ナタリー PowerPush - My Last Ballad

ピアノエモが切り開く新たな夜明け

5人組ロックバンド、My Last Balladが1stアルバム「Lights of Dawn」をリリースする。「ピアノエモ」というテーマのもと制作された本作には、パンクやエモを基調にしながらも親しみやすいメロディと、それを盛り上げるために緻密に計算されたアレンジが印象的な楽曲がズラリと並ぶ。

ナタリーでは今回、メンバー5人にインタビューを実施。バンド結成の経緯からバンド名に込められた思い、そして1stアルバムの魅力などを語ってもらった。

取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 佐藤類

結成時の条件は“居心地のいいバンド”

My Last Ballad

──My Last BalladはKazushiさんが中心になって結成されたそうですね。

Kazushi(Vo, Piano) はい。以前僕が所属していたバンドが解散してしまって、また1からバンドを作りたいと思ってみんなに声をかけたのがきっかけで。みんなもともとは大学の同級生だったり、ライブで対バンした仲間なんです。

──当初どういうバンドをやりたい、どういう音楽をやりたいとイメージしてましたか?

Kazushi これは前のバンドのときから考えてたことなんですけど、メンバー1人ひとりにとって“居心地のいいバンド”というのがまず第一で。それは人間関係だけじゃなくて、音楽面でもちゃんと意思疎通ができるという意味で、そういう環境じゃないとやりたい音楽もできないですしね。あとはもう僕らがいいと思うメロディを軸に、聴きやすくてポップなアレンジをどんどん取り入れていこうと考えてました。

──ちなみにどなたがKazushiさんと大学の同級生なんですか?

NishiMac(G)

NishiMac(G) 僕とTetsuoです。もともと仲がよくて、My Last Balladの前にも一緒にバンドを組んでいたことがあって。その後別々のバンドをやってたときも、一緒にライブをしたりお互いのライブを観に行ってたんです。

Secky(B) 僕も同じ大学なんですけど、僕は年下なので皆さん先輩なんです。NishiMacさんと一緒にバンドをやっていたときがあって、その縁でMy Last Balladにタイミングよく誘っていただいて、まあうまく入れて(笑)。

一同 あははは(笑)。

──Hirotakaさんは皆さんとどういうつながりだったんですか?

Hirotaka Terakura(G) 僕だけ大学が違うんですけど、Kazushiとは大学卒業後に同じバンドで活動してました。さっき言った居心地のよさや信頼関係の強さという意味で、彼はベストパートナーなんです。それもあってまた一緒に音楽を作りたいと思い、My Last Balladで一緒にやることになったんです。

──なるほど。Hirotakaさんは帰国子女とのことですが、どこに住んでたんですか?

Hirotaka 14歳から18歳の頃までタイのバンコクに住んでました。インターナショナルスクールに通ってたので、タイ語よりも英語を話すことのほうが多かったですね。

──ロックに目覚めたのもその頃ですか?

Hirotaka そうですね。日本では音楽の授業でリコーダーやハーモニカを習うけど、向こうではいきなりギターやベース、ドラムを教わって、みんなでThe Beatlesの「Let It Be」を演奏したりするんです。思えばそれがロックを聴く上での基盤になっていて、そこから仲間内でGreen DayやBlink 182、Sum 41が流行って、バンドでコピーすることになって。さらに「日本ではどうやらHi-STANDARDやMONGOL800っていうバンドがすごく流行ってるらしいぞ」っていう情報を耳にして、バンコクで生活しながら“外国の音楽”として聴いてました。でも日本語詞とか英語詞とか関係なく、カッコいいバンドに対しては周りのみんなが「いいよね!」と反応する。カッコいいものは言語どうこうじゃなくカッコいいんだって、そのとき改めて実感したんです。それは今のMy Last Balladの方向性にも大きな影響を与えてると思います。

「僕たちが最後に作る心のこもった歌」というバンド名にしよう

──My Last Balladというバンド名は非常に印象的ですが、どういう意味が込められているんですか?

Kazushi(Vo, Piano)

Kazushi 主にバンド名を考えたのは僕です。以前本気でやってたバンドがダメになったとき、もう音楽を辞めようかな、地元に帰ろうかなと考えたことがあって。その際、恩師にいろいろ相談したら「あんた何やってんの? まだ若いんだからがんばんなさい」と喝を入れられて、もう一度がんばろうと思ったんです。バンドを組むからには次を最後のバンドにしようという思いがあったので、バンド名には「My Last」というフレーズを入れたかった。そこからいろんな候補が挙がった中で、最終的にHirotakaが「Ballad」という単語を選んで。日本だとバラードってしんみりしたラブソングみたいなイメージがあると思うんですけど、Hirotakaは「英語だと“心のこもった歌”っていう意味もあるから、『僕たちが最後に作る心のこもった歌』というバンド名にしよう」と言ってくれて、この名前になりました。

──なるほど、エモーショナルな音楽という意味での「Ballad」だと。

Hirotaka そういう意味では僕らの曲、全部バラードなんですよ。

Hirotaka Terakura(G)

──すべての歌詞はHirotakaさんが書いていますが、歌詞を通じて何を伝えようと思ってますか?

Hirotaka いつも歌詞を書くときは、自分の中にパッと浮かんできたことをそのまま書いてるんです。例えば今回のアルバムで言えば、7曲目の「Another and Only One」では「ある雨の日、家の中で外の景色を見ながらソファにゆったり座って考えごとをしている」というフレーズがあるんですけど、それがどういう意味なのか、何を考えているのかは書かれていない。ある情景を歌の中で表現することで、それをリスナーがどう受け取るかは全部お任せしたいと思ってます。僕は僕なりのメッセージを発してはいるんですけど、「こういうことを歌ってるんだから、こういうふうに受け取って」とは絶対に言わないようにしてるんです。

──その雨の日の情景から受け取る印象も、その人がどういう経験をしてきたかによって解釈が変わりますもんね。

Hirotaka 本当にその通りです。例えば20年間ハッピーなことしか経験してない人が過ごす雨の日と、20年のうち15年間悪いことが続いた人が過ごす雨の日って、同じ雨の日でも感じ方がまったく違うと思いますし。もしリスナーの人たちがどう感じたかを聞く術があったら、1人残らず聞いてみたいですね。

ニューアルバム「Lights of Dawn」/ 2013年10月16日発売 / 1890円 / UNDERSTATE Studio Works / UDST-10001
収録曲
  1. From Scratch
  2. Signals
  3. River
  4. Finger Flare
  5. What Lies Beneath
  6. Backwards
  7. Another and Only One
  8. Lights and Leaves
  9. In My Melody
My Last Ballad(まいらすとばらっど)

Kazushi(Vo, Piano)、Hirotaka Terakura(G)、NishiMac(G)、Secky(B)、Tetsuo(Dr)からなるロックバンド。2011年、Kazushiを中心に結成され、自主音源の制作やライブ活動を積極的に展開していく。2012年6月には「Beyond [The] Blue Tour 2012」サイドショーにサポートアクトとして出演し、MAYDAY PARADE、EVERY AVENUEといった海外勢と競演。同年10月に現編成が揃い、2013年2月に全国6カ所を回るライブツアーを敢行する。同年10月、初のアルバム「Lights of Dawn」をリリース。