ナタリー PowerPush - 上坂すみれ
「七つの海よりキミの海」に見る すみぺの闘争と革命の日々
桃井はるこに出会い、声優に転身
──その一方で大学入学後の2011年に声優としてのキャリアもスタートさせてますよね。
でも小学生の頃に今の事務所にスカウトされて、ジュニアのセクションに入っていたんです。学業優先だったのでたくさんお仕事はやっていないんですけど、CM出演や広告モデルを少しさせていただいてました。
──自分のペースでジュニアモデルの仕事をしつつ、しかも大学にも進学しているのになぜ役者に転身を?
さっきお話した通り、ずっとアニメが好きだったので。中学生の頃「ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて」っていうアニメのヒロイン役を桃井はるこさんがやってらっしゃるのを観て「声優さんってすごい!」「夢の住人だ!」「二次元ってホントにいいな!」って憧れて。
──「小麦ちゃん」ってモナーのような2ちゃんねる発のキャラクターが登場したり、セリフの中に2ちゃんねる用語が出てきたりしましたしね。ヘビーネットユーザーの上坂さんにはドンピシャの作品だった、と。
ですね(笑)。そのときの気持ちが心の芯みたいなところにずっとあったので、一昨年声優のセクションに異動して、今のお仕事をさせてもらうようになりました。
ザ・スターリンは名前買い
──「七つの海よりキミの海」って、これまで伺ってきた上坂さんのバックグラウンドがモロに反映された楽曲ですよね。
4分間、頭の中を支配されるようなすごい曲ですよねえ……。
──あれっ!? 他人事っぽい。「プロデュースした」とまでは言わないものの、上坂さんもサウンドメイキングにタッチしているんだと思ってました。「でなきゃこんなアクの強い曲できないだろ」って(笑)。
あはははは(笑)。プロデューサーさんとの最初の打ち合わせのときに「普段はこういう曲を聴いています」っていうお話はさせていただいたんですけど「こういう曲にしてください」っていうリクエストは特にしてないです。
──その「普段はこういう曲を聴いています」リストって再現できます?
そのときはiPodを見ながらお話したので、ちょっとあやふやなんですけど、筋少とか、戸川さんとか、YMOとか、テクノ歌謡とか、軍歌とかがまずあって。あとはザ・スターリンとか……。
──これまたなかなかパンチの効いたお名前を(笑)。
その“お名前”がカッコよすぎて買ってみたら、曲もカッコよくて!
──あっ、そうか! 上坂さんにとってザ・スターリンってジャケ買いならぬ、名前買いの対象なのか。「ライブ中、ブタの内臓をフロアにぶちまけた」とか、そういう伝説をきっかけに聴き始めた人は多いと思うんだけど……。
完全に名前買いでしたね。ジャケットにカタカナで「ザ・スターリン」って書いてあるし、実際にスターリンの顔が載っていたので「何っ!? スターリンですって!」「こんな名前を付けるなんて、この人たちはきっと天才に違いない!」って(笑)。で、歌詞とサウンドはジャケット以上にパンチがあるじゃないですか。「ソーセージの目玉」とか、もうホントに大好きです! 2月の決起集会でサイレンを鳴らしたのも「死んだものほど愛してやるさ」を聴いて参考にしましたから。
中野のレコード店「メカノさん」
──そのほかにプロデューサーさんに伝えたアーティストって?
