ナタリー PowerPush - ROCK'A'TRENCH
珠玉のラブソング「日々のぬくもりだけで」
「せーの!」でやればロッカ流になる
──サウンドも歌詞も、今までのROCK'A'TRENCHの曲の中でも本当にスケールの大きい曲になりましたね。
山森 最大スケールですね。一生に一度のネタを惜しみなく注ぎ込んでるし。
オータケ ライブで3回くらいやったんですけど、まだ見えてない部分があるんですよね。「壮大に」っていうテーマを生の音でやれてるかどうかも、まだわかってないというか。同期させてるリズムと生のドラムのバランスを少し変えるだけでも、演奏全体がすごく変わってくると思うんですよね。
──ライブをとおしてさらに大きくなっていく曲なのかも。バンドの芯の太さ、ルーツミュージックを取り入れながら新しいものを生み出していく力も上がってますよね。
山森 うん、そうですね。なんていうか、1枚目のアルバム(「ACTION!」)を手探りしながらも一生懸命作って、それからライブをたくさんやって、たくさんの人たちと出会って。次のアルバムというのは、より成熟した部分を出していくタイミングになると思うんですよ。僕らのクリエイティビティをROCK'A'TRENCHとしてアウトプットしていくっていう。それにふさわしい楽曲が作れてると思いますね。
オータケ どんな曲をやっても“ロッカ流”になるというか、それぞれのブロックがガッチリ噛み合ってきてるんですよね。ニュアンスは話したりしますけど、それほど考えたり議論しなくても「せーの!」でやればちゃんと僕たちらしくなるっていう。すごく簡単なところで言うと、ドラムとベースがシンプルな8ビートだけになっちゃうと「これはロッカっぽくないね」とか。そういう意識がメンバーの中でちゃんと共通していて。
──逆に「ROCK'A'TRENCHらしさってなんだろう?」って頭で考えてた時期もあった?
オータケ まあ、それも常に考えてますけどね。5人いるし、楽器も多いし。
豊田 5人それぞれ音楽の趣味が違うから、それを100%出しちゃうとバンドらしさがなくなってしまうかもしれないし。僕がX JAPANみたいに髪を立てたらおかしいじゃないですか。逆に言うと、そういうことをやらない限り大丈夫ってことなんですけど。
──(笑)。ちなみに豊田さんがX JAPANを好きだったのって……。
豊田 小学校3年くらいですね。お姉ちゃんの影響で。
山森 X JAPANの話になると、オータケが乗り出してきますよ(笑)。
オータケ (豊田、山森、オータケを順番に指差しながら)X、LUNA SEA、Xですから。
山森 (笑)。
オータケ あと(やはり豊田、山森、オータケを指差しながら)MOTLEY CRUE、AEROSMITH、THE SMASHING PUMPKINSとか。
──確かに趣味が違いますねえ。
オータケ そうなんですよね。それが今は「せーの!」でやれば、ロッカ流になるっていう。最初の頃は「LED ZEPPELINみたいなドラムでサーフロックをやったらどうなるだろう?」って試してた感覚だったんです。今はそういう考え方自体がなくなったというか。
──意識する以前に混ざり合う、と。
オータケ で、また違うものになっていくんですよね。ドラムのシンバルだけ浮いて聴こえるようなこともないし。だから曲を作ってても面白いんですよね。
山森 うん、楽しいです。
ROCK'A'TRENCHとしてのストーリーがある曲
──シングルのほかの収録曲についても聞かせてください。まず「Baby's Extreme」。ホーンセクションがフィーチャーされた軽快なナンバーですが、これは「Early track recorded in 2006.」とクレジットされてますね。
山森 2006年にレコーディングを済ませてた曲なんです。今のメンバーが揃う前のテイクなんですけどね。かろうじて、ヒロ(豊田)がコーラスで参加してますけど。
豊田 (バンドに)入るかどうかの境目のころですね。ROCK'A'TRENCHで初めてやったのが、この曲のコーラスだったので。
──サウンドの方向性も……。
山森 かなり違いますね。
オータケ 別モノですよね。2人組のROCK'A'TRENCH(ROCK'A'TRENCHは、山森と畠山拓也の2人でスタートした)のときの曲なので。
──違和感は全然感じないですけどね。2011年のROCK'A'TRENCHの楽曲としても、ちゃんと成立しているというか。
山森 曲順の効果もあるんですよね。まず、3曲目の「in love」を入れたいと思ったんですよ。でも、そうするとミドルテンポの歌モノが続くことになってしまうので「真ん中にもう1曲入れたい」と思って。で、「Baby's Extreme」を並べてみると、非常にいい感じだったっていう。
オータケ 感覚的なところでつながったんですよね。いろいろ意見はあったけど、ROCK'A'TRENCHとしてのストーリーもちゃんとある曲だし。
──2006年くらいのことって、覚えてます?
