ナタリー PowerPush - ステレオポニー×かりゆし58

沖縄出身2バンドがコラボ 新曲で“人生”を歌う

ステレオポニーとかりゆし58、沖縄出身の2バンドによるコラボレーションシングル「たとえば唄えなくなったら」がリリースされた。今回のコラボはステレオポニーからのラブコールで実現。かりゆし58からはメインソングライターの前川真悟(Vo)と、新屋行裕(G)の2人が参加している。

コラボ曲「たとえば唄えなくなったら」が表現しているのは、故郷を離れ、ときには志を見失いそうになったり、意思を貫こうとして孤独になったり、日々奮闘しているあらゆる人への共感だ。そしてそれが、同じ沖縄で生まれて活動している彼ら自身の経験と重なるからこそ、リアリティを増す。このコラボレーションの経緯や作品そのものについて、ステレオポニーのAIMI(Vo, G)、NOHANA(B)、SHIHO(Dr)とかりゆし58の前川、新屋の5人に話を訊いた。

取材・文 / 石角友香 インタビュー撮影 / 平沼久奈

もし自分が男の人と歌ったらどうなるんだろう

インタビュー風景

──今回のお話は「ステレオポニーのニューシングルを一緒に作る」っていうところから始まったんですか?

前川真悟 以前かりゆしの曲をプロデュースしていただいたIKOMANさんが、今ステレオポニーのプロデューサーをされていて。その人から「真悟、一緒にやってみないか?」とお話をいただいて「あー、いいですね。やらせてください」と返事を。シングルっていうのは最初は聞いていなかったんですけど。

新屋行裕 IKOMANさんとは元々ラジオで一緒になって、そこから親しくなった感じです。

──ステレオポニーとしては「次のシングルを出す」というタイミングで、どんなことを考えてたんですか?

AIMI シングル云々よりも、私はIKOMANさんに「ステレオポニーには女の子しかいないんで、もし自分が男の人と歌ったらどうなるんだろう?」っていう話をしていて。楽器を初めて持ってバンドを結成した頃から同じメンバーで活動しているので、ほかのミュージシャンとやったらどうなるんだろう?っていう興味や、新しいことをしたい好奇心があって。で、IKOMANさんはプライベートでも真悟さんと仲良くしてるらしく、よく真悟さんの話を聞いてたんです。そこから「一緒にできたらいいな」と思い始めて。もちろん、沖縄にいる頃からみんなが知ってるアーティストさんだったので、本当にできるとは思ってなかったんですけど、話をさせていただいたら「いいよ」って言ってくれて。

インタビュー風景

──新しいことをやりたいと思ったのはいつ頃ですか?

AIMI もう、覚えてないぐらい、けっこう前から常になんか……着地点がどうとかじゃなくて、いろんな楽しいことをできるバンドになりたいなと思っていて。そのきっかけが新しいことをやってみようか、っていうことで。で、今回のお話も具体的にできるようになっていったんですね。

ツアーを通じて気持ちの共有ができた

──デビュー当時のステレオポニーは、3人でやることをすごく大事にしていたと感じるんですよ。でも、作品のリリースを重ねたり、ツアーをやったりしたことで変化があったんでしょうか。

AIMI そうですね。確かに自分自身を見つめなおして、「次はどうしよう」って思ったときに、チャレンジする方向に変わっていったのかもしれないですよね。それはあんまりメンバーと話したりしたことはないんですけど。

インタビュー風景

──そういう気持ちを自分の中に持っていた?

AIMI 3人以外でやるのを今まではすごく不安に思ってたんですけど、今回、一緒にコラボできるって決まったときは「楽しみだな」って思いが生まれたんです。今言ってもらったように、何か変わったのかな、と思いますね。

SHIHO これからどうつながっていくかはまだわからないですけど……今年に入ってから東日本大震災とかいろいろなことがあって、個人個人で考えることも多くて。それがきっかけで考え方もちょっとずつ変わってきたと思うし。ツアー中も3人だけで話す時間を移動中に持てたし、気持ちの共有もできたので、そういうものも何かしら今回のことにつながってるんじゃないかと思いますね。

それぞれの「らしさ」が見える曲

──作詞作曲は前川さんが手がけていますが、ステレオポニーとしては前川さんに書いてもらいたかったんですか?

