衣装をカラフルにすりゃ目立つんじゃねえか

──アンケート結果を受けて何か売れるためのアイデアは思い浮かびましたか。

ガン太　さっきのアンケートを見て思ったのは、モグライダー芝さんとかランジャタイと仲良くしとけばいいんじゃないかっていう。

新道　そこがマッハのダメなところだよね（笑）。自分が先陣切って売れようっていう姿勢がない。「俺らが売れるんだ！」っていう自信を持てばいいのに。逆に言えば、売れるかどうか左右するのはそういう心構えだけなのかもしれないよね。ほかの芸人に「ついていきたい」と思わせるような貫禄というか。

伊藤　観客に1000円あげる単独ライブは感動しましたけどね。誰もやってないことをやってて（参照：マッハスピード豪速球の単独盛況、全力で集めた68万円を笑いと一緒に観客へ）。

ガン太　でもそのライブのお客さんたちいなくなっちゃったよ。1000円だけもらって。そこから来なくなっちゃった。

国崎　ロビンフットのおぐさんとかも来てたけどすぐ使ってたからね。

ガン太　「ほな、いただくで！」ってな。

──マッハさんは、そういった大がかりな企画を常にされていますが、やはり売れるための戦略としてやってる部分が大きいんですか？

ガン太　そうですね。話題性を出そうと思って。ただしんどいんですよね。

新道　そこは楽しんでやらないと！

ガン太　楽しいけど苦しい……。

坂巻　みんなが思ってる10倍くらい苦しいと思うよ（笑）。

伊藤　「電波少年」やってたらすぐ売れるんじゃないの。

新道　マッハは毎回企画が違うから、くじみたいなもんだと思う。何か1つ当たりを引いたらテレビで注目されるかもね。あと人格も大切だと思う。それで言うとマッハはやっぱり卑屈！ こんな卑屈な人はスターにいない。郷ひろみとか矢沢永吉が「だってさー」「いやあいつらがさー」とか言わないもん（笑）。ランジャタイのほうが愛されるだけのかわいげがある気がする。

──内面はもちろんですが、見た目の華やかさとかも重要だと思いますか？

坂巻　国ちゃん（国崎）って衣装黄色いじゃん。俺はそれがいいと思う。黒と黄色ってコントラストが映えるよね。最近思うんだけど、メイプルさんとか（平野）ノラさんとか永野さんとか売れてる人はみんなカラフルなんだよ。カラフルにすりゃ目立つんじゃねえかって思う。単純に。

ガン太　なんでそれを思ってんのにお前は薄い青色とかを舞台上で着てんだよ！

坂巻　違う違う、こいつ（ガン太）がよく赤いのを着るのよ。で、俺は白いのをよく着るの。なんでかっていうと、紅白になるから。おめでたい感じがしていいかなと思って。

一同　ダサいダサい！

坂巻　いやダサいけど、実は服って大事なんじゃないかと思ってる。

新道　俺は毎回灰色を着てるから複雑だけどね……。

──佐久間さんは、アンケートで欠点のある人が売れやすいのではないかと分析していましたがそれについてはどう思いますか。

国崎　うーん、完璧な人が売れない時代なんですね。

ガン太　それで言ったら、アンケートで名前が出てたインディアンスさんとか完璧すぎる気がしますけど。

新道　だからインディアンスも今かなりグイグイきてるけど、何かしらのダメなポイントとかが見えてきたら、さらに飛躍するのかもね。

ガン太　前に自分が番組に出てるのをテレビで見たとき、しかめっ面でひどいなって思ったんですよ。態度悪く見られがちなのは明らかな欠点だなって。……これ生かせますかね？

