音楽ナタリー Power Push - 矢井田瞳

音楽の本当の楽しさはライブにある

矢井田瞳のライブBlu-ray「矢井田瞳 LIVE TOUR "15" COMPLETE EDITION -the 15th anniversary-」がリリースされた。

昨年の11、12月に開催された「LIVE TOUR "15"」のうち、12月12日の東京・赤坂BLITZ公演の模様をノーカットで収録した本作。メジャーデビュー曲「B’coz I Love You」をはじめ、キャリアの中で生まれた代表曲が次々と披露されていくステージは、まさに輝かしい15周年の集大成と呼ぶにふさわしい内容となっている。また特典として最新アルバム「TIME CLIP」の全収録曲をライブバージョンで収録したCDも同梱。こちらの音源は「LIVE TOUR 2016『TIME CLIP』」より5月2日に東京・Zepp DiverCity TOKYO公演で録音されたものとなっている。

音楽ナタリーでは本作の発売を記念して矢井田にインタビューを実施。本作の観どころのほか、彼女のライブへのこだわりや12月にスタートする2度目の弾き語りツアー「ヤイダヒトリ」のことなど、多岐にわたって話を聞いた。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 吉場正和

お客さんとして行ってみたいライブ

──矢井田さんはご自身のブログで今回のライブBlu-rayの感想として、「『私このライブ行きたい!』って純粋に思えたの!」とつづっていましたね。

矢井田瞳(photo by sencame)

はい。いつもは映像を通してライブでの自分の姿を観るのがすごく恥ずかしいんですよ。だから映像作品を作る際に、映像的な部分のチェックをするのがあんまり得意じゃないんですけど、今回の作品はすごく楽しく観れたんですよね。お客さんとして行ってみたいライブだなと思えたし、お客さんとしてあの会場に行ったような気持ちにもなれました。きっと映像の中で動く自分を受け入れる器ができたんだと思う。それは諦めと言えるかもしれないですけど。あははは(笑)。

──いやいや(笑)。

でもね、今回の作品は映像が純粋にすごくいいんですよ。私の音楽を理解してくださっている方が撮影した映像なので、私自身も自然と入り込むことができたんだと思います。

──映像の中の矢井田さんもものすごく楽しそうですもんね。

そうでしたね! ステージに上がる前は「あー今日は収録のカメラがたくさん入る日だな……」って意識してたんですけど、実際にライブが始まっちゃうとそんなことは忘れて、とにかく楽しんでました。バンドメンバーも含め、あの日のありのままの私たちの姿が全部Blu-rayに収まっています。

ライブはカラオケでもないし、発表会でもない

──セットリストにはかなりこだわったようで。

15周年の集大成的なセットリストにしたかったので、お客さんが求めてくれるものと私が今表現したいものを両立した内容にしました。まあでも基本的には、ただただお客さんと楽しい夜を作れるようにっていうことだけを考えていたので、やる側としても楽しかったんですよね(笑)。

──今回の作品を観ていて改めて思ったのは、矢井田さんはすごくロックな人なんだなっていうことでした。そういう部分が伝わってくるセットリストだったようにも思います。

それはうれしいですね! 私はわりとジャンルにこだわらないタイプなんですけど、たった1つだけ言えることがあって。それは“ライブはライブであってほしい”ってことなんです。ライブはカラオケでもないし、発表会でもない。その日にしかできないステージをバンドメンバーとの信頼関係の中で作っていくものだと私は思うんですよね。だからこそ毎回、自分と、音楽と闘わなければいけない。そういった思いを持ちながら瞬間瞬間で音のキャッチボールをしていく様を今回の作品にはちゃんと収めることができたと思うので、そこをロックだと感じていただけたんじゃないかなって思います。

──ライブでは基本的にギターを弾きながら歌われていますけど、曲によってはギターを持たずにハンドマイクを使っている場面もありますよね。

自分としてはね、ハンドマイクだとだいぶ手持ち無沙汰なんですけど(笑)。

──ギター弾く方はだいたいそうおっしゃいますよね。「落ち着かない」みたいな。

例えばキーボーディストのアレンジャーさんと作った過去の曲の中には、1小節の中で細かくコードチェンジしていくものがあったりして。分数コードがたくさん出てくる、みたいな曲に関しては自分でギターを弾かないほうが楽だったりするんですよ(笑)。

──なるほど。そういうテクニカルな曲に関しては割り切って、ハンドマイクで動き回る曲にしてしまえばいいわけですもんね。パフォーマンス面でのメリハリにもなるし。

ハンドマイクだとステージのサイドまで動いて煽ることができるよさもありますからね。そういう役割の曲として割り振ってるところはあります。

──矢井田さんのボーカルの安定感にも驚かされました。ライブならではの高揚感はもちろんありますけど、ピッチや声量はまったくブレてないですよね。

私のライブはドラムとベースがぐいぐい出ることでグルーヴを作っていくスタイルなので、会場によってはピッチが取りにくいときもあるんですよ。このBlu-rayに収録されている日も、実はけっこうピッチが取りにくかったんですよね。

──まったくそうは感じさせないですけどね。喉の強さ的な部分はどうですか? 15年の中で強くなった自覚はあります?