AIMI そうですね。自分たちが今までやってきたことじゃ挑戦にはならないし、何か刺激を求めてる時期だったのかもしれない。今回一緒にいたことで前川さんの素敵な人柄がわかって「だからこんなにいい曲と詞を書けるんだな」ってすごく感じました。今回のこの1曲はステレオポニーにとって、新しい考え方だったり、感じ方だったり、そういう部分でも吸収できるものがあったと思います。

インタビュー風景

──楽曲の演奏はほぼステレオポニーながらも、かりゆしの最近作である「風のように」に近い世界観を感じました。

前川 ステレオポニーや俺らを今まで聴いてきた人にしたら、「新しいことやったね」とか「ちょっと今までにないことやったね」って、びっくりされるかもしれんけど、逆に中心点がはっきりしてくるというか、それぞれの「らしさ」が見えたんじゃないかと思うんです。だから、ステレオポニーがバラードやっても、なんならラップとかしてみても、変わらぬ何かがあるとしたら、それが本当の「らしさ」で。サウンドとかじゃないかもな?

AIMI うん。

前川 もしかすると、そういうことがこうして一緒にやることで、感じてもらえるんじゃないかな。ステレオポニーや、かりゆしらしさがどっかある曲になったんかな、と思います。

ニューシングル「たとえば唄えなくなったら」 / 2011年8月10日発売 / Sony Music Records

  • 初回限定盤[CD+DVD] / 1575円(税込) SRCL-7683~7684 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] / 1223円(税込) SRCL-7685 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. たとえば唄えなくなったら
  2. SHOOTING STAR
  3. たとえば唄えなくなったら -AIMI duet Ver-
  4. たとえば唄えなくなったら -前川真悟 duet Ver-
  5. たとえば唄えなくなったら -Instrumental-
ステレオポニー

沖縄県で結成された、AIMI(Vo, G)、NOHANA(B)、SHIHO(Dr)の3人からなる女性ロックバンド。2008年、10代限定ロックフェスティバル「閃光ライオット」の福岡地区予選に出演し、ハイクオリティなサウンドで注目を集める。これがきっかけとなり、同年11月にシングル「ヒトヒラのハナビラ」でメジャーデビュー。続く2ndシングル「泪のムコウ」はアニメ「機動戦士ガンダム00(ダブルオー) -2nd Season-」のオープニングテーマに起用されたこともあり、オリコンウィークリーチャート2位にランクインするスマッシュヒットとなった。2009年3月にはアメリカで行われた音楽見本市「SXSW」に出演し、初の海外ライブを敢行。同年9月には初のフルアルバム「ハイド.ランジアが咲いている」をリリースした。2011年に入ってからはこれまで以上に精力的なライブを展開しており、10月には東名阪ワンマンツアー「秋の夜長はLIVEで乗り切れ ~@STEREOPONY-LOVERS.COM」を行う。

かりゆし58(かりゆしごじゅうはち)

2005年に前川真悟(Vo, B)、新屋行裕(G)、中村洋貴(Dr)により結成。バンド名は沖縄の方言で「めでたい / 縁起がいい」の意味を持つ「かりゆし」と、沖縄のメインストリート国道58号から。2006年2月にミニアルバム「恋人よ」をリリース。続くシングル「アンマー」がロングヒットを記録し、同年末の第39回日本有線大賞新人賞を受賞する。2008年には新メンバー宮平直樹(G)が加入し、現在は4人編成で活動中。2009年2月リリースのシングル「さよなら」が松山ケンイチ主演ドラマ「銭ゲバ」主題歌に抜擢され大きな話題に。2011年9月からはベストアルバム「かりゆし58ベスト」を携えて初の全国ホールツアーも実施。沖縄で生まれ育った彼らならではの"島唄"を全国に向けて歌い続けている。