音楽ナタリー PowerPush - 米澤円
“鳥と旅するアルバム”ができるまで
「けいおん!」シリーズの平沢憂役などで知られる声優・米澤円がメジャーデビュー。過日アルバム「さえずりの夢、彩とり鳥のセカイ」をリリースした。
米澤の1stアルバム「さえずりの夢、彩とり鳥のセカイ」は“コンセプトアルバム”。ミクスチャーロックから電波曲までバリエーション豊かな楽曲群と、4編のナレーショントラックを通じて、彼女が愛して止まないと語る鳥たちとともに、自らの悩みや立ちふさがる困難を克服するストーリー仕立ての作品に仕上がっている。
これまで数多くのキャラクターソングを通じてその歌唱力に注目が集まり、多くのファンからアーティストデビューを期待されていた米澤。そんな彼女が記念すべきメジャーアーティストの第一歩としてコンセプチュアルな1枚を制作したのはなぜか。彼女の横顔を追うとともに、その真意に迫った。
取材・文 / 成松哲
声優になったのは「オタクだったから」
──米澤さんは、個人名義としては今作「さえずりの夢、彩とり鳥のセカイ」が初めての音源になるものの、2012年にはアニメ「WHITE ALBUM2」のヒロイン・小木曽雪菜名義でボーカルアルバム「WHITE ALBUM2 ORIGINAL SOUNDTRACK ~setsuna~」をリリースしています。
はい。
──で、Googleの検索窓に「米澤円」と入力すると第2検索語候補の比較的上位に「歌」という単語が表示される。つまり歌声に注目が集まっていて、実際歌がうまい。
ありがとうございます(笑)。
──なのでまずは「米澤円はなぜ歌がうまいのか」、つまり音楽歴を探らせてください。学生の頃好きだったアーティストって?
GLAYさんとかT.M.Revolutionさんが好きだったんですけど、でもCDを聴いて満足するタイプでした。ファンの方ってライブに通ったり、もっと熱心な人になると遠征したりすると思うんですけど、そういう感じではなかったですね。
──じゃあ当時は何をするのがお好きでした?
絵を描いてるのが好きでした。私、3姉妹なんですけど、絵のうまい父親の影響もあって、3人とも絵を描くのが好きで。物心ついた頃から描いていた気がしますし、描くと周りの大人がホメてくれるのがうれしかった記憶もあります。だから当時はイラストレーターになりたいなって思ってました。
──確かにブログでたまにイラストを公開していて、どれもお上手ですもんね。ただ今の米澤さんはイラストレーターではなく声優であり、ボーカリストです。お芝居の道を志した理由って?
母親が地元の大阪の劇団のために曲を書いたり、ピアノの先生なんかをやっていたりして。その関係で小さい頃からお芝居を観に行く機会が多かったんですけど、それで「あっ、演劇って面白いな」って思ったのが1つと、あとはオタクだったからっていうのが大きいですね(笑)。ゲームとかアニメ……私の場合、ゲームが先に来るんですけど、その2つがすごく好きで、中学3年生くらいの頃、急に「あっ、声優になろう!」ってひらめいて(笑)。当時、格ゲーをすごくやっていたこともあって「格ゲーに出てくるキャラクターの声をやりたいな」って考えてました。
“歌える声優”になりたかった
──お母さまの影響で音楽の道を志したりは?
小さい頃、一応ピアノはやってました。ただ、すごく不真面目な生徒で(笑)。母親に習うと絶対にケンカになるからって別のピアノ教室に通ってたんですけど、練習があんまり好きじゃなかったので、小学生のときに辞めてしまい……。母親の仕事の関係で実家に音楽室があって、一般的な楽器以外にもコンガとかボンゴとか、こうやってギーココッギーココッ回すヤツ(メタルカバサ)まで置いてあったのでほかにもいろいろ楽器はやってみたんですけどね。ギターをやってみたり、ドラムをやってみたりとか……。
──ところが残念ながらお母さまの血は……。
受け継いでなかったみたいです(笑)。ただ歌を歌うのはすごく好きで練習するのも楽しかったですね。だから続いたのはホントに歌だけなんです。
──あっ、歌のトレーニングも受けてたんですか?
