ナタリー PowerPush - つばき
バンド結成10周年! 新作「夜更けの太陽」堂々完成
流されずにつばきだけの音を鳴らせればいい
──10周年っていうのは、ニューアルバムの制作においては意識しましたか?
一色 まあ、基本的にはないんですけどね、でも、間接的には影響してるんじゃないかなと思ってて。それは、去年事務所を辞めて、自分たちでほんと初期みたいに動かすことになって、そのときの気持ちが曲に対する考え方にも影響して、より自分たちのいいところを素直に出したアルバムになりましたね。
──確かに、みんな好きなことをのびのびとやってる感はありますね。
一色 そうですね。やっぱり昔は前作よりももっといろんな人に聴いてもらわなきゃいけない、売れなきゃいけないっていうのがあったので。でもバンドを続けていくってことを大前提で考えたときに、20年とか続けている先輩方のバンドを見てても、今が一番カッコ良かったりいい曲を作ったりしてて、すごいと思って。それって流行りとかに流されないで、自分たちにできる一番カッコいいことをしてるからだよなって思って。だから自分たちもまだまだ足元にも及ばないですけど、そういうふうに、流されずにつばきだけの音を鳴らせればいいと思って。今回のアルバムもそういう気持ちで、素直に自分たちが今できる一番カッコいい音を鳴らそうと思って作りました。若い頃はどうしても「こういうふうに見られたい」という気持ちがあって、例えば自分のキラキラした部分や可愛い部分は嫌だと思ったし。でも今は、そういうのも素直に出せるようになったなって。カッコつけないわけじゃないけど、もっとシンプルにカッコつけたいと思うんですよね。
──大人になりましたね(笑)。
一色 お、そうですか。やっぱ、30歳になったからですか(笑)。
──(笑)。今の一色くんの話を聞いて、2人もそう思います?
小川 そうですね。レコーディングでもっとカッコいいアレンジを、ライブでももっとカッコいいパフォーマンスを、って気負ってた部分も当時はあって。でも今はようやく経験が自分の体に染みついて、自然な自分が出せるようになりましたね。これがまた20周年になりましたってときには、もっといい感じで出せてると思います。続けるって大事だなって。諸先輩方のような、フラカンとかもそうですけど、ああいう形でバンドを続けられるのは理想というか、倣っていきたいですね。
岡本 今までがあったからこそ、肩の力が抜けて感情を出せるようになったっていうか。特にライブとかの瞬間に、感情とプレイがストレートに直結するようになったかなって。
音を鳴らすだけじゃなくて違うことをしてもいいと思う
──さっきから諸先輩方っていう発言が出てきてますけど、そういったことを意識するきっかけが何かあったんですか?
一色 やっぱそれは、自分たちで(バンドの運営を)やるようになったからかな。もっといろんな可能性を、活動に関しても考えるようになって。もっとつばきってバンドで、音を鳴らすだけじゃなくて違うことをしてもいいと思うし。ライブハウス作ったり店やったり。明確には見えてないですけど(笑)できたらいいなと思いますね、面白いことが。表現する場所がいっぱいあったらいいなって。それが直接的に音楽にリンクするかどうかはわからないですけど、結成したときに他にないバンドになりたいと思ってたし、これからも周りとかに流されずに、自分たちがカッコいいと思うものを出していければいいと思う。
──お話を聞いてると、今回のレコーディングはスムーズだったんじゃないのかなと思えるんですが。
一色 そうですね。あんまり時間がなかったっていうのもありましたし、基本、レコーディングはレーベルからもバンドにおまかせみたいな感じだったんで、ディレクションも自分でやったし、エンジニアも友達に頼んでさくさくできましたね。
──そういうやり方は初めてですか?
一色 まあ(事務所に所属してるときの)後半も基本そうでしたけど、PC上で作れるようになったのも早いですよね。家で録ったやつを本チャンのレコーディングで使ったりしたんでスムーズでしたよ。
──テーマを掲げずとも、曲のネタもスムーズに出てきた感じですか?
一色 歌詞に関しては、自分の気持ちがより伝わればいいなって。だからほんとシンプルに背伸びがない感じで。曲に関しては自分の中にあるものを出そうかなと。流行ってるものや背伸びしてカッコいいものをやるんじゃなくて、どこかしら影響はあると思うんですけど、それよりも歌っていうものに焦点を当てて作りました。
──でも、バリエーションは豊富ですよね。
一色 それも家で作業をできるようになったのがデカいですね。試す時間がたくさんあるし。昔なら打ち込みのものをやろうと思っても、誰かに入ってもらって時間もかかってましたから。
──あと、感情が解き放たれてる感じもするんですけど、それもバンドがいい状況だからなのかなあって。
一色 そうですね。無理して書くのはやめようと思ってましたし。明るい曲ばっかりっていうのももちろん違うとは思ってたんですけど、昔だったらキラキラした感じとかは、ちょっとヤだなって思ってたんですけど、今はそこも自分の魅力のひとつだと思ってるから。
──確かに「バス停前」みたいな曲は今だからできるような気もしますね。
一色 そうですね。歌い方とかサビも淡々としてて、そういうのも今だからできると思いますね。
──かと思えば「いたい」みたいに、ライブバンドらしい激しい曲もあって。
一色 確かに、聴いてみるといろいろ入ってると思います。
──「いたい」では資料に岡本さんはイントロへのこだわりを書いてましたけど。
岡本 出だし命だなって思って(笑)。私の中のイチ押しはイントロ(笑)。だからレコーディングはここがカッコよく録れれば、他はその流れでいけると思ったんです。
つばき
一色徳保(Vo,G)、小川博永(B)、岡本奈穂子(Dr)の3名からなるロックバンド。2000年のバンド結成以降インディーズで多くの作品を発表し、2005年2月にシングル「昨日の風」でメジャーデビュー。内省的な歌詞とストレートなロックサウンドが高い評価を受ける。メジャー契約終了後も精力的なライブ活動を続け、コンスタントにアルバムを発表。2010年は結成10周年を記念し、毎月10日に「つばき10th Anniversary "正夢になった夜"」を開催中。2010年8月には通算6枚目となるオリジナルフルアルバム「夜更けの太陽」をリリース。