豊田 よく覚えてますよ。音楽をやめて就職しようかなって考えてたんですよ。ミュージシャンとしてはレコーディングの仕事をたまにやってたくらいで、それもあんまり面白くなくて。実際、求人誌をめくったりしてましたからね。でもまあビックリするくらい向いてる仕事がなくて(笑)。
山森 (笑)。
──人生の分岐点ですねえ。
豊田 かなり。畠山君から電話がかかってくるのが1週間遅かったら、どこかで面接を受けてたかも。
山森 そのときは何もなかったですからね。こうやってメジャーでやれてるっていうのもすごいことだし、メンバーやスタッフを含め、素晴らしい出会いに恵まれたなって思います。
枠があるからその先の無限を感じられる
──そして3曲目の「in love」ですが、山森さんのルーツが色濃く出てる曲じゃないかな、と。
山森 そうなんですよ。ほんとにポロッと出てきた曲なんですけど、今までにはなかった感じだなって。音楽に目覚めた頃に聴いていたブルースっぽい感じのハードロックだったり、あとはサーフミュージックのアコースティックな感じだったり。アプローチとしては現代っぽくバキバキのサウンドにすることもできたんだけど、(ROCK'A'TRENCHには)こんなにいいプレイヤーが揃ってるんだから、やっぱり生でやろうと思って。
──イメージどおりの仕上がり?
山森 うん、いいですね。コゲた匂いがしてくるようで。
──音楽的な自由度もさらに上がってるんじゃないですか?
豊田 パッとできるようになりましたね、いろんなことが。イメージしている音にわりと早くたどり着けるというか。いろんなパターンも試せるようになったし。
──メンバー全員が曲を作るバンドだし、この先、もっともっと広がっていきそうですね。
オータケ そうですね。ただ、“枠”をきちんと作るってことも大事だと思ってるんですよ。野放しにするんじゃなくて、あえてルールを作ってその枠のなかで表現する。それがないと芸術的じゃないと思うんですよね。絵とかもそうじゃないですか。キャンバスっていう区切られたものがあるからこそ、芸術として成り立つっていう。
山森 うん、そうだね。フレームがあるから、その先の無限を感じられるんだと思うし。短歌もそうですよね。ルールがあることによって、逆に広がりが伝わるっていう。
──なるほど。連続シングルの第3弾も楽しみですが、その先の展開はどうなりそうですか?
山森 それはもう、2ndアルバムを作って、その後は全国ツアーですね。
オータケ うん。並行して自主イベント(Active Rock)もやっていきます。震災の影響で開催が見送られた会場もあったけど、きちんと続けていきたいですね。
ROCK'A'TRENCH(ろっかとれんち)
山森大輔(Vo)、畠山拓也(Key, Trombone)を中心に2004年に結成。バンド名は彼らがリスペクトするボブ・マーリーの名曲「Trench Town Rock」に由来。2006年11月に豊田ヒロユキ(G)、河原真(B)、オータケハヤト(Dr)が加入し、バンドとしての基盤を固める。2007年7月にシングル「Higher」でメジャーデビューし、2009年に全国ドラマ「メイちゃんの執事」の主題歌「My SunShine」が着うた・配信等を中心に100万ダウンロード突破。
2009年7月に1stフルアルバム「ACTION!」を発表。2010年12月にはシングル3作連続リリースの第1弾となる「Music is my Soul」、そして2011年4月に第2弾「日々のぬくもりだけで」をリリース。
独自のエンタテインメント性を持つライブパフォーマンスと変幻自在なオルタナティブサウンドが特徴。