中森明菜さんとか、中山美穂さんとか、ザ・ピーナッツとか、ピンク・レディーとか、ハナ肇とクレージーキャッツとか、ゆらゆら帝国とか……。あとなんだったかなあ。
──アーバンギャルドは? というのも上坂さんの名前が初めてナタリーに登場したのは2012年10月、アーバンギャルドのアルバム「ガイガーカウンターカルチャー」発売時の推薦コメントなんですよ。
アーバンギャルド、大好きです! 知ったのはわりと最近で「修正主義者」のPVを観たからだったと思うんですけど、その頃ちょうど立ち寄ったメカノさんに置いてあって。
──「メカノさん」って中野ブロードウェイにある、テクノ、ニューウェイブに強いレコード屋のメカノですよね。なんでお店に「さん」付けなんですか?(笑)
確かになんで「メカノさん」なんだろう?(笑) ただ、店長さんはレコードのライナーノーツをいっぱい書いてらっしゃるし、お店には平沢進さんやKRAFTWERKやナゴム系のレコードがいっぱい置いてあるし、やっぱり敬意を払わざるを得ないところがありますよね。FOETUSとか知らなかった音楽をいっぱい教えてくださったのもメカノさんですから。
──ノイズ、インダストリアルにまで食指を伸ばしてましたか。そしてそういうラインナップをプロデューサーさん経由で作曲家の神前(暁)さんに伝えると「七つの海よりキミの海」が……。
できあがるようですねえ。1回聴いただけじゃちょっと整理しきれないほどの情報量の楽曲というか。最初歌詞の入っていないバージョンを聴いたんですけど、ベース1本で曲が始まり、昭和歌謡っぽくなったかと思ったら、メタルになって。
──ロシア民謡の「コロブチカ」、要は「テトリス」のBGMも引用されていたりして。
そうなんですよ! だから皆さんにも「あっ、このフレーズ聴いたことがある!」「ロシアだ!」って思っていただけるとうれしいですよね。ただ私自身、曲をいただいたときは、その展開に圧倒されちゃって。さらに畑さん独特のとんでもない感じの詞が加わってきたので「私、本当に歌えるのかな?」と最初は不安になりました。
──ところがこのシングルに収められているトラックしかり、2月のイベント「上坂すみれプロジェクト 始動!! ~決起集会 vol.0~」のときしかり、楽曲を完全に自分のものにしているというか、堂々と歌いきっていますよね。
でも細かいニュアンスなんかは基本的にはレコーディング現場で指示をいただきながら付けていきました。キャラクターソングは何度か歌わせていただいているんですけど、自分名義で歌うことはなかったから、とりあえず事前には何も考えないことにしたんです(笑)。「構成や世界観が似ているかも」と思って、ALI PROJECTとかSound Horizonとか東方Projectの関連楽曲なんかを聴き直したりはしたんですけど、とりあえず何も考えなくても歌えるようになるまでというか「これならちゃんとデビューできるかもしれない」と思えるくらい練習はしておこう、そしてあとはスタッフの皆さんにお任せしようと最終的に落ち着いて。そっちのほうがいいものができるに決まってますから。
- 1stシングル「七つの海よりキミの海」 / 2013年4月24日発売 / STARCHILD
- 「初回限定盤」[CD+DVD] / 1700円 / KICM-91447
- 「期間限定アニメ盤」[CD] / 1500円 / KICM-91448
- 「通常盤」[CD+DVD] / 1200円 / KICM-1449
初回限定盤 CD収録曲
- 七つの海よりキミの海
- 我旗の元へと集いたまえ
- 七つの海よりキミの海(off vocal ver.)
期間限定アニメ盤 CD収録曲
- 七つの海よりキミの海
- 我旗の元へと集いたまえ
- 七つの海よりキミの海(off vocal ver.)
- 七つの海よりキミの海(TV size mix)
通常盤 CD収録曲
- 七つの海よりキミの海
- 我旗の元へと集いたまえ
- 我らと我らの道を
- 七つの海よりキミの海(off vocal ver.)
初回限定盤 DVD収録内容
- 「七つの海よりキミの海」PV
上坂すみれ(うえさかすみれ)
ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊した1991年生まれの声優。小学生時代よりジュニアモデルとして活動。2012年テレビアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役で本格的に声優デビューし、同年「中二病でも恋がしたい!」や「ガールズ&パンツァー」など注目作に立て続けに出演する。その一方でラジオ、イベント、アニメ誌、カルチャー誌などを通じて、無類のロリータファッションマニア、ソ連・ロシアマニア、ミリタリーマニア、音楽マニアであることがファンの知るところに。2013年4月、その趣味の世界をダイレクトに反映したシングル「七つの海よりキミの海」でアーティストデビュー。