FOMARE|ハングリー精神と群馬への思いを詰め込んだメジャー1stアルバム「midori」

FOMAREが10月19日にメジャー1stアルバム「midori」をリリースした。

2019年6月に発売された「FORCE」から3年4カ月ぶりのアルバムとなる「midori」。今作には初期曲「タバコ」やテレビアニメ「ゴールデンカムイ」第3期のオープニングテーマ「Grey」などの既発曲に、群馬県発であるFOMAREの故郷への思いが詰め込まれた「かぼちゃ列車」をはじめとした未発表の新曲を加えた計12曲が収録され、FOMAREのこれまでの歴史と最新のモードの両方が感じられる作品になっている。

音楽ナタリーではFOMAREにインタビューを行い、アルバムの制作エピソードや10月22日に群馬・Gメッセ群馬で開催されるFOMARE主催イベント「FOMARE大陸」への意気込みを聞いた。

取材・文 / 小林千絵撮影 / 大川晋児

尖った部分はありつつも、聴きやすいアルバムに

──2019年6月発売のフルアルバム「FORCE」以来、約3年半ぶりとなるフルアルバム「midori」が完成しましたが、手応えはいかがですか?

オグラユウタ(Dr, Cho) 手応えはかなりあります! 何回でも聴きたくなるアルバムだと自信を持って言えるメジャー1stアルバムができたと思います。より歌が聴かせられるようになった作品だと思いますし、自分としてもそういうドラムが叩けたなと思っています。

カマタリョウガ(G, Cho) 今回はすでに配信リリースしている既発曲が多いので、ベストアルバムみたいな感覚もあるし、でも新曲も入っているので初めて聴く感覚もある。自分たちの強い曲を12曲集めたアルバムという感じがあって。“やってやった感”もあるし、自信を持って届けることができる1枚になりました。

アマダシンスケ(B, Vo) 手応えはありまくりです! ずっとCDを出したかったけど、コロナ禍ということもあって、なかなかタイミングが見つけられませんでした。その間、1曲ずつ配信リリースを重ねてきて。個人的にはやっぱり1つのパッケージとしてアルバムを聴いてほしいという気持ちもあったんですけど、配信用に1曲ずつ作っていくことで大事に制作できたと思います。そういう意味でも、コロナ禍の葛藤やネガティブな思いも詰まった、いろんな人に届いてほしいと思うアルバムになりました。

アマダシンスケ(B, Vo)

アマダシンスケ(B, Vo)

アマダシンスケ(B, Vo)

アマダシンスケ(B, Vo)

──オグラさんが先ほど「歌が聴かせられるようなアルバムになった」とも言っていましたが、メジャー1stアルバムということは意識しましたか?

カマタ 話し合ったわけではないですけど、僕は、多くの人に聴いてもらえる状況になっているからこそ、メジャー路線というか……耳馴染みのいいものにしようと思いましたね。「愛する人」とか「雪あかり」にはシンセも入れているし、ギターも聴きやすい音にして。

アマダ 楽曲としては半分くらいがインディーズのときに出した曲だし、メジャー路線みたいなことは意識していなかったんですけど、2人が言っていたみたいにそれぞれがメジャーを意識してくれた新曲や、萌々子さん(Hump Backの林萌々子)をフィーチャリングした「恋につられて」が入ったことで、これまで通りの尖った部分はありつつも、聴きやすいアルバムにまとまったんじゃないかなと思います。

カマタ こんなに人懐っこくていいメロディの曲がそろっているのに、変にロック魂を出しすぎるのも違うのかなと、最近思っているんですよ。ライブはライブでメロディや温度感をアレンジできるので、そこのバランスは都度考えつつでいいのかなと。そういう思いもあって、「midori」は昔の音源よりもかなり聴きやすくなっていると思います。

──「多くの人に聴いてもらえる状況になっている」という話が出ましたが、そのきっかけとして「長い髪」(2020年7月にリリースされたCD「目を閉じれば」の収録曲)のバイラルヒットは大きいと思います。このヒットを、3人はどう捉えていますか?

アマダ 正直、TikTokでバズったことが当時は超複雑でした。コロナ禍でライブもできない時期だったし。でも今は複雑な気持ちは全然ないです。何よりも、バラードがいろんな人に届いたことがうれしくて。それまではコアなファンが「FOMAREはバラードもいいよね」と言ってくれるくらいだったので。

カマタ ライブができない時期だったし、TikTokのことをよくわかっていなかったので、当初は「この状況はなんなんだ?」という気持ちでしたけど、今はありがたいなと思っています。ライブでも「長い髪」をやるとガラッと雰囲気が変わるし、FOMAREを変えてくれた曲なので、大事にしていきたいです。

オグラ 「長い髪」は「目を閉じれば」という、自分が制作に関わり始めた作品に入っている曲で。そのときからいい曲だなと思ってはいたんですけど、知らないところで火がつき始めた感じがあって。「あ、『長い髪』の人だ」みたいに言われることがあって、うれしいですけど不思議な気持ちです。

