「Fight」や「We can do it」はキャラじゃない

──4人でのレコーディングは順調でしたか？

もちろん。レコーディングメンバーは俺にとって兄貴みたいな人たちなので、なんだかバンドのレコーディングをしているみたいな感覚でした。みんなそれぞれが担当の楽器においては天才だから、イメージだけを伝えてあとはお任せ。どうしてもこだわりたいところについてはリクエストを入れましたけど、基本的にはその人のセンスを信じました。でも今回のレコーディングで改めて気付いたこともあったんですよ。

──それはどういうことですか？

「ツベルクリン」のときみたいに自分でギターやベース、ドラムをやる必要はないということ。僕は自分の気持ちを言葉にして、人に伝わるものを作らなくちゃいけないのに、ほかのことをやっていたらその極みにたどり着けないから。今回は頼れる兄貴たちがレコーディングに参加してくれたことで、もっと歌詞と向き合うことができました。

──そうやってビッケさんがじっくりと書いた今回の歌詞は、応援歌っぽいというか、背中を押してくれるものが多いなと思いました。

ふふふ（笑）。伝わったみたいでうれしいです。「ツベルクリン」のときは自分のネガティブな出来事と正面切って向き合って歌うというところでストップしてたんです。今度はその1つ先。つらい過去を清算して幸せに生きようぜっていう気持ちを歌にしています。「こんなに情けないやつもいるから、あなたが思っていることは大したことないよ。人生は最高だ！」っていう見せ方なんですけど。

──それはタイトルの「GOOD LUCK」にも込められていますよね。「幸運を祈って」や「がんばって」を意味する言葉ですから。

一見「GOOD LUCK」ってポジティブな言葉なんですけど、出発するときとか別れの瞬間に発する言葉じゃないですか。別れという寂しい、ネガティブな出来事と、「がんばってね」っていうポジティブなメッセージとの共存が自分の作る歌詞の世界観と近かったんですよ。ビッケブランカは「Fight」や「Let's Go」、「We can do it」とかはキャラじゃない。僕はみんなを「GOOD LUCK」と送り出すことしかできなかったんです。

バスが通りすぎてしまっても人生は最高だ

──話は変わりますが、3月にパリに行っていたそうですね。 Twitterでは「パリでしか書けない歌詞を書く」と書いていましたが、今回のアルバムにその歌詞の曲は入ってるんですか？

「Wednesday」がそうですね。

──どんなことを歌詞にしたんですか？

世の中にこんなにいろんなものがあるんだったら、僕はもっとやれることがあるなっていう気持ちを「Wednesday」では歌っています。パリに10日間滞在してみて俺ってちっぽけだなあって、よく海外旅行に行った人が思う感想を抱いて帰ってきましたね（笑）。

──そうなんですね。あとこのアルバムのリード曲「ファビュラス」についてもお話を聞きたくて。ほかの曲に比べてダントツで前向きな曲ですよね。

そうなんです。この歌はたった一度の奇跡で、今までのネガティブな自分がいなくなってしまったということを歌ってるんです。でもバスが行っちゃったことは事実で。

──それでも“ファビュラス”（＝最高）なんですよね。

そう。歌詞を書いたあとに、最高の状態でもちょっと寂しい思いをするのが僕なんだよなって思いましたね。

ライブのために作ったアルバムをライブで越えたい

──アルバムリリース後、すぐにワンマンツアーが始まります。

ツアーではこのアルバムの集大成を見せられると思いますよ。「GOOD LUCK」をこの音で作った意味がそこにあるから、そこでアルバムが完結すると言っても過言じゃない。1本1本大切にやっていきたいですね。

──レコーディングメンバーと一緒に回るツアーなので、アルバムの空気感がそのまま伝わるものになりそうですね。

そうですね。でもライブではCDにはない、生の迫力だったり、勢いだったりを感じてほしい。気持ちを込めて精一杯「GOOD LUCK」を伝えたいです。