私は不安とか全然なかった！

──「音の無い世界のうさぎ」、すごくいい曲ですね。

岩淵紗貴　デモの段階ではもっとテンポが遅くてバラードっぽい曲だったんですけどね。

一瀬貴之（通称：イッチー / G）　そうそう。

岩淵　でも、イッチーが「もっとロックっぽいアレンジにしたほうがいいと思う」って提案してくれて、みんなでセッションしたらすぐにできたんですよ。曲が一気によくなったなって思いました。

一瀬　歌詞が独特でメロディもキャッチーだから、これはアップテンポにしたほうが絶対面白くなる曲だなと思ったんです。サウンドのポイントになっているギターリフもすぐに浮かんで。

田村三果（通称：アネキ / B）　サウンドがどんどん開けていったから、アレンジしてるときも楽しかったですね。あとで歌詞をよく読んで「あ、こんなに深いこと書いてるんだ」って思った記憶があります。

金山尚右（通称：ゴン / Dr）　アレンジして、メロディとギターリフがすごく強い曲になったなと思いましたね。

──その時点でいつか大事なタイミングでリリースしようと思ってたんですか？

一瀬　最初はそこまでは考えてなくて。YouTubeにも曲を上げちゃってたくらいなので。

岩淵　自信もあったから、早くいろんな人に聴いてもらいたかったというのもあって。

一瀬　YouTubeを観た人たちの反応もかなりよかったので、今回シングルとしてリリースしようってなったんです。でも、当初は「どこまで共感してもらえるんだろう？」っていう不安もあったんですよ。

──こんなにいい曲なのに？

一瀬　歌詞も難しいかなと思うところもあったし……。「音の無い世界のうさぎ」っていうイメージが想像しづらいかなって。

岩淵　え!? 私は不安とか全然なかった！

──でました、この噛み合わない面白さ（笑）。

一瀬　いつもすいません（笑）。

岩淵　あはははは（笑）。でも、私自身この曲にすごく助けられてきたんですよ。自分で作った曲ではあるんですけど、客観的に感動できる曲でもあるんですよね。この曲を作ったときは学校生活もうまくいってなかったし、バンドも思い通りいかないし、家では親とケンカしたり、いろんな葛藤があった時期で。ずっとイライラしていて。でも、そうやって世の中を嫌う自分が一番大嫌いで。そんなときに自分には音楽があって、バンドをやっていることの喜びをずっと忘れないようにするための曲を作ろうと思ったんです。

当時の燃えたぎる思いを大事にしたい

──「音の無い世界のうさぎ」というイメージはどのように浮かんだんですか？

岩淵　最初に、無音状態しか知らない月にいるうさぎが、初めて音に触れたときに感動してるイメージが浮かんだんです。私も初めてギターを弾いたときの楽しさや「音楽ってすごい！」って思った感覚ってずっと残ってるので。もし、月にいるうさぎが音に触れることができたら、手拍子の音だけでも感動すると思うし、それを幸せな音楽として受け止めるんじゃないかと思って。最近またライブでよくこの曲をやってるんですけど、今でもすごく自分自身に響くんですよね。この曲に「この感覚は絶対忘れちゃダメだよ」って言われてるような気がするんです。

一瀬　うん。この曲をやると空気が変わる感じがある。

──音源にもいい緊張感が出てるなと思って。

一瀬　実は、曲のアレンジをして1週間くらいでレコーディングしたんですよ。

岩淵　今回、レコーディングし直そうかという話もあったんですけど、あのときの私にしか出せない声が入ってるから絶対変えたくないと思って押し切りました（笑）。当時の燃えたぎる思いを大事にしたいと思って。今だったらきれいに歌いすぎちゃうと思うんです。ライブでは今の私の解釈で歌えばいいと思うんですけど、音源は当時の私を大事にしたくて。

──それでよかったと思います。

岩淵　演奏面でもいい意味での荒々しさがあると思うし。

一瀬　シャッフルビートでこれくらいの速さの曲をやるのは、当時の自分たちにとってはすごく新鮮だったよね。

田村　うん。シャッフルビートってCHEESE CAKEの個性のひとつだと思うんですけど、その独特のシャッフル感がよく出ている曲だと思います。