アマダ そうなんですよ。「長い髪」は知っているけどFOMAREは知らないとか、「ゴールデンカムイ」を観ていて「Grey」(テレビアニメ「ゴールデンカムイ」第3期のオープニングテーマ)は知っているけどFOMAREを知らないとか、そういう人がいるのは複雑ですね。それこそライブができなかったときに、いわゆる“バズ”が起こったので、ファンの人とか仲間と会えなくて。みんなの中のFOMAREの印象が変わっていってしまったらという不安がありました。でも最終的にはよかったのかなと……思っているんですが、僕ら、変に丸くなっていないですかね? 大丈夫ですか?

──大丈夫だと思いますよ。曲が認められているということですし、昔からずっといい曲を歌ってきたからこそ、このタイミングで「多くの人に聴いてもらいたい」と聴きやすい音作りに挑戦したというのは真っ当なことだと、お話を伺っていて思いました。

カマタ ああ、よかったです。

カマタリョウガ(G, Cho)

カマタリョウガ(G, Cho)

カマタリョウガ(G, Cho)

カマタリョウガ(G, Cho)

Hump Back林萌々子が歌う恋愛の曲が聴きたかった

──では「midori」の収録曲についても話を聞かせてください。まずは先ほどのお話もありましたが、Hump Backの林萌々子さんをフィーチャリングゲストに迎えた「恋につられて feat. 林萌々子」から。林さんをフィーチャリングすることになった経緯はどういったものだったのでしょうか?

アマダ 僕とカマタはHump Backの「サーカス」(2015年4月にリリースされたCD「帰り道」収録曲)が好きなんですが、普段萌々子さんはあまり恋愛の曲を歌うイメージがないんですよね。また「サーカス」のように、萌々子さんが歌う恋愛の曲を聴きたいなと思って。

カマタ いちファンとして(笑)。

アマダ そう、ファンとして萌々子さんのラブソングが聴きたかった。あとは、昔から一緒にライブハウスでやってきて、今は同じようにメジャーのフィールドで戦っているというところも心強い。信頼できる友達であり先輩であり、安心してお願いできるし、安心して聞けるので、萌々子さんと一緒に何かやりたいなと思って、声をかけさせてもらいました。

──林さんをゲストに迎えて曲を完成させたことで気付きや発見はありましたか?

カマタ 僕は純粋に、改めて「アマダの声、いいなあ」と思いました。

アマダ うれしいなあ。

カマタ もちろん萌々子さんの声も最高ですし、1曲の中でボーカルが変わるので、それぞれの声を待つ楽しみがあって。なおかつアマダの声が、この曲のサビにハマっているなと思いました。

アマダ この曲のサビは、今までの曲の中で一番キーが高いんですよ。昔だったらここまで高い音は出なかったのですが、最近は出るようになってきました。それは発見だったかも。

オグラ 僕は……萌々子さんと仲よくなれてうれしかったです。

アマダ 柿ピーさん(オグラ)は萌々子さんと、面識も絡みもなかったんですよ。

オグラ そうなんです。僕、レコーディングの日に遅刻したのですが、萌々子さんはそんな僕にも優しかったです(笑)。

オグラユウタ(Dr, Cho)

オグラユウタ(Dr, Cho)

オグラユウタ(Dr, Cho)

オグラユウタ(Dr, Cho)

──「恋につられて feat. 林萌々子」は先行配信されていて、すでに多くの話題を集めています。これまでの楽曲にも増して共感できる歌詞になっていると思うのですが、歌詞はどういった意識で書いていったのでしょうか?

アマダ 共感されるかどうかみたいなことはマジで意識していなくて。自分の実体験を、当時好きだった子とのことを思い出しながら書いただけです。これまで「好き」とか「酔っても」みたいな具体的なことってあんまり歌詞に入れたことがなくて。でも具体的に書いたことで………気持ち悪く聞こえるかもしれないですが、聴くたびにその子との思い出に浸れるんですよ。本当に大事なことって、曲に残したらずっと忘れられないでいられるんだなというのは発見でした。

──アマダさんはいつも実体験をもとに歌詞を書いていると思いますが、この曲にはこれまでとは違う感覚がある?

アマダ はい。好きと言えなかったという歌詞の内容からもわかると思うのですが、その子とは付き合ってはなかったんです。今までは別れた人に対する気持ちを歌うことが多くて、気持ちを伝えられなかったまま終わった恋愛を歌うことってあまりなかったんですよ。だから、届かない気持ちを歌うことによって、自分がこういう気持ちになるんだとか、こういう曲ができるんだと気付くことが多かったですね。曲の反響もよかったので、新しい自分を見つけられたというか、「こんな自分もいいんだな」と思えて……いい恋愛でした。恋愛の感想になっちゃいました、すみません(笑)。

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