音楽ナタリー PowerPush - SUPER BEAVER×テスラは泣かない。

ビーバー×テスラ それぞれの愛

音が先か、言葉が先か

──お互いの作品についてどう思いましたか?

村上学(Vo, G / テスラは泣かない。)

村上 言ってることはすごく僕らと近いというかテーマが似ているような感じがするんだけど、こういう表現の仕方があるんだなって思いました。

柳沢 けっこう歌詞の表現の仕方って曲調によっても変わると思う。テスラの場合は、サウンドと言葉がしっかりリズムとリンクしてると思うな。

村上 俺らはオケを作って、次にメロディ、最後に歌詞を乗っけるんで、ここには3文字しか入らないとか、最後は「へ」で終わらせたいとか、規制がある状態で歌詞を作って、耳触りのいい言葉を選ぶから1センテンスで伝えられるような構成になってる。ビーバーの曲は話し言葉のような感じだよね。

柳沢 うん、ビーバーの歌詞って長いんだよね(笑)。僕はメロと歌詞を同時に作ってて、歌詞に対してメロを変えていくこともあるから1番と2番でメロが違うこともあるし。自分が歌詞を書くときって、五七五七七のリズムがハマりやすいんですよね。それを念頭に置いて、歌詞を書く時点で譜割りを決めていくんです。

村上 へえ、すごいなあ。

柳沢 キメの部分とかもちろん厳密にそのリズムにのっとっているわけじゃないけどね。でもお客さんがライブでノリやすいのはテスラだと思うんだよね。僕らの歌は言葉を覚えてないと反応しにくいっていうのがあるんで、面白い違いだと思う。

吉牟田直和(B / テスラは泣かない。)

──リズムに対する歌詞の当てはめ方だと、テスラの「Tuesday」は導入のハモリをはじめ、綿密なアンサンブルで構築されてますよね。

村上 「Tuesday」はライブで映えるパーティチューンを「ONE」に入れたくて、自分たちで作ってた自主制作盤CDの曲をリアレンジしました。耳触りのいい言葉だけを並べて作った歌です。

柳沢 ライブで聴いてて、すごい気持ちよかった。テスラの新作はこれまでの作品より“陽”の要素がすごい増えてる感じがした。コード進行の広がり方とか、リズムの組み立て方とかもそうだし、音が広がっていく感じのサビもすごいグッとくるし。

村上 僕らの音楽を聴いてくれる人たちの気持ちを明るくできる存在になれたらいいなと思うようになったのがそうなった理由かも。去年ライブを70本近くやって、フェスとかにも出て、1人でも多くのお客さんとリンクしたいって考えてたから。

左から柳沢亮太(G / SUPER BEAVER)、渋谷龍太(Vo / SUPER BEAVER)。

渋谷 テスラの曲はまず先に体が動いちゃうようなキャッチーさがあるんで、すごく親切だと思う。僕らの場合、まず言葉を聴いてもらうためにお客さんにはある程度言葉を受け入れるための姿勢を整えてもらう必要があるから、その点は不親切なんだよね。

──SUPER BEAVERの場合、その不親切だと思う部分をどうやってカバーしているんですか?

渋谷 「証明」ではヤナギにシンガロングパートを入れたいって相談してアレンジを固めていきました。一緒に歌うことで聴いてくれる人の間口を広げることにもなるし、それができる曲って自分が歌ってても楽しいから。ヤナギが生み出す言葉にビーバーは全員自信を持っているので、ヤナギの作る言葉を僕が歌って届けたいし、それをみんなで歌えたならライブはもっといいものになると思う。

アレンジの答えは歌詞の中に

──テスラは今作で大事にしたことはありますか?

村上 歌が主役になるように意識したかな。

柳沢 学くんの中で歌が主役って感覚はこれまでなかったの?

左から柳沢亮太(G / SUPER BEAVER)、吉牟田直和(B / テスラは泣かない。)、村上学(Vo, G / テスラは泣かない。)、渋谷龍太(Vo / SUPER BEAVER)。

村上 歌も楽器の1つだと思ってた。けど、以前ミトさんが「アレンジの答えはすべて歌詞の中にある」って話していたことがあって、考え方が変わった。

渋谷柳沢 おお、なるほど。

村上 例えばサウンドが優しい感じだったら一人称は「俺」よりも「僕」にしたほうが風景をイメージしやすいみたいな。

柳沢 ああ、なるほどね。うちだと藤原(“26歳”広明 / Dr)が練習中に「ちくりと」みたいな歌詞の部分で突然、ハイハットを細かく刻み出したことが昔あってさ。「それなに?」って聴いたら「“ちくりと”って感じでしょ?」みたいなことがあったわ(笑)。

村上 そういうことが風景を作って歌詞にマッチする音を作るっていうことかもね。

SUPER BEAVER(スーパービーバー)

SUPER BEAVER

2005年に東京で結成されたロックバンド。メンバーは渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原“26歳”広明(Dr)の4人。ギターロックを基調としたエモーショナルなサウンドと、メッセージ性あふれるまっすぐな歌詞を特徴とする。2009年6月にEPICレコードジャパンよりシングル「深呼吸」でメジャーデビュー。2010年10月にリリースされたミニアルバム「SUPER BEAVER」の収録曲「ささやかな」が、映画「ソラニン」のラストシーンで使用され話題を呼んだ。2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを敢行。2012年に自主レーベル「I×L×P× RECORDS」を立ち上げ、シングル「歓びの明日に」を発表した。2013年、東京・Shibuya eggmanのスタッフ・YUMAが「mini muff records」内に発足させたロックレーベル[NOiD]とタッグを組み、翌2014年2月にフルアルバム「361°」をリリースした。その後精力的にツアーや自主企画を開催し、9月にはテレビアニメ「ばらかもん」の主題歌「らしさ」を含むシングル「らしさ / わたくしごと」を発表した。同月に柳沢が緊急入院するという事態に見舞われたが、バンドはサポートメンバーを迎えライブ出演をキャンセルすることなく敢行。柳沢の退院後にアルバムの制作に入り、バンド結成10周年の節目に当たる2015年4月1日、ニューアルバム「愛する」をリリース。同月より全国ツアー「『愛する』Release Tour 2015 ~愛とラクダ、10周年ふりかけ~」を実施する。

テスラは泣かない。(テスラハナカナイ)

テスラは泣かない。

2008年5月に村上学(G, Vo)、吉牟田直和(B)を中心に結成。鹿児島を拠点に活動を続け、2010年4月に實吉祐一(Dr)、2011年10月に飯野桃子(Piano, Cho)が加入し、現在の編成に。同年11月にオーディション「RO69JACK 11/12」で入賞。ギターロックサウンドをベースに、エモーショナルなピアノリフと女性コーラスが加わった楽曲群と、叫びにも似た歌声や激しいライブパフォーマンスで着実に知名度を上げていく。2013年9月に1stミニアルバム「Anderson」を発表し、11月には初の全国ツアーを開催。このツアーの最終公演で、EMI Records(現Virgin Music)よりメジャーデビューすることを発表した。翌2014年2月に東京で初の自主企画を行い、4月にメジャーデビューシングル「Lie to myself」をリリース。同月に鹿児島・SR HALLで行ったレコ発ライブは満員御礼となった。6月にメジャー1stアルバム「TESLA doesn't know how to cry.」を発表。2015年2、3月に東京・Shibuya eggmanで自主企画「High noble MATCH! in TOKYO」を行い、3月4日に最新ミニアルバム「ONE」をリリース。4月よりリリースツアー「『ONE』release tour “国境線上で唄う”」を開催する。