ナタリー PowerPush - つばき
バンド結成10周年! 新作「夜更けの太陽」堂々完成
一番ダメだったときのことも糧になってる
──小川くんはインタールード的な存在の「雨に涙目」について書いていて。確かにこの曲はベースが際立ってますね。
小川 まあ、いわゆる歌モノじゃないんで、プレイヤーとして自由にやって、ほんとにセッションして作ったような曲なんで面白かったですね。
──こういう曲を入れた意図というのは?
一色 同期ものを使って、次の曲に入れればいいかなと思って、最後のほうに作ったんです。あんまり長すぎるアルバムじゃないほうがいいかなって。1曲1曲に力があるし、集中して聴けるんで。
──また、ラストの「僕だけの季節」の歌詞は素晴らしいですね。
一色 このアルバムは、とにかく自分を素直に出して伝えられればいいと思ったんで、これでも一部だけど、自分はこういう人間なんだってわかるような歌詞がいいと思って書きました。
──自己肯定みたいな意味合いを感じたんですけど。
一色 あるようなないような(笑)。でももちろん肯定してますけどね。今までやってきたこととか一番ダメだったときのこととかも糧になってると思ってますし。
ポジティブな言葉を歌えるようになってきた
──初期の歌詞の世界観と比較すると、とてもたくましくなったなあと感じます。
一色 30歳ですからね! ……また言っちゃった(笑)。ライブ中に何回も言うと岡本さんに怒られるんですよ(笑)。
岡本 ボーカリストとの見え方としてどうなのかなと(笑)。
一色 悪いね、気を使わせて(笑)。でもこういうことを胸を張って歌えるようになったかなと思いますけどね。素直でポジティブな言葉を歌うのは難しいなあってずっと思ってて……世の中にそういう歌があふれてるからかもしれないですけど。でもいつか胸を張って歌えるようになれればいいなあと思ってて、ちょっとずつだけどそれができてる気がしますね。
──また「夜更けの太陽」ってアルバムタイトルも興味深いですね。夜更けに太陽は普通見えないから。
一色 曲のタイトルからポイントの言葉を書き出して、これかなと思って組み合わせたんですけど。要は簡単に言うと……みんな勝手にイメージしてもらっていいんですけど、どんなに真っ暗闇だと思っても、どっかに光はあるんじゃないかなって。それは大切な人であってもいいし、その人にとってこのアルバムがそういう存在になればいいとも思うし。
──あとアルバムを通して聴いていると1曲目が「太陽」で、その後の曲で日常が描かれていって、8曲目が「夜更けの旋律」、9曲目が「夜が明けるまで」っていうふうに、1日が1周するようになってると思ったんですよね。
一色 ……気付きました?
小川 たまたま?(笑)
一色 いやいや、めちゃめちゃ考えてたよ! 超狙ってたよ(笑)。
──ほんとに?(笑)
一色 (笑)後半は考えましたけどね。「太陽」はライブでもやってたから、1曲目はこれがいいと思って。アルバムのキーになる曲だと思うし。
──この曲、いきなり歌だからドキっとしますよ。
一色 意外と難しかったですけどね、アルバムって頭に何かつけたりするでしょ。そういうのが自分の概念にあったりするので、歌始まりでいいのかな? って思いましたけどね。でも今は逆にすごくいいなと思ってますね。
──10周年企画は、まだまだ続きますか?
一色 年内は続きますね。楽しいですよ。今までなかなかやれなかったバンドともやれるようになって。
──一色くんは1人で弾き語りでも結構ライブをやってますよね。
一色 そうですね。
──フットワークが軽いですよね。
一色 そうなんですよね。だんだん重くなるバンドが多いと思うんですけど、それも違うかなって。新人でもないから大きく見せようって考えもないし。着実に地に足の着いた活動をやっていければいいなって。いっぱいライブやればお客さんは分かれるけど、だからって動員が減ってるわけでもないし、トータルで見ればいろんな人が観に来れる機会があるし、そうやって毎回毎回飽きさせないライブをやって成長していければいいと思うので、フットワーク軽く設定していきます!(笑)
つばき
一色徳保(Vo,G)、小川博永(B)、岡本奈穂子(Dr)の3名からなるロックバンド。2000年のバンド結成以降インディーズで多くの作品を発表し、2005年2月にシングル「昨日の風」でメジャーデビュー。内省的な歌詞とストレートなロックサウンドが高い評価を受ける。メジャー契約終了後も精力的なライブ活動を続け、コンスタントにアルバムを発表。2010年は結成10周年を記念し、毎月10日に「つばき10th Anniversary "正夢になった夜"」を開催中。2010年8月には通算6枚目となるオリジナルフルアルバム「夜更けの太陽」をリリース。