかっては乗り越えながら変化してきた20年ですが、特に大きな転機を挙げるとしたらいつでしょう?
40歳のときだから、アルバムだと「Teardrop」(2011年)を出したタイミングです。LUNA SEAが2010年に“REBOOT”してワールドツアーを開催して、LUNA SEAの音楽はやっぱりすげえなと思いながら「Teardrop」を作ったら、そのあと東日本大震災があって。時間の流れはコントロールできないし、なんと言うか……完全な敗北感を味わいました。自分ではどうにもならないこと、自分では動かせないものがあるという現実を知ると同時に、今を本当に生きよう、命を燃やそうとも思いました。そう思えたらマイナスだけじゃなくて、プラスもいっぱいあった。今のソロのバンドメンバーと2012年の夏にヨーロッパツアーに行ったとき、メンバー+スタッフ1名の少人数でハプニングの連続だったけど、本当に楽しくて、思い出すと今でも笑顔になります。そういう日を1日1日重ねていきたいなって。あとは……。
──なんでしょう?
「やっとけばよかった」を減らしたいなと思いましたね。それで、ガキの頃に別れたままずっと会っていなかった自分の生みの母親に会いに行ったりして。人生、何があるかわかんないでしょ? だから「ああ、やっとけばよかった」っていうのは嫌だなって。もちろん全部はできないけどね。だから、俺が死んだときに「この曲を葬式でかけて」と言える曲を1曲ずつ作っていきたいと思ってるんです。それを更新していきたい。今で言ったら今回のベストに収録した新曲「Shine for me tonight」がそうだし、その前で言ったらアルバム「Thank you」に収録されている「Wherever I go」がそうでしたね。
──今回のセルフカバーベストアルバム「INTENSE / MELLOW」の収録曲はそういう楽曲を選んだんですか?
そうではないです。実際、アルバム「Thank you」からはさっき言った「Wherever I go」ではなく、タイトル曲が選ばれていますし。例えばアルバム「Fragment」から「Spirit」という曲を選んだのは3月4日だったんですが、3月3日までは違う曲を入れる予定だったんですよ。で、収録曲を決めようっていうタイミングで「Spirit」がいいなって思っただけで。だからどの曲を選んだかというより、今まで出した11枚のアルバムから1曲ずつ選んだということのほうに意味があって。今回のベストには今までに出したアルバム1枚1枚への感謝の気持ちが込められているんです。各アルバムから1曲ずつ入れれば、すべてのアルバムに「ありがとう」を言えるので。
──INORANさんらしいなあ。
あと、今回のベストはアレンジに注目してほしいです。オリジナルとは全然違うものになっています。オリジナルを聴いてきたファンにはいろいろ言われそうだけど、言われないぐらいぶっ壊しちゃってます。「別の曲にしておいたぜ」ってくらい(笑)。9月の20周年ソロツアーでこれをプレイしたいっていうライブありきのアレンジにしていて。今回のツアーはド頭からフルスロットルで行きたいんです。もう今から楽しみすぎて……バンドのメンバーからもそういうLINEとか来るんですよ。「(楽しみで)やべーっす!!」みたいな。プレイヤーがそういう気持ちであふれているのは理想的な状態だと思うので、このツアーは絶対に観てほしいですね。
次の「辞めたい」周期はもう来ないと思う
──では、最後にソロ20年の集大成となる今回の「INTENSE / MELLOW」はINORANさんにとってどんな意味を持つ作品になりましたか?
