足立佳奈|元気で明るいだけじゃない 新しい声で歌う私のラブソング

デビュー以来、元気な明るいキャラクターで人気を集めてきた足立佳奈。そんな彼女が最新シングル「little flower」では、そのパブリックイメージを覆すように、シリアスで凛とした歌声を聴かせたり、心の中に潜む悩みや迷いを吐き出したりと新たな一面を披露している。

今年8月のデビュー2周年を前に、彼女の中で果たしてどんな変革が起きているのか? これまでの活動を振り返ってもらいつつ、そこで生まれたさまざまな感情を赤裸々に話してもらった。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 曽我美芽

悩みとか迷いみたいなものも音楽を通してさらけ出す

──今年8月でデビューから丸2年を迎える足立さん。節目には少し早いですが、これまでを振り返ってみて何か感じることはありますか?

いろいろ慣れてきた感じがします。レコーディングとか、CDをリリースしてイベントやライブをやらせてもらったりとか、そういう活動の流れみたいなものがちょっとずつ体に染み込んできて。あと自分のキャラクターに関しては少し落ち着いてきたような気がしますね。以前の映像なんかを観ると「こんなに元気だったのか!」って感じるので(笑)。

──それは自然と訪れた変化なんですか?

そうですね。もうすぐ20歳になるので、世の中の人からどう見られたいか考えると、やっぱりちょっと落ち着いたほうがいいんじゃないかなと。これまでのように明るくて元気なイメージはもちろんあってもいいんですけど、そろそろそれだけじゃない表情を見せていけたらなって。

──その変化は楽曲にも表れていますよね。デビュー当初は元気な応援歌が多かったですけど、リリースを重ねていく中で切ないラブソングなども歌われるようになって。表現の幅がどんどん広がっています。

そうですね。最近ではより素直な曲を歌いたいとも思っているんですよ。私自身、常に笑顔で明るく過ごしているかというと決してそうではないので、ちょっと暗い感情……悩みとか迷いみたいなものも音楽を通してさらけ出す、そんな素直さが今は欲しいなと思ってます。それを手に入れることができれば、今まで以上に聴いてくださる方に寄り添うことができるんじゃないかなと。今回のシングルに入っている「私へ。」という曲は、そんな思いから作ったものなんですけど。

足立佳奈

──「私へ。」は迷いや悩みをさらけ出しつつ、前へ進む決意を歌った曲ですよね。確かに、よりリアルで人間味のある表情が見えていると思います。

応援歌ではあるけど今までとはちょっと描き方が違っているという部分で、自分としても新たな1ページが開けたような気はしています。そういう表現ができたので、今後は1曲丸々悩んで終わるっていう曲があってもいいのかなと思ったりしてるんですけど(笑)。

──最後まで救いがない曲ですか(笑)。

そうそう。カップリングとかアルバムの中の1曲としてなら、そういう一面を見せるものがあってもいいのかなって。それも含めて挑戦したいことはまだまだたくさんありますね。

恋をしたときの感情ってかわいいだけなのかな?

──ラブソングへの向き合い方に何か変化はありましたか?

ラブソングを歌うようになった当初は、恋する女の子はかわいいものなんだというイメージを持ってレコーディングに臨んでいました。でもいろんなタイプのラブソングを歌っていく中で、「恋をしたときの感情ってかわいいだけなのかな?」という疑問が湧いてきたんですよ。思いを寄せる相手に対して、真剣に、まっすぐに向き合うこともあるし、その人を誰にも取られたくないんだっていう強い感情が芽生えることもあるんじゃないかなと。なので、今回の表題曲「little flower」ではそういった部分を意識して、芯のある声で歌うようにしてみたんです。

──確かに、これまでとは歌声が全然違いますもんね。そこにも大きなトライがあったと。

はい。結果、自分にとっての新しい表現を1つ手に入れられたような気がしています。ただ、ラブソング自体に関しては正直、けっこう苦戦してるところもあるんですよ。私が作る曲は基本的に自分の実体験がもとになっているので、どうしても恋に積極的な主人公になってしまうというか(笑)。

足立佳奈

──足立さんは恋すると相手に対して積極的にアプローチしていくタイプなんですよね。

そうなんです。好きになった人に向けて曲を作って、それを歌って告白しちゃうような……どっちかっていうとそういうタイプ(笑)。だから、「ウタコク」とか「私今あなたに恋をしています」みたいなストレートに思いを伝える曲は自分らしいなとは思うんですけど。

──違ったタイプの恋の曲も歌っていきたい気持ちがあるわけですね。

はい。だって世の中には好きな気持ちを素直に伝えられない人のほうが多かったりするじゃないですか。だからそういう曲も書いていかないとなって。

──じゃあ、今後は実体験だけにこだわらず、フィクションを織り交ぜた曲を作ることがあるかもしれないと。

そうですね。最近は、気になった映画の主人公になりきってみたり、友達の話を参考にしてみたりして曲作りをすることもあって。でも、まだ難しいんですよね。AメロBメロでは素直になれない女の子の気持ちをうまく書けているのに、サビになった途端、結局「好きだー!」ってストレートに感情を吐き出しちゃったりして(笑)。

──あははは(笑)。つい積極的な足立さんが出てきてしまうと。

いかに自分を抑えるかが課題です(笑)。日々もがいてはいますけど、それがいつか形になって、自分の表現になればいいなと思いますね。