「Dive/Connect @ Zepp Online」 谷口鮪(KANA-BOON)×遠山大輔(グランジ)|新たなスタイルの配信ライブが作り出す自由なつながり

いろんなところに連れていってもらってる感覚

──今は収録、生配信に限らずたくさんの配信ライブがありますが、お二人は今まで観た配信ライブの中で、印象に残っているものなどありますか?

谷口鮪(KANA-BOON)

谷口 それこそ「Dive/Connect」のアジカンのライブは、自分が好きだというのもあって、すごくよかったです。あとはUNISON SQUARE GARDENの自主企画とか、この状況でもちゃんと新しい試みをスタートさせてて、面白くてちょっと悔しいなあと思いました(参照:ユニゾン主催ライブでスカパラ、BIGMAMA、9mm、バクホンら豪華ゲスト7組が“生存確認”)。

遠山 悔しいっていうのはどういう感情なの?

谷口 「俺らも何かしないと」という気持ちですね。7月に配信ワンマンをやったんですけど、配信ライブはそんなに頻繁にできるものでもないので(参照:KANA-BOON、無観客配信ライブで全国に届けた素直な思い「俺たちのライブを取り戻そう」)。

遠山 あと配信ライブはダラダラしながら観られるのがいいよね。イヤフォンさえしてれば、飲食店で1人でお酒を飲みながら観たっていいわけだし。

谷口 自分1人でリラックスして聴く音楽って、ライブハウスやフェスで聴く音楽とはまた違う聞こえ方をするんですよ。そういうところに思いを馳せながら観ると、新しい発見があると思います。

遠山 自分はPerfumeさんのオンラインフェス(9月21日に配信された「"P.O.P" Festival」)を観まして。Perfumeは2月に全国ツアーの最終公演が急遽中止になっちゃったんですよね。そこからほかのアーティストのライブも軒並み中止になっていくという節目のようなタイミングで。だから今回の配信はそのリベンジのような意味合いもあったんですよ(参照:Perfumeオンラインフェスで圧倒的バーチャルパフォーマンス、中止になった東京ドームに決着付ける)。いろんなライブが観られなくなってファンの方は残念だけど、アーティストもどうやったら落胆したファンを喜ばすことができるんだろうといろいろ模索しているし、お互いに「自分には何ができるんだろう」とモヤモヤした気持ちを抱えていたと思う。そんな中で、対面で見せるはずだったものを、オンラインで帰結させるという手法をとったPerfumeのライブには「そういう物語の見せ方もあるんだ」と思いました。

谷口 そういう、ストーリーがある配信ライブもいいですね。

遠山大輔(グランジ)

遠山 そうそう。「Dive/Connect」も参加させていただいて、配信ならではのいいことをすごく感じていて。僕はASIAN KUNG-FU GENERATIONと加藤ミリヤさんの回を観たんですけど、音がいいし映像もきれいだなと思いました。もちろんBlu-rayやDVDを観るのもいいんですけど、配信だとファン同士で同じタイム感で観られるというのがいいですよね。「Dive/Connect」は配信が始まる前からコメント欄が盛り上がってるんですよ。それが開演前のライブハウスのざわざわ感に似ているなと。だから離れていても一緒に観ている感覚になれるんですよね。カメラの角度とかも、有観客のライブではできないアングルがあって新鮮でしたし。それぞれの場所から観ていても、いろんなところに連れていってもらってる感覚があるんです。「あ、こういうやり方もあるんですね」「なるほど、こんなのもあるんですね」と。さっき鮪くんも配信ライブならではの選曲をしたって言ってたけど、配信ライブはアーティストごとの個性が強く出るなと思ってます。

谷口 確かに、普段出せない部分は見せやすいかもしれないですね。お客さんが目の前にいない中で、何を言うべきなのか、どういう気持ちで演奏するべきなのかとか、自分たちと対峙する部分が多いので。そうすると自然に自分たちの持ち味だとか、もともと持っている強みだとかが表出していくんでしょうね。

──これから配信ライブでチャレンジしていきたいことはありますか?

