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「『僕たちの秘法』tour」を振り返る

諫山創との対談に続いては、19本にわたる全国ツアー「cinema staff『僕たちの秘法』tour」を終えたcinema staffの単独インタビューを掲載する。今回リリースされたシングル「great escape」にはカップリングに、同ツアーのファイナル公演(7月11日の東京・渋谷CLUB QUATTRO)で収録されたライブ音源を収録。30分以上におよぶこのライブ音源からは、現在のバンドの勢いを存分に感じることができる。

5月に発売されたアルバム「望郷」を引っさげて行われたこのツアーで彼らは何を手に入れたのか、じっくり語ってくれた。

取材・文 / 西廣智一

cinema staff インタビュー

モチベーションを高く維持したまま続けられたツアー

──アルバム「望郷」を携えての全国ツアーを終えた、現在の心境を教えてください。

「cinema staff『僕たちの秘法』tour」の様子。(Photo by Rui Hashimoto [Sound Shooter])

三島 今回はすごくスッキリ終われた気がしますね。2カ月くらいの長めのツアーだったんですけど、一気に駆け抜けたっていう気持ちが強くて。実は前のワンマンツアー(2012年10~11月に行われた「cinema staff 4th mini album『SALVAGE YOU』release tour “夜は短し歩けよ辻”」)が、出来は別に悪くなかったんですけど、どこかモヤモヤしながらやってたところもあったんです。だけど今回はそういうのもなく、すごく集中して楽しめたなって。最初の14本が対バン形式だったんで、その対バンの力も大きいんですけど、どの会場でも悔いなくできたなと思います。

──前のワンマンツアーではなぜモヤモヤしたものを感じてたんでしょう?

久野 メジャーになって初めてのワンマンツアーで、生活がガラッと変わったのも大きいのかな。例えばバイトしないでバンドだけやるとか、そういう状況の変化に対してついていけない自分たちがいて。どこかフワッとしてたんでしょうね。

飯田瑞規(Vo, G)(Photo by Rui Hashimoto [Sound Shooter])

飯田 ワンマンライブを何回かやったあとでワンマンツアーをやるなら、単純に動員が増えていてほしかったんですよ。でもメジャーになったからといって、状況はそこまで急には変わらず、今までやってきたことを繰り返してるだけに感じられて。「来年は自分たち、どうなってるのかな?」とか、この先に対して不安を感じつつやってたんです。

──だけど今回は違った。

飯田 全然違いました。対バン形式で刺激を受けつつやってると、モチベーションを高く維持したまま続けられたんですよね。そういう意味ではワンマンツアーは気持ちの持ち方が難しかった。それも大きかったのかもしれないな、モヤモヤしたのは。

──今回のツアー、最後の5公演はワンマンライブでしたけど、結果的にはすごくいい形で終われました?

三島 はい。序盤の対バン形式でいい助走を付けて、最後のワンマンに向けて仕上げていった感じですね。それはすごく感じました。

メンタルの部分は技術面にも影響するんだと実感

「cinema staff『僕たちの秘法』tour」の様子。(Photo by Rui Hashimoto [Sound Shooter])

──「望郷」というアルバムをライブで表現する上では、何か苦労した点はありましたか?

三島 最初の数回は探りながらやってるところがあったけど、回を重ねるごとにみんな徐々に迷いがなくなってきて、最終的にはバンドとしてのグルーヴがしっかり出せたし、楽しくやれましたよ。やっぱりモチベーションが高いと、今までと全然違うなと身に染みて感じましたね。そういうメンタルの部分が大切なんだな、それが技術面にも影響するんだなって実感して。

飯田 「望郷」の楽曲が今までと比べるとちょっと静かめで落ち着いた雰囲気があるんで、どういった感じのライブになるのか不安もあったんですけど、「望郷」以前の曲を混ぜることで全体的に音楽的な幅が広がって、どの曲も生き生きとした感じが強まったと思いました。「なんか今回のツアー、行けそうだな?」っていう感覚は最初から感じてたかも。

──前回のインタビュー(参照:cinema staff「望郷」インタビュー)のときに「このアルバムはツアーを終えたときに完全に完成すると思う」と話してましたけど、ツアーファイナルの東京公演で完全に完成させることはできましたか?

三島 「完結」はできました。ちょっと不完全だった要素もあって……辻くんがツアー終了直前に怪我をしてしまって。今まで通りのことを完璧にやれたかというとそうではなく、抜け道を使ってゴールまで行った感じがあります(笑)。

飯田 「溶けない氷」みたいにゲストを入れてレコーディングした曲も、本番で同じようにできたという意味では、ファイナルでは「完成」できたなって思ってます。

辻友貴(G)(Photo by Rui Hashimoto [Sound Shooter])

──辻くんはファイナル直前にステージから落ちて怪我をしてしまったそうですが。

 本当に前日に骨折しちゃったんで最初はどうなるかと思ったんですけど、当日は椅子に座ってですけど、最後までやりきれたのは大きかったですね。

──そこで辻くんが普段みたいに動けないぶん、三島くんや飯田くんがうまくカバーして。

三島 それはやっぱり思いましたね。

飯田 いつも以上に動きましたからね(笑)。

ニューシングル「great escape」/ 2013年8月21日発売 / 1300円 / ポニーキャニオン / PCCA-03900
[CD] 1300円 / PCCA-03900
収録曲
  1. great escape
  2. cinema staff【僕たちの秘法】tour Final@2013.07.11 渋谷CLUB QUATTRO
    (望郷 / 世紀の発見 / into the green / 革命の翌日 / 西南西の虹 / 溶けない氷)
cinema staff(しねますたっふ)

飯田瑞規(Vo, G)、辻友貴(G)、三島想平(B)、久野洋平(Dr)からなる4人組ロックバンド。2003年に飯田、三島、辻が前身バンドを結成し、2006年に久野が加入して現在の編成となる。愛知、岐阜を拠点にしたライブ活動を経て、2008年11月に1stミニアルバム「document」を残響recordからリリース。アグレッシブなギターサウンドを前面に打ち出したバンドアンサンブルと、繊細かつメロディアスなボーカルで着実に人気を高めていく。2012年6月にポニーキャニオン移籍第1弾作品となる「into the green」を、同年9月にメジャー第2弾となる4thミニアルバム「SALVAGE YOU」を発表。2013年5月にメジャー1stフルアルバム「望郷」を発売し、同月末から7月にかけて全19公演にわたる全国ツアー「cinema staff『僕たちの秘法』tour」を実施した。同年7月、テレビアニメ「進撃の巨人」の後期エンディングテーマに新曲「great escape」を提供。8月には同曲を含むニューシングル「great escape」をリリースした。


2013年8月23日更新