初めてわかった新メンバーの気持ち

──BILLIE IDLEにまったくの新人じゃなくて、最もキャリアの長いプー・ルイさんが入ることについて、メンバーはどう受け止めました？

ウイカ　ペーペーの新人さんと一緒にやる大変さとプー・ルイと一緒にやる大変さは、また全然ベクトルが違う話です。新人については単純に土台をイチから作っていかないといけないので。アキラがまさにそんな感じでした。対してプー・ルイの場合はBILLIE IDLEとして彼女をどう生かすかが重要で。プー・ルイを背負うという部分で私たちやNIGOさんが考えなきゃいけないものも出てくるので。もちろん彼女の中でも葛藤はあると思うし、ファンにも葛藤はあるかもしれない。プー・ルイの入ったBILLIE IDLEを見てみたいという欲求があると同時に、今の形を壊してほしくないなんて思いもあるでしょうし。

──確かに、悩ましいですね。

ウイカ　とは言え、今までの経験上、誰が入ってもなんとなく形にはなっていくんですよね、グループって。あとこの2人（プー・ルイ、ヒラノ）はあとからグループに加入した経験がないから、加入する側の気持ちが理解できなかったと思うんですよ。

プー・ルイ　うん。だからウイぽんが旧BiSの頃にインタビューで言っていたこともまったく理解できなかった。“後乗せサクサク組”みたいなことを言ってたんですけど、私としては「何言ってんだ、コイツ。入ったんだから自分も私たちと同じだろ」って。だけど今はなんとなく、なんでそう言っていたのかがわかりますね。ファンに「来んな」とか言われるのが新鮮なんですけど、意外とメンタルに響くものなんだなって。

ウイカ　今まで鍛えてなかった場所にグサグサ来るから（笑）。ほかのことに対してはプー・ルイの場合かなり鍛えられてると思うけど、そこは一度も鍛えたことがなかったと思うので。BILLIE IDLEにとっても新しい席を作ってメンバーを入れるということが初めてのことだし、（モモセ、アキラ）姉妹にとっても初めての後輩になるので、グループとしてもイチから鍛えなきゃいけないですね。

変なことをやるのって今は音楽とリンクしないんだなって

──プー・ルイさんがグループの一番後輩になるんですよね。

プー・ルイ　なんかすみません。

──モモセさんはもともと旧BiSのオーディションも受けていたくらいですし、プー・ルイさんと一緒にやるのは特別な思いがありそうですね。

モモセモモ　はい。旧BiSも新BiSの活動もずっとチェックしてたので一緒に活動できてうれしいですし、まさかの展開ですよ。プー・ルイさんの声がBILLIE IDLEの曲に混ざってくるのは想像しただけで楽しみでした。何が起こっちゃうんだろうって今もドキドキしてます。

プー・ルイ　さっき話に挙がった下北沢SHELTERでのBILLIE IDLEのステージに立つにあたって、1カ月間みっちり練習したんです。それがあったのですごくすんなり入れました。今にして思えば、そうやって一緒にやったこともNIGOさんの作戦だったのかなって（笑）。

──そこでしっくりきちゃったんでしょうね。

プー・ルイ　言ってました。その段階ではまだアリかナシか迷ってたんだと思います。それがライブを観てアリに転んだんでしょうね。

ウイカ　そこでBILLIE IDLEにプー・ルイのピースがカチッとハマった音がしたんだと思いますよ。

プー・ルイ　一応私なりにちゃんと考えてて「BILLIE IDLEをぶっ壊してやる」という気持ちはないです。それって発想としておかしいだろうし（笑）。BiSを再結成して思ったのは、変なことをやるのって今は音楽とリンクしないんだなってことで。旧BiSをやってた頃は時代にリンクしてたんだと思うんですよ。だからそういう変なことはYouTuberとしてやろうと思ったし、BILLIE IDLEなら私がやりたい歌を学ぶことができるじゃないかって渡辺さんに言われました。

ウイカ　ビリーってあまり大きな目標を立ててこなかったんですけど、明確な目標を立てたほうがいいんじゃないかと思い始めていた矢先に「LAST ALBUM」が発表されて。私らはめちゃめちゃ前向きになってきてたのに「LAST ALBUM」に「LAST TOUR」ですから気持ちはズーンと落ちましたよ。「終わらせる気が満々やん」なんて思ったので。でもそんなときにプー・ルイが入ってくることが決まって。私としては彼女にぶち壊してもらってもいいかなって思ったんですよ。4年間を地道にやってきて徐々にファンを増やしていったことはとても大切なんですけど、そろそろ勝負を仕掛けてもいいかなって。

プロデューサーが負けを認め、勝負をかけた

──5人になったことでBILLIE IDLEとしての大きな目標が決まったわけですね。

プー・ルイ　だけど入るって決まっていたのに渡辺さんとNIGOさんの前回のインタビューを読んで「え、どうなんの？」って思いましたけど（笑）。（参照：BILLIE IDLE「LAST ALBUM」特集　NIGO＆渡辺淳之介インタビュー｜悩めるプロデューサーが語る“NOT IDOL”の理想と現実）でもプロデューサーが負けを認めるって普通はなかなかできないですよ。アイドルのせいにせず、自分の負けを包み隠さずに伝えるNIGOさんの考え方や姿勢を改めて知ることができました。ただ、加入するうえで今より上を目指すのかどうかだけが知りたくて。自分は売れたい人だから、売れる気がないところに入ったらきっといろいろな矛盾が生じるはずだし。だからNIGOさんにそのことを聞いたんです。そうしたら「勝負をかけたいと思ってます」と返ってきて。

ウイカ　私たちも実力と人気が上がってきたけど、具体的な目標を言うメンバーも大人もいなくて。でもプー・ルイ加入が決まった段階でプールイから「NIGOさんから『武道館に行きましょうね』って言われたんだよね」って言葉が出てきて。「NIGOさんも武道館に行く気だ！」って私たちもビックリしちゃったんですよ。それがあって私たちの不安が消し飛びました。NIGOさんも私たちの気持ちと変わらなかったんだってことがわかって、うれしかったです。全然終わらせる気なんてなかったんだって。

──前回のインタビューを読んじゃうと、メンバーとしては心穏やかじゃないですよね。

ウイカ　うーん、けっこう傷付きましたよ。

ヒラノ　傷付いた。悲しかったです。

ウイカ　のんちゃんはちょっと怒ってたよね（笑）。

ヒラノ　本当に将来どうしようって思って。

プー・ルイ　のんちゃんも本来は売れたい人なのに、ちょうどその時期に将来について聞いたら「映画制作の裏方になりたい」なんて言いだしたので、こりゃあヤバいなって（笑）。

ウイカ　一瞬ですけど、見放された気持ちになっちゃったんですよね。悲しくて悔しくもあったけど実はそれはフェイクで、本当はメラメラと燃えてたんです。ただあの時点の結論としては4人ではダメだってことだったんだろうと。「LAST ALBUM」で4人の道は終わったんだなって。記事を読んでそう思ったし、プー・ルイが入ったことはBILLIE IDLEにとっての最後の砦。これでダメだったときのことは考えられないです。