M×A×S×S、真冬の野外、ソロ始動を振り返る
──改めて、ソロ活動について聞かせてください。1996年12月の横浜スタジアム公演をもってLUNA SEAの活動が止まり、メンバーのソロ活動が始まりました。バンドが活動休止することに関して、INORANさんはどんな意見だったんですか?
そもそもLUNA SEAは誰か1人でもNOと言ったらNOになるバンドなんです。LUNA SEAってとにかく個性の強いミュージシャンの集まりだから、収拾の付かないことも多々あって。あとは「MOTHER」というすごいアルバムを94年に出し、95年には初の東京ドームライブをやってバンドとしては1回目のピークを迎え、96年の「STYLE」でかなり深いところに行き……という流れの中で、「LUNA SEA、次にどこに向かうの?」となったら止まるのは必然だったとも思うので。だから2000年の終幕にしても、96年の活休にしても、俺は止まることに不安はなかったです。
──賛成でも反対でもなく?
そうですね。終幕のときは俺、賛成派だったんですけどね。
──96年の活動休止については?
どうだったかなあ。RYU(RYUICHI / Vo)とSUGIZOがソロをやりたいとか言ってた気がするけど……ソロをやりたいって言うメンバーがいる時点で、無理矢理LUNA SEAを続けることはできなかったんですよ。
──バンドですからね。
うん。しかもそれは今も変わらない。4人がいいっていう曲も、誰か1人が嫌だって言ったら世に出さないくらい。
──97年にメンバーのソロ活動が始まり、RYUICHIさんは河村隆一として露出を増やしてお茶の間に進出して、Jさんはロック一筋で動き出しました。SUGIZOさんはアートという明確なコンセプトや立ち位置がありましたが、率直に言うと、INORANさんのソロはあまり明確なビジョンがなかった感じがしていて。実際どうだったんですか?
確かにぬるっとしてましたね。別にソロがやりたいなんて思ってなかったわけで。でもLUNA SEAが止まったあと、友達とごはんを食べたり、ぼーっとしたり、音楽を聴いたりしている間に、「何か面白いの作りたいな」と思って。そんな流れで作ったアルバムが1stソロアルバム「想」(1997年発表)なんです。だから大義や、特別な気持ちありきで作ったアルバムじゃなくて。ぶっちゃけ、そんなことはあの時期だからできたんですよ。何をしても担いでもらえたと言うか。LUNA SEAのアルバムが50万、60万枚と売れていて、ソロでその1/5が売れるとしたら業界はほっとかない。で、初っ端から好きなことし過ぎたなっていうぐらい、好きなようにやらせてもらった(笑)。「想」に関しては自分自身のサウンドトラックを作った感じです。ただそれだけ。「1曲歌ってほしいんですよ」と言われて「嫌だ」って断ったんですけど、どうしても歌わなきゃなんなくて。本当はいらなかったってぐらいです。自分のサントラで歌うほど、俺はそんなに自分を好きじゃないんで(笑)。それは今も変わらないんですけどね。
──ソロをやる前の93年にはhideさんとJさんとMxAxSxS(マス)というユニットをやってますが、そのあたりからの影響は?
MxAxSxSに関して言えば、音よりもhideさんという人が張っているアンテナの精度、感度に影響を受けましたね。hideさんって、Nine Inch Nailsをデビュー前から知ってたし、Skinny PuppyやNirvanaとかもかなり早くから聴いていて、すごい先端を行ってたなって今でも思います。それとhideさんと一緒に過ごした日々そのものも俺に影響を与えてくれました。hideさんって、ギタープレイからもわかると思うけどすごくカッチリしてるんですよ。実際、hideさんの曲をカバーするとわかるんだけど、すっげえ凝っててちょっと覚えられないぐらい(笑)。そしてブっ飛んでる。やっぱりすごい人です。それまでいなかったミュージシャンで、これからも出ないような人だと思いますし、そんなhideさんと過ごした日々はとても貴重な時間でした。
10年周期で「辞めたい」と思っていた
──ちなみに「想」はセールス的にどうだったんですか?
15万枚ぐらいは売れたと思います。ただそのときはRYUのアルバム(河村隆一のアルバム「LOVE」)が300万枚で大きな差があった。でも「想」を作ってよかったと思います。「想」がないと次の「Fragment」(2001年発表)はないわけだし。しかもLUNA SEAのメンバー以外と演奏するとかいろんな経験ができたので。その一方でメンバーのソロのセールスが出るわけですよ。もちろん、セールスだけで作品のよし悪しは計れないけど、枚数は結果として出てしまう。周りの人の反応もやっぱり違って、例えばRYUとテレビの収録に行くとプロデューサーはRYUには挨拶に行くけど、俺のことはシカトするとか。「俺、妖精になっちゃったの?」って(笑)。
──(笑)。
まぁ300万枚と15万枚だとそうなりますよ。今だと普通に仕方ないことだって思えるけど、当時はこたえましたね。それが「想」リリース後の98、99年のことですから28、9歳ぐらいのときか。さらに2000年にLUNA SEAが終幕して2001年になると俺の周りにはスタッフがほんの数人いるだけになって。終幕の前まですべて永遠だと思ってたんだよね。マネージャーも辞めることは永遠にないと思っていたくらいで。けど生きている中で知り合った人……友達、家族、みんな永遠に続く関係なんてないんだよね。だからといって人付き合いが浅くなるわけでもなく、冷めるでもなく、それをプラスに持っていくマインドを養っていく期間にその頃、突入しましたね。
──そういう冷酷な現実に触れて、ミュージシャンを辞めようとは思わなかったですか?