確かにツブれにくくはなりました。それは活動を続ける中で、楽な呼吸法で歌う技術を身に付けたからだと思います。私はよくシンガーの先輩方に歌い方のコツを聞くんですけど、皆さん「脱力が大切」っておっしゃるんですよ。だからなるべく脱力して、家で歌っているようなナチュラルさを意識するようになってからはだいぶ喉がツブれなくなったんですよね。

──ステージ上で脱力するのは難しいと思いますが。

そうなんですよ。「ナチュラルに歌おう」って思ってる時点でナチュラルじゃないですから(笑)。そういう難しさは確かに今もありますね。

ライブBlu-ray「矢井田瞳 LIVE TOUR "15" COMPLETE EDITION -the 15th anniversary-」
「矢井田瞳 LIVE TOUR "15" COMPLETE EDITION -the 15th anniversary-」
[Blu-ray+CD] 2016年12月2日発売 / 6480円 / ヤマハミュージックコミュニケーションズ / YCXW-10011/B
Blu-ray収録内容
  1. 地下室の渦
  2. 馬と人参
  3. 未完成のメロディ
  4. My Sweet Darlin'
  5. 世界と私の間
  6. 明日からの手紙
  7. 雨と嘘
  8. B'coz I Love You
  9. もぎたての憂鬱
  10. Buzzstyle
  11. 君こそ道しるべ
  12. SEKIRARA
  13. GIRLS MAGIC
  14. アンダンテ
  15. Go my way
  16. 地平線と君と僕
  17. YOUR SONG
  18. 一人ジェンガ
  19. 恋バス
  20. ネバーランド行き
  21. MOON
CD収録曲

「All Songs of "TIME CLIP" from Zepp DiverCity 2016.05.02 - LIVE TOUR 2016『TIME CLIP』-」

  1. machine
  2. WAVE
  3. 幸せ呼ぶメロディ
  4. SEKIRARA
  5. YOUR SONG
  6. It's Time
  7. 東京タワーと蟻
  8. 世界と私の間
  9. MOON
  10. Circle
ライブ情報
矢井田瞳 弾き語りTOUR 16/17 ~ヤイダヒトリ~
  • 2016年12月3日(土)東京都 日本橋三井ホール
  • 2016年12月11日(日)愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2016年12月18日(日)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
  • 2016年12月23日(金・祝)石川県 金沢21世紀美術館シアター21
  • 2017年1月8日(日)岡山県 YEBISU YA PRO
  • 2017年1月9日(月・祝)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2017年1月14日(土)長崎県 DRUM Be-7
  • 2017年1月15日(日)福岡県 Gate's 7
  • 2017年1月22日(日)北海道 cube garden
  • 2017年1月28日(土)香川県 DIME
  • 2017年1月29日(日)愛媛県 松山キティホール
  • 2017年2月18日(土)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2017年2月19日(日)福島県 いわき PIT
  • 2017年2月25日(土)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2017年3月20日(月・祝)神奈川県 Yokohama O-SITE
  • 2017年3月26日(日)大阪府 サンケイホールブリーゼ
矢井田瞳(ヤイダヒトミ)
矢井田瞳

1978年大阪生まれ。19歳でギターを始め、同時に作曲活動も開始する。デモテープ作りを繰り返す中、2000年5月にシングル「Howling」をインディーズからリリース。同年7月にはシングル「B'coz I Love You」でメジャーデビューを果たす。結婚と産休を経て、2010年に所属事務所をヤマハミュージックアーティストへ移籍し活動を再開。2011年にアルバム「VIVID MOMENTS」を発表した。デビュー15周年を迎えた2015年には、弾き語りツアー「矢井田瞳 弾き語りTOUR2015~ヤイダヒトリ~」や、バンド編成でのツアー「矢井田瞳 LIVE TOUR "15"」を開催。2016年12月には「矢井田瞳 LIVE TOUR "15"」ツアーのうち東京・赤坂BLITZ公演の模様を収めたライブBlu-ray「矢井田瞳 LIVE TOUR "15" COMPLETE EDITION -the 15th anniversary-」をリリースした。