モーニング娘。'21・小田さくらがオーディションの“リアル”に共感、アイドルの卵たちの青春「ひかるイン・ザ・ライト!」 (2/2)

メンバーへの嫉妬と“覚醒”につながった気付き

──作中で印象に残ったシーンはありましたか?

蘭ちゃんに二次審査用のダンスを教わっていたひかるちゃんが「褒めないで」って言う場面がすごく印象的でした。私は褒められると「うれしい! やったあ」と思ってモチベーションが上がるタイプなので、そこでひかるちゃんのように言える人っているんですか?って不思議なぐらいです。ひかるちゃんはただ者じゃないなと改めて思いました。

「ひかるイン・ザ・ライト!」より。

「ひかるイン・ザ・ライト!」より。

──作中ではひかる、M・葉山と並ぶ重要人物として、先ほどから名前が上がっている蘭がいます。歌が得意という点でひかると小田さんの共通点がありましたが、読み進めるうちに、「小田さんはマインド的にはひかるよりも蘭に近いのでは?」と思う場面が多くありました。ご自身ではどう感じられましたか?

私もそう思いました! ひかるちゃんは自覚していないけど、蘭ちゃんはずっとひかるちゃんの歌を目標にしているところとか、わかるなあって。私は小さい頃から音楽に触れてきたわけではないし、センスや才能があるわけではなくて、全部後から自分で手に入れたもので今の自分があると思っているんです。才能がなかったからこそ努力しようという考えにたどり着きました。でも自分に才能があるか、努力しているかについては、結局自分の尺度でしか考えられないから、私以上にもっと努力しているアイドルの子もきっといると思います。

「ひかるイン・ザ・ライト!」より、蘭。

「ひかるイン・ザ・ライト!」より、蘭。

──二次審査のときにМ・葉山が蘭に「“自分より上手い子”を追い越したくて必死になってない?」と聞くシーンがありました。今のお話を伺っていると、小田さんにはこのシーンも共感いただけるのではないかなと思いました。

そうですね、天才って本当にいるんですよ。モーニング娘。'21だと佐藤優樹さんですね。佐藤さんは歌やダンスがうまいとか、練習するしないの次元じゃないんです。見えているものが違う、自分とは違う特別な人というか。過去にはそういう佐藤さんに嫉妬して、「私がその才能を持っていたらめちゃくちゃ練習して磨くのに、なんで練習しないんですか!」と、本人に直接言ってしまったこともありました。そのときは感情が高ぶって思わずそう言ってしまったんですが、一緒に長い時間を過ごす中で、佐藤さんは佐藤さんなりの努力を重ねているんだと理解しましたし、そうやって欲張りすぎないからこその佐藤さんなんだと、今では思っています。

──なるほど。考え方が変わったんですね。

グループ全体の話だと、2014年から2016年前半ぐらいまでの私たちって、誰よりもパフォーマンスを磨いて、誰よりも歌割りをもらうことを目標にしていて。みんなの視線がグループの内側に向いていたんです。2015年にグループにとって絶対的な存在だった鞘師里保さんが卒業されて以降、私は佐藤さんと組んでパフォーマンスすることが多かったので、当時はとにかく佐藤さんを越えられるようにと考えていました。でも2016年の秋ツアー(「モーニング娘。'16コンサートツアー秋~MY VISION~」)あたりから、メンバー全員の気持ちが自分自身やほかのメンバーからファンの方々に向くようになってきたと感じて。

──意識の変化に気付いたきっかけは?

自分たちのライブ映像を観返していて、なんかこぢんまりしてるなと思って。なんでだろうと考えたときに、みんな自分のことだけ考えていたからだって気付きました。逆に心が外側に向いているときは、みんなすごくいいパフォーマンスができているなって。それに、私は加入から約2年間道重さゆみさん(2014年にグループを卒業)とモーニング娘。で一緒に活動させてもらったんですが、道重さんはいつもステージでキラキラしていて。そうやって道重さんが見る人の目を奪っていたのは、ずっとファンの方のことを考えていたからなんだということにも気付きました。観てくださる人のためにパフォーマンスをするってアイドルにとって当然のことかもしれないんですが、私自身が本当の意味でそう考えられるようになったのは2017年ぐらいからで、その年の春ツアー(「モーニング娘。'17コンサートツアー春 ~THE INSPIRATION!~」)あたりから「小田さくらが覚醒した」と、ファンの方に言っていただけることがあります。

小田さくら

小田さくら

──ファンにもっと意識を向けることに気付いたおかげで、パフォーマンスに強さを得られたと。

はい、内側ばっかり見ないって大事なことだなと気付きました。言葉にすると当たり前のことなんですが。

──ひかると蘭はともにオーディションの中で、ライバルとの戦いや自分自身の課題などに立ち向かっていきます。信頼し合いながらも、お互いの存在が刺激になっているという2人の関係性を、小田さんはどう思われましたか?

