音楽ナタリー Power Push - Helsinki Lambda Club

目指せ1万枚!? グッとくる“最強のB面集”

代表曲よりB面曲が好き

武井 「ME to ME」聴きましたよ。よくも悪くも雑な部分があって、スタジオ録音なのにライブ音源みたいだなって思いました。これを1stアルバムとしてリリースするのは度胸あるなー。俺だったら「もう1回やっていい?」って直したくなっちゃうところもけっこうあって(笑)。

橋本 あはは(笑)。

武井 もちろん悪い意味じゃなくてね。聴いてライブに行ったらそのまんまを味わえそうだなって。

加藤マニ

加藤 私もこのアルバム全体的にとってもいいなと思いました。どの曲も飛ばさずに聴けますね。でも同時に“すごくいいB面集”……Oasisの「Masterplan」のようなものを感じました。とは言えリリースツアーで演奏したあとはお蔵入り、みたいな曲がないんだろうなって感じがします。ひさびさにライブでやってもイントロが鳴った瞬間みんなが「わあー! きた!」ってなれるような曲ばかりが入ってる感じがしました。B面っぽいからシングルカットしづらそうだなとも(笑)。

武井 “最強のB面集”っていうのはしっくりくるね。

橋本 そうなんですよ。B面っぽい曲になっちゃうのは僕らがずっと悩んでることなんです。わかりやすいキラーチューンみたいなものがないままフルアルバムを作ることになってしまい……でもずっとシングルっぽい曲で勝負ができないバンドだったんで、アルバムっていう形態になってようやく「自分たちはこういうバンドだよ」っていうのを見せられたかなって。まあそれは1曲で勝負できないっていう弱点でもあるんですけど……。

武井 なんか弱点ばっかりなバンドだね(笑)。

加藤 「ユアンと踊れ」とか「All My Loving」はシングルっぽいけどね。「Lost in the Supermarket」をリード曲に選んだあたりから様子がおかしくなってきたと思う(笑)。

橋本 僕はどのバンドの曲でも代表曲よりB面の名曲のほうがグッとくるタイプなんですよ。Pavementが好きなんですけど、「Shady Lane」みたいな代表曲も好きだけど、アルバム曲で、しかもボーカルが歌っていない「Date With Ikea」みたいななんてことない曲にグッときちゃうから。僕が曲を書いてる以上しょうがないのかも。

信頼できる人しかプロデューサーには付けたくない

加藤 「ME to ME」はアナログフィッシュの下岡さんがプロデュースしてるんですよね。薫さん確か共演したときも好きすぎて話せないですって言ってたレベルだったと思うけど、大好きなミュージシャンと一緒に制作するのは緊張しましたか?

橋本 下岡さんって独特な雰囲気がある方だから、なかなか尊敬っていう域から一歩踏み込んだところには行きづらかったんですけど、プロデュースをしてくれることに決まってからは下岡さんから歩み寄ってくれたので、レコーディングはとてもやりやすかったですし、仲のいい関係になれたと自分では思っています。下岡さんは関係が深まっても全然嫌なところが見えなくて、これからもずっと尊敬できる人だなって。マニさんと武井さんが緊張する相手はいますか?

加藤 私はLA-PPISCHやSOIL & "PIMP" SESSIONSの皆さんに撮影でお会いしたときは緊張しましたね。10代の頃に聴いていた人と仕事するのはやっぱり緊張します。大御所かつカリスマ度が高い人って、もちろん同じ目線あたりまで降りてきてくださるんですけど、やっぱり見上げちゃう。

武井優心(Czecho No Republic)

武井 俺は草野マサムネさんですね。会うと何もしゃべれなくなって「よかったです」くらいしか言えないで汗ばっかりかいちゃう。で、家に帰って「さっきは緊張して全然話せなくて……」って長文メールを送るんですよ。

橋本 ああ、わかります。武井さんでもそんな状態になるんですね。

武井 憧れの人と仲良くなれるなんていいなあ。俺もマサムネさんにプロデュースしてもらうかな……。

橋本 それすごいですね(笑)。僕らの人見知りな性格上プロデューサーをいれて作業していくことは難しいと思ってたんですけど、制作を重ねていくうちに、思っていることでも言語化できなかったりする場面に出くわして。もう少し風通しをよくするために、制作チームと話してプロデューサーを入れてみることに決めたんです。で、お願いするなら信頼できる人じゃないと嫌だよねって話になって。下岡さんがKETTLESのプロデュースを手がけているのを知って、こんなに好きなバンドの人がプロデュースとかも引き受けてくれるならぜひお願いしたいなと思ったんです。下岡さんが携わってくれたのは制作に入る1カ月くらい前なので、曲作りから一緒にっていう感じではなかったんですけど、下岡さんのアイデアをいろいろと取り入れさせてもらってます。

まだまだ“ニヤリ”を追求できる

武井 今って佐久間(公平)くんがお休み中でしょ? ギターって誰が弾いてるの?

橋本 レコーディングでは佐久間が半分くらい弾いていて、残りはGroup2というバンドをやっていてライブのサポートもお願いしているクマガイタイキと、Kidori Kidoriのマッシュさんに手伝ってもらっています。

加藤 ギターソロのフレーズとかは全部自分で考えるの?