先日、テレビでアイヌ民族にまつわるドキュメンタリーを観ていたら、「過去と未来が一致する」っていう言葉と出会って、とっても素敵な言葉だと思ったんですけど、このアルバムはまさに過去と未来が一致する、そんな作品だなあと思っていて。決して過去を否定はしてないし、さっきも言ったように11枚のソロアルバム1枚1枚に感謝しているけど、未来に対してワクワクしたもの、輝きとかをすごく期待しちゃうと言うか、俺、もっともっと走れるという気持ちを抱いていて。
──ええ。
インタビューの冒頭に12月31日に何をしているかわからない、つまり未来なんてどうなるかわからないって言ってたでしょ? 明るく感じるんですよ、未来が。なんだかすごくワクワクしちゃうんです。震災以降、このアルバムを作る前は、「大事なのは今じゃん、今やれることをやろうよ、未来なんてわかんないよ」って言って“今”にエネルギーを注入していたけど、最近は“今”にエネルギーを注入しながら未来も見られるような。だからと言って具体的に何をしたいってことはないし、未来がどうなるかわかんないっていう気持ちはやっぱり拭えないんです。だけどいろんな壁を乗り越えて、いろんなことを捧げてLUNA SEAを28年、ソロを20年やってきた中で音楽人としてまだやることもやらなきゃいけないこともいっぱいあるなと思っていて。音楽を辞めたいモードが10年周期で来るとさっき言ったけど、それで言うと48歳、つまりあと2年ぐらいで辞めたい周期がまた来るはずなんですよ。でも次はそれが来ないだろうなって思えるんです。まだまだ音楽をやって行くだろうなって。このアルバムは俺にそう思わせてくれるんです。それは自分にだけ当てはまることではなくて、「お前、がんばれよ!」ってメッセージが伝わるアルバムだと思っています。
- INORAN「INTENSE / MELLOW」
- 2017年8月23日発売 / KING RECORDS
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初回限定盤
[2CD+DVD+52P写真集スペシャルパッケージ仕様]
9800円 / KICS-93516~7 -
通常盤 [2CD]
3500円 / KICS-3516~7
- INTENSE SIDE 収録曲
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- Ride the Rhythm(新曲)
- Spirit
- 千年花
- Daylight
- Determine
- raize
- MELLOW SIDE 収録曲
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- Shine for me tonight(新曲)
- Your Light Is Blinding
- no options
- Sakura
- Beautiful Now
- 人魚
- Thank you
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 「Ride the Rhythm」「Shine for me tonight」Music Video
ライブ情報
- 「SOLO 20TH ANNIVERSARY TOUR 2017 - INTENSE / MELLOW -」
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- 2017年9月1日(金)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2017年9月2日(土)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2017年9月7日(木)広島県 SECOND CRUTCH
- 2017年9月8日(金)福岡県 DRUM Be-1
- 2017年9月10日(日)熊本県 熊本B.9 V1
- 2017年9月12日(火)香川県 DIME
- 2017年9月14日(木)京都府 磔磔
- 2017年9月16日(土)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2017年9月18日(月・祝)愛知県 ElectricLadyLand
- 2017年9月21日(木)北海道 cube garden
- 2017年9月23日(土・祝)岩手県 CLUB CHANGE WAVE
- 2017年9月24日(日)宮城県 darwin
- 「B-DAY LIVE CODE929/2017」
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- 2017年9月29日(金)東京都 新木場STUDIO COAST
- INORAN(イノラン)
- 1970年生まれ、神奈川県出身のギタリスト / シンガー。5人組ロックバンドLUNA SEAのギタリストとして、1991年にメジャーデビュー。同バンドの活動と並行して、1997年にはソロアルバム「想」をリリースする。2000年のLUNA SEA終幕後からは本格的にソロ活動をスタートさせ、2002年にはロックユニット・FAKE?を、2005年にはRYUICHI(河村隆一)らとロックバンド・Tourbillonを結成。ソロ活動のほか、2010年に“REBOOT”と称して再始動したLUNA SEA、2012年にFEEDERのタカ・ヒロセ、8ottoのMAESON、FEEDERのサポートギタリストとしても活躍するディーン・テディと結成した4人組バンド・Muddy Apesを結成するなど活動の幅を広げている。ソロ名義でもアルバムのリリースを重ね、ライブツアーで各地を回るなど精力的な活動を展開。2016年と2017年には「SUGIZO vs INORAN PRESENTS BEST BOUT~L 2/5~」と題して、SUGIZOとの対バンライブを行った。2017年8月にセルフカバーベストアルバム「INTENSE / MELLOW」をリリース。9月に全国ツアー「SOLO 20TH ANNIVERSARY TOUR 2017 - INTENSE / MELLOW -」を開催し、ツアー最終日の9月29日にバースデーライブ「B-DAY LIVE CODE929/2017」を行う。