谷口 普段あまりやらない曲を演奏して、どういったドラマがあるのかを引き続き探っていきたいですね。別の配信ライブで「スタンドバイミー」という曲を演奏したんですけど、この曲はバンドとして苦しみもがいていた時期に自分たちを助けるために生まれた曲で。その曲が時を経て、こういう状況の中で演奏してみると、当時とは全然違う意味合いを持つんです。あんなに内省的だった曲が、観てくれてる人とのつながりを確認するような曲に聞こえたんですよ。そういう体験もあるので、これからも配信ライブで自分たちの曲に新たな意味を見出していきたいと思います。

遠山 そういう発見は視聴者側にもあるかもね。配信ライブはやっぱり冷静な状態で観られるから「あ、本当はこういうことを歌っていたんだ」という発見がありそう。

谷口 冷静になることによって見えてくるよさはありますね。

遠山 曲に込めたメッセージがちゃんと伝わるチャンスかもしれないし、配信される頃には収録時とはさらに違う意味合いを持っているかもしれないというのも「Dive/Connect」の面白さの1つかもね。

その場所にいる時点で1つ

──「Dive/Connect」だけに限らず、通常のライブにはない、オンラインライブでならではの魅力を改めて教えていただけますか?

遠山 あまり観に行ったことないアーティストのライブだと、「みんなと同じ動きしないといけないのかな」と不安になって敬遠しちゃうことがあると思うんですけど、オンラインライブはそれが一切ないんですよね。自分が好きな人と好きな場所で、好きな音楽だけを純粋に楽しめる。ライブって本来そういうものじゃないですか。だからいつかお客さんを入れたライブができるようになったときも、同じ気持ちでいられたらすごくいいなと思いますね。

谷口 そうですね。1人ひとりが自分だけの自由を持てたら最高ですよね。

左から谷口鮪(KANA-BOON)、遠山大輔(グランジ)。

遠山 かといって、満員のZeppの地べたに横になってダラダラ観られたら迷惑だけど(笑)。そこは鮪くんから注意してもらって。

谷口 注意します(笑)。「ちょっとそこっ!」って言います。

遠山 でも実際、自由に楽しめる状態に戻れたというのはあると思うんですよね。ライブの楽しみ方をリセットできるいい機会かもしれない。だから今度対面でのライブが復活するときが楽しみですね。

──谷口さんには、自由にライブを観てほしいという思いがあるのでしょうか?

谷口 もちろんみんなでワイワイ盛り上がることも最高だと思うんですけど、僕が理想とする一体感は、そのバンドを好きな人が一堂に会していることへの喜びを感じることなんじゃないかなって。ライブは「この音楽を好きな人が自分以外にもこんなにいるんだ。自分は間違ってなかったんだ」と実感できる場所であるべきだと思っているんですよね。だから僕が言う一体感は「みんなで1つになろう」ということではなくて、「その場所にいる時点で1つなんだ。ここにいる人は1つのものを追い求める同志なんだ」という感覚というか。さらに配信だとコメントが一斉に流れることで「この曲を好きな人がこんなにいるんだ」ということがハッキリわかると思うので、そこでも一体感を感じてほしいです。

遠山 自分が書き込まなくても、ほかの人のコメントを見てるだけで「みんなこの曲好きなんだ」と思えるだろうし、一緒にライブを観てる感覚になれるかもしれないね。あと「Dive/Connect」は収録だから、アーティストがコメントをじっくり見れるのもいいよね。

谷口 新しいつながり方ではあるかもしれないですね。アーティストがお客さんと同時にライブを観るという一体感はすごく価値のあるものだと思うので当日が楽しみです。

左から谷口鮪(KANA-BOON)、遠山大輔(グランジ)。