新道　ジャンルでいうと「生意気」でしょ。

ガン太　そういうのを変に隠さないほうが好かれたりするのかな？

新道　好かれるかどうかにかかってるよね。生意気な中にもかわいげがあるかどうか。

永野やザコシショウが売れたとき、何を思った？

──自分の笑いを貫き通すのか、世間一般にわかりやすくするのか、というのは芸人さんにとって大きなテーマだと思います。個人的には「アングラのカリスマ」「孤高の天才」として同業者から絶大な支持を得ていた永野さんが急にお茶の間で受け入れらたことは驚いたのと同時に感慨深い出来事でした。永野さんのような自分の個性を貫いていた人が芸歴20年を超えて急に売れたとき、皆さんはどう思っていたのでしょうか。

ガン太　永野さんは仲いいというか、お世話になっていたので本当にうれしかったです。単独ライブとかめっちゃ観に行ってて、本当に好きだったし。

国崎　僕らにとってはそれがハリウッドザコシショウさんでしたね。「R-1ぐらんぷり」で優勝したとき、「あっ、いくんだ」って思いました。

ガン太　でも衝撃とかではなかったよね。裏でずっと評判いいのはわかってたし。

坂巻　やっとバレたかって感じ。

新道　一見するとわからないけど実はネタの細かいところを変えたり、お客さんがノリやすいようにしたり、2人とも今までと違うテンポの笑いは入れてきてるんですよ。「ネタのここは変えたくない」っていう姿勢が頑なすぎると趣味の世界になっちゃうけど、お笑いはいかに多くの人に喜んでもらうかっていう作業だから。ランジャタイは今ちょうどそのラインの上にいるのかもね。「こうすれば簡単にウケるんだけどやりたくないな」っていうのはあると思う。でもそれを敢えて入れたことがきっかけになって、今までやってた芸風自体も本当に評価されるってことは起こり得るからね。それは考えていかないとダメだと思う。

──昨年の「M-1グランプリ2016」ではランジャタイさんとマッハさんが共に準々決勝に初進出しましたよね。特にランジャタイさんの「宇宙大戦争」のネタは「今までに比べてわかりやすさが増している」といった評判をよく耳にしました。実際のところ、あのときは賞レース用にいつもより伝わりやすいネタで勝負しようという意識はあったんですか？

伊藤　いや意識せずともじゃないかな……。

国崎　2回戦の「宇宙大戦争」は割とウケやすいネタかなとは思いましたね。でも準々決勝でやったネタなんかは、今見たら「我々は何をやってるんだ？」っていう。

ガン太　「今見たら」って早くない？ まだあんまり経ってないでしょ（笑）。

国崎　でも、あとあと「何が面白いんだ？」っていうのは結構あるんですよね。自分たちの中に旬があるから。そのとき面白いのをやるっていうのを結構大事にしてます。

新道　芸術家だよね。そのときの脳が描き出すものが一番面白いっていう。

国崎　自分たちの熱量が一番大切だと思いますね。だからあまり賞レースにネタを合わせてはいないかもしれない。

新道　でも売れるためには同じ芸風の同じパターンのネタを3年くらい続けなきゃいけないっていう説もあるんですよ。オードリーのあのパターンのネタが評価されたのが、あれを作って3年目だったのかな。「この形に変えて3年くらい経つんですけど、まだやったほうがいいんですかね」ってなってるときにまさにネタ見せとかで一緒で。本当に揺らいでいたときに一気に世間にハマったんだよね。そのとき、ライブシーンではもうそのネタは食いつかれてなくて、でもテレビでは「新しい」「すごい」ってなってて。

国崎　視聴者は初見ですもんね。

新道　テレビと舞台の評価のされ方にズレがあるよね。芸人って劇場から上がってくるから、その劇場の評価を基準にするとどうしてもテレビとズレが出ちゃう。だからランジャタイの「そのときに面白いもの」っていうのはものすごく芸術的でカッコいいんだけど、ズレが出ちゃうかもしれない。テレビの世界を置いていっちゃうんだよね。そこを永野さんとかハリウッドザコシショウさんは、実は考えながらやられていたのかなって思います。