ひかるちゃんも蘭ちゃんも、いかに自分が相手からうらやましがられているか気付いてないと思うんです。ひかるちゃんは自分がアイドル経験のある蘭ちゃんに遅れを取っていて当然だからがんばろうと思っているし、蘭ちゃんは自分がどれだけ努力していても才能があるひかるちゃんと戦わなきゃいけないことにアンフェアさを感じているように感じました。でも、信頼しているし嫉妬もしているという関係は、あるあるだなと思います。あと、先の展開はまだわかりませんが、この先オーディションが進んでいくと、どちらかが落ちてしまう可能性があるわけですよね。でも、もしそうなったときも、お互いに相手のことを清々しく応援できそうな2人だなって。こういう関係性の人たちが同じグループで活動してくれたら、絶対いいグループになると思います。

──ちなみに小田さんは以前、ブログで「アイドルが個性や音楽で評価される世の中になったら良いなぁと思います」とご自分の気持ちを書かれていたことがありましたが、ファンは小田さんのお気持ちを知れてよかったのではないかと思います。

正直な気持ちをお話すると、私の中でもあのブログは「書いてよかった」という思いと「書かなきゃよかったな……」という後悔が半々なんです。評価してくださるファンの方もいたんですが、従来のアイドルのイメージが強い方々からは「信じられない」という厳しいご意見もいただいて。でもあのブログをきっかけにファンになってくださったり、モーニング娘。を知ってくださった方もいらっしゃったりしたので、100%後悔していないのであれば、行動してよかったんだなと思っています。

──実際にアイドルとして第一線で活動している小田さんが、「アイドルとはこうあってほしい」としっかり言葉に出されたことで世の中も変わっていくでしょうし、ほかのアイドルやファンの皆さんも勇気づけられたのではと思います。そういう方々に、「ひかるイン・ザ・ライト!」で描かれている女の子たちの姿は共感を得られるのではないかと思いました。

ありがとうございます。そうなっていったらうれしいです!

小田さくら

小田さくら

譜久村聖も「読みたい!」

──ちなみに本日、「ひかるイン・ザ・ライト!」作者の松田舞先生から小田さんへの質問をお預かりしています。まず、「小田さんは13歳でデビューされましたが、普通とは違う学生生活を送るうえでつらかったことはなんですか?」。

一番は体育祭と修学旅行に出席できなかったことです。修学旅行3日間のうち、2日目にダンスレッスンが入っていたので、行きたかったけど我慢しました(笑)。当時はグループに加入したてだったので、お仕事を休むという考えがそもそもなかったんですが、やっぱりちょっとさみしかったですね。そういうふうに学校の行事に出席できないことも多々ありましたが、みんな仲良くしてくれました。どうしても学校に行けない日が続いた後に登校したら、仲のいい子たちが「さくら来られたんだ!」って喜んでくれてうれしかったですね。

──次に、「ハロー!プロジェクトの皆さんは生歌でのパフォーマンスがとても上手いと感じています。小田さんがライブの際に意識していることを教えてください」というご質問です。

声帯の使い方ですね。歌うときは腹式呼吸をしましょうとよく言われると思うんですが、腹式呼吸を意識しすぎると踊るときに声が揺れてしまうんです。オペラのような歌い方をするために腹式呼吸をするのは理解できるんですが、結局声は声帯から出るので。動きながらでもブレないように歌うには、やっぱり声帯の扱い方が重要だし、もっと勉強しないといけないと、ここ2年ぐらい考えています。息をいっぱい吐いて歌っているとどんどん声が揺れてくるので、息や声量を鍛えるのではなくて、どうしたらマイクにきれいに声が乗るかを勉強したほうがいいなって思ってます。

──なるほど。ちなみに「ひかるイン・ザ・ライト!」は小田さんご自身が共感できるポイントが多いというお話でしたが、モーニング娘。'21のメンバーにも読んでもらいたいと思いますか?

実はもうメンバーにオススメしているんですよ! 今回インタビューのお話をいただいてから、「ひかるイン・ザ・ライト!」の1巻をいただいたときにちょうど譜久村聖さんが隣にいたので、「これすごいんですよ」って(笑)。譜久村さんも、最初の1ページ目に描かれているМ・葉山さんのセリフを見ただけで「読みたい!」って言ってました。けっこういろんなメンバーに薦めているんですけど、みんな「気になる!」って言ってくれます。

小田さくら

小田さくら

小田さくら

小田さくら

──そうだったんですね、ありがとうございます! それでは最後に、このインタビューを読むファンの皆さんに向けてメッセージをお願いします。

私はアイドルとして正直過ぎるのかなと思うこともあるんですが、もし1つ言えることがあるとしたら、遠くない将来にアイドルという存在が、このマンガのようになる可能性もあるのかなと。そうなる日がいつになるかはわからないけど、もし私が生まれ変わった後に、「ひかるイン・ザ・ライト!」のような世界になっていたら、私はまたその世界でもアイドルになりたいです。それに、このマンガで描かれているアイドルの姿に心を打たれたら、現実の世界にもきっとそういう子がいると思うので、ぜひ見つけ出して応援してほしいなと思います!

プロフィール

小田さくら(オダサクラ)

1999年3月12日生まれ、神奈川県出身。「モーニング娘。11期メンバー『スッピン歌姫』オーディション」を経て、2012年9月14日にモーニング娘。に加入。2013年1月23日発売の52thシングル「Help me!!」でCDデビューを果たした。12月8日にはモーニング娘。’21の70thシングル「Teenage Solution / よしよししてほしいの / ビートの惑星」が発売される。