歌える声優、ボーカリストではなく、声優として歌える人になりたいと思っていたので、声優の専門学校に通い始めた頃から、ボーカルレッスンを受けてました。専門学校には歌のレッスンもあったので、その先生が個人的に開いている教室に通って。
──“歌える声優”になりたかったのってなぜなんでしょう?
林原めぐみさんとか堀江由衣さんとか、歌の活動も活発になさっていた方に憧れていたからですね。あと、いろいろやってみたいっていう気持ちがあって。声優のお仕事の中にはいろいろカテゴリがあるんですよ。テレビ番組のナレーションみたいなお仕事もあれば、CMのキャッチフレーズを読むお仕事もあるし……。
──同じ“芝居”でも、洋画や海外ドラマに声をあてるのと、アニメやゲームに声をあてるのとでは、またアプローチが違うんでしょうしね。
そうなんですよ。そのほかにも自分で劇団を作って舞台をやる方もいるし、音楽活動をなさる方もいますし。私自身、ゲームやアニメが好きでこの世界に入ったんですけど、ちょっと欲深かったというか(笑)。せっかく声優さんになるなら、そういう方もいることだし、お芝居だけじゃなくていろんなことをやってみたかったんです。
──もともと表現欲求の強いタイプでした?
引っ込み思案なんだけど、目立ちたいし、表現欲求も強い面倒くさい性格だったんだと思います(笑)。私自身はまったく記憶にないんですけど、本当に小さかった頃、知り合いの披露宴で母親がピアノを弾いていたら、急に前に出て行ってその隣で踊ったりしていたらしいので(笑)。あと母親をずっと見ていたから自分も表現してみようって思ったのかもしれないですね。「お母さんは音楽っていう自分の好きなことを仕事にして、いつも楽しそうに暮らしてるなあ」って思ってましたから(笑)。それで私も毎日ドキドキできる仕事をしたいなあって思うようになったんじゃないのかなあ。
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- 1stアルバム「さえずりの夢、彩とり鳥のセカイ」 / 2014年8月6日発売 / Victor Entertainment
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3240円 / VIZL-648 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 2700円 / VICL-64131 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- -再会-(instrumental)
- キミと世界エレジー
- あしたのしおり
- 忘想花
- -昨日-(instrumental)
- コロコロココロ
- 擬態スマイル
- コスモダウト
- -胸懐-(instrumental)
- 煉獄スカーレット
- LINKS
- ハートフル・ドリーマー
- -最初-(instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
- キミと世界エレジー Music Video
- スペシャルメイキングムービー
- お茶会ムービー(with 伊東久美子, 平野妹)
米澤円(ヨネザワマドカ)
大阪府生まれの声優、ボーカリスト。2005年に声優デビューをし、2009年にはテレビアニメ「けいおん!」シリーズの平沢憂役で注目を集め、以来アニメ「Another」の赤沢泉美役、「WHITE ALBUM2」の小木曽雪菜役、「RDGレッドデータガール」の宗田真響役、「ステラ女学院高等科C3部」日向八千代役などを務める。またその一方で声優ライブイベント・Venus Voice GIGを主催するなど、音楽活動も活発に展開。「けいおん!」では平沢憂名義でキャラクターソングを発表し、2014年には「WHITE ALBUM2」の小木曽雪菜名義で、TVアニメ内のボーカル曲を集めた「WHITE ALBUM2 VOCAL COLLECTION」を発表している。そして2014年8月、米澤円名義のコンセプトアルバム「さえずりの夢、彩とり鳥のセカイ」でメジャーデビュー。