頑固で不器用なので、自分らしさは嫌でも出ちゃうと思うんですよね

──曲の制作過程について教えてください。

最初にできるのがサビのワンフレーズですね。初めはギターをかき鳴らしながらメロディを鼻歌レベルで歌いつつ、なんとなく形ができたら「ここでなんて言ってほしいんだろう」と、一番当てはまるキーワードみたいなものを作ります。そこからメロディや歌詞も含めて周りを固めていくという感じですね。あとやっぱりギタリストなのでリフにもこだわってます。たくさんストックがとってあるので、曲にあうものをアレンジして使っています。

──作詞には時間がかかるほうですか？

詞よりメロディのほうがかかりますね。長いときは2～3週間かかるときもあります。歌詞は長くても1週間くらいですかね。情景を思い浮かべたり、感情移入できたりする歌詞が作りたいので、難しい言葉をなるべく使わず、日常会話でも出てくるような馴染みやすい言葉を組み合わせて作ることを心がけています。

──ニコ動に定期的にアップされていますが、コメントは読むほうですか？

始めた頃はそれこそ1日中見てたりしたんですが、最近はそこまで見ないですね。とはいえ、聴いてくれる人がたくさんいるのはうれしいですし、「ここ、こうしたほうがいいよ」といった意見も参考にしています。バンドをやっているときは、友達だからなかなか本音を聞けなかったですが、ニコニコ動画は、知り合いとか関係なく純粋に音楽としての評価からコメントをもらえるので、自分にとっては新鮮でしたし衝撃を受けました。

──ネガティブなコメントに落ち込んだりはしない？

いや、ネガティブな意見って的を射てることが多いので、「おっしゃるとおりです」と普通に参考にさせてもらうことが多いですね。こういうのは本当にリスナー目線だから言えるところなので素直にうれしいです。これも「感謝」かなあと。

──評価を気にして、どんどん曲調を変えていくような人もいると思うんですけど。

自分はよくも悪くも不器用なんで、言われたことをそのまま反映させるみたいなテクニックを持ち合わせていないんですよ。もちろん多彩にいろんな種類の曲を作る方もいらっしゃいますし、それはすごいなあと思うんですけど、自分はやっぱり一本筋を通して、自分ならではのカラーを出していきたいと思っています。それはわかりやすいメロディと感情移入できる歌詞であり、自分が曲を作る理由でもあります。もちろんいろんな人の影響で、多少変化は出てきちゃうとは思うのですが、やっぱり頑固で不器用なので、自分らしさっていうのは嫌でも出ちゃうと思うんですよね。

ほかのボーカロイドを使うというイメージは自分の中にありませんでした

──すーぱーそに子、Mariaさん、うささん、吉川友さん、そして水樹奈々さんまで楽曲提供も多いですが、やはりミクの曲とは作り方を変えているのですか？

はい。やっぱりアーティストさんごとのイメージや世界観がありますので、それは最大限出していきたいなと思っています。逆にミクだと、特にそういうことはないので、やっぱり自分がしたいことが表に出てきます。そのウエートの置き方の違いでしょうかね。

──どちらも好きということでしょうか？

ですね。初音ミクも1人のボーカリストであり、その人のどういうものを出していくかということの違いだけだと思うので、どちらも本当に面白い作業です。むしろ自分の枠の中だけで作っていると、本当に自分の音楽しか作れなくなってしまうので、ほかの方に曲を提供すると、その方からインプットをもらうことで、アウトプットも強くなっていき自分の引き出しが増えるいいチャンスだと思っています。ただ、そんなに器用じゃないので、注文通りに作れるかどうかはまだちょっと自信がないのですが……。とはいえチャレンジに抵抗はないですし、苦手なジャンルの音楽も特にないです。

──19さんの楽曲はすべて初音ミクを使用していますが、ほかのボーカロイドに興味はないのですか？

そうですね、やっぱり初音ミクは最初に出たボーカロイドで、それにインパクトを受けて作りだしたっていうのがあるのでやはり思い入れはありますね。アルバムに関しても、今まで全部ミクの歌唱で作ってきたので、追加する曲に関してもほかのボーカロイドを使うというイメージは自分の中にありませんでした。別にほかの子が嫌いとはないのですが、必要に感じたことがないというのが正確なところでしょうか。