俺、10年周期で「辞めたい」っていうのが来るんですよ(笑)。2009年、39歳ぐらいのときに辞めようと思いましたね。
──そのときの辞めたい理由はなんだったんですか?
「もういいかな」みたいな(笑)。結局、歌なんですよ。今だって歌うことも自分の声も別に好きじゃないし。で、歌うことに対していろいろ試してたんだけど、自分の歌への評判も含めて疲れちゃったんですよね。スマートフォンの普及と共に日本でSNSが発展し始めた時期でもあったし、2ちゃんねるとかも気になったりしてたなあ。あとは自分の声とか歌うんぬんの前に「シンガー、ボーカルと言えば河村隆一」というのが細胞レベルで染み付いていたことも大きい。隣にいたボーカルがすごすぎるっていう(笑)。さらにギタリストが歌を歌うときに、キース・リチャーズ系かエリック・クラプトン系かで考えると、俺はクラプトンのほうを目指しちゃったから。そりゃあ理想が高いよなって話。でもそこを目指して悩みながら挑戦し続けたことが、今すごい結実していると思います。
──歌の練習はかなりしたんですか?
練習はしないけど、歌う前にかなりの勢いで発声するとか、すごく気を遣ってましたね。とか言っても酒もタバコもやってるし、喉のために全身全霊をかけているわけじゃないんですけど(笑)。でも音楽って気持ちを伝えるものだって少なくとも俺は思っていて、だとしたら大切なのはメンタルなんだなと。メンタル1つで発声練習をしなくても声はしっかり出るんです。だから今は発声よりも「自分の喉、自分の声を信じてあげる」ってことを大事にしています。キャプテン翼の「ボールは友達」と一緒ですよね、あのマインドって大事。自分の声が好きじゃないとしても、敵ではなくて味方だって思わないと、自分に寄り添ってくれないんです。
次のページ »
「やっておけばよかった」を減らしたい
- INORAN「INTENSE / MELLOW」
- 2017年8月23日発売 / KING RECORDS
-
初回限定盤
[2CD+DVD+52P写真集スペシャルパッケージ仕様]
9800円 / KICS-93516~7 -
通常盤 [2CD]
3500円 / KICS-3516~7
- INTENSE SIDE 収録曲
-
- Ride the Rhythm(新曲)
- Spirit
- 千年花
- Daylight
- Determine
- raize
- MELLOW SIDE 収録曲
-
- Shine for me tonight(新曲)
- Your Light Is Blinding
- no options
- Sakura
- Beautiful Now
- 人魚
- Thank you
- 初回限定盤DVD収録内容
-
- 「Ride the Rhythm」「Shine for me tonight」Music Video
ライブ情報
- 「SOLO 20TH ANNIVERSARY TOUR 2017 - INTENSE / MELLOW -」
-
- 2017年9月1日(金)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2017年9月2日(土)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2017年9月7日(木)広島県 SECOND CRUTCH
- 2017年9月8日(金)福岡県 DRUM Be-1
- 2017年9月10日(日)熊本県 熊本B.9 V1
- 2017年9月12日(火)香川県 DIME
- 2017年9月14日(木)京都府 磔磔
- 2017年9月16日(土)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2017年9月18日(月・祝)愛知県 ElectricLadyLand
- 2017年9月21日(木)北海道 cube garden
- 2017年9月23日(土・祝)岩手県 CLUB CHANGE WAVE
- 2017年9月24日(日)宮城県 darwin
- 「B-DAY LIVE CODE929/2017」
-
- 2017年9月29日(金)東京都 新木場STUDIO COAST
- INORAN(イノラン)
- 1970年生まれ、神奈川県出身のギタリスト / シンガー。5人組ロックバンドLUNA SEAのギタリストとして、1991年にメジャーデビュー。同バンドの活動と並行して、1997年にはソロアルバム「想」をリリースする。2000年のLUNA SEA終幕後からは本格的にソロ活動をスタートさせ、2002年にはロックユニット・FAKE?を、2005年にはRYUICHI(河村隆一)らとロックバンド・Tourbillonを結成。ソロ活動のほか、2010年に“REBOOT”と称して再始動したLUNA SEA、2012年にFEEDERのタカ・ヒロセ、8ottoのMAESON、FEEDERのサポートギタリストとしても活躍するディーン・テディと結成した4人組バンド・Muddy Apesを結成するなど活動の幅を広げている。ソロ名義でもアルバムのリリースを重ね、ライブツアーで各地を回るなど精力的な活動を展開。2016年と2017年には「SUGIZO vs INORAN PRESENTS BEST BOUT~L 2/5~」と題して、SUGIZOとの対バンライブを行った。2017年8月にセルフカバーベストアルバム「INTENSE / MELLOW」をリリース。9月に全国ツアー「SOLO 20TH ANNIVERSARY TOUR 2017 - INTENSE / MELLOW -」を開催し、ツアー最終日の9月29日にバースデーライブ「B-DAY LIVE CODE929/2017」を行う。