橋本 うーん、全部ではないです。今までセッションとかで作らなかったんですけど、タイキのセンスが信用できたので、一緒に考えたものも多いですね。

武井 ちなみにそれってどれなの?

橋本 「This is a pen.」とか「lipstick」とかはあいつがいなければできなかったフレーズですね。あと「Morning Wood」のギターフレーズは完全にタイキが考えました。

加藤 「あいつは総理 boring lorry, baby」ってモロに(Oasisの)「Morning Glory」の空耳のあとに(Blurの)「Song 2」みたいなコーラスが入るやつだ。ブリットポップジョーク。

左から加藤マニ、橋本薫(Helsinki Lambda Club)、武井優心(Czecho No Republic)。

橋本 そうです。

武井 その遊び要素、伝わらないと思う(笑)。

橋本 ですかね(笑)。チェコの曲にも遊び要素……引用とまではいかないけどそういうのが散りばめられてますよね。「erectionary」(2010年11月発売のミニアルバム)には遊び要素が特に多い気がします。そういうのにニヤリとしちゃうんです。

武井 うん。だから俺もヘルシンキのそういう遊びを散りばめるセンスがあるところに魅力を感じるのかもしれないけど、悲しいことにそういうフェチを好きなファンはマイノリティだよ。鬼の首取ったように自分の着眼点が面白いと思っていた時期もあったけど、それはちょっと勘違いだったりもして。やっぱり思っていた以上に伝わりにくい。自分的な聴きどころとリスナーの聴きどころは必ずしもマッチしないんだなと思ったよ。

橋本 だけど遊んじゃいますよね(笑)。そこらへんの遊びは自己満足でいいかなとも思ったりします。

加藤 100人に1人ぐらいわかってくれれば喜べるっていうかね。優心くんは100人いて99人がわかってくれないって思ったから落ち込んじゃったんでしょうけど(笑)。

武井 俺さ、ヘルシンキはそういう遊びをもっと追求してもいいんじゃないかなって思うんだよね。衝動の詰まった作品だから1枚目としてはいいんだけど、もっともっと成長できるんじゃないかって、伸びしろを感じた。だからヘルシンキにはもっと“唯一無二感”を突き詰めてほしいなって期待してます。険しい道にはなると思うけど……。

橋本 確かにまだまだいろんなやりたいことをやってみた結果っていう感じですね。その結果自分たちがどうなったのかっていうのは次の作品で示せると思います。

1stフルアルバム「ME to ME」2016年10月26日発売 / 2700円 / UK.PROJECT / UKCD-1161
「ME to ME」
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収録曲
  1. This is a pen.
  2. Skin
  3. NEON SISTER
  4. メサイアのビーチ
  5. Justin Believer
  6. Morning Wood
  7. lipstick
  8. 彷徨いSummer Ends
  9. 目と目
  10. マニーハニー
Helsinki Lambda Club(ヘルシンキラムダクラブ)
Helsinki Lambda Club

橋本薫(Vo, G)、稲葉航大(B, Cho)、佐久間公平(G, Cho)、アベヨウスケ(Dr, Cho)からなる4人組バンド。2013年夏に千葉で結成され、2014年にはUK.PROJECT主催のオーディションで応募総数約1000組の中から見事最優秀アーティストに選出された。その賞品として同年12月に2曲入りの8cmシングル「ヘルシンキラムダクラブのお通し」でUK.PROJECTからインディーズデビュー。2015年3月に1stミニアルバム「olutta」を発表した。楽曲のテイストはUSインディーに由来するものが多く、2016年10月には“ニューオルタナティブ”と謳った1stフルアルバム「ME to ME」をリリースする。

Czecho No Republic(チェコノーリパブリック)

武井優心(Vo, B)と山崎正太郎(Dr, Cho)を中心に2010年3月に結成。メンバーチェンジを経て、現在は武井、山崎、八木類(G, Syn, Cho)、タカハシマイ(Cho, Syn)、砂川一黄(G)の5人で活動している。2010年11月に初のCD作品「erectionary」をタワーレコード限定でリリース。同作が高い評価を受ける中、2011年10月に初のフルアルバム「Maminka」を発表した。2013年10月に2ndフルアルバム「NEVERLAND」で日本コロムビアよりメジャーデビューし、2014年10~12月にはフジテレビ系アニメ「ドラゴンボール改」のエンディングテーマとして「Oh Yeah!!!!!!!」が全国でオンエアされた。2015年9月に3rdアルバム「Santa Fe」を発表。2016年7月には4thアルバム「DREAMS」を発売した。

ライブ情報
Czecho No Republicワンマンツアー「Welcome to the Hotel Flamingo Tour」(※終了分は割愛)
2016年10月28日(金)福岡県 DRUM Be-1
2016年10月29日(土)鹿児島県 SR HALL
2016年11月6日(日)大阪府 BIGCAT
2016年11月12日(土)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
加藤マニ(カトウマニ)

企画、撮影、編集までのすべてを自身で手がける映像クリエイター。キュウソネコカミやCzecho No Republic、ゆるめるモ!など幅広いジャンルのアーティストのミュージックビデオを手がけている。自身もPILLS EMPIRE、lowtide、バレーボールズというバンドに所属し、音楽活動も行っている。