ナタリー PowerPush - 松井咲子

ソロデビュー記念「咲子師匠」が誕生するまで

AKB48の松井咲子がピアノインストゥルメンタルアルバム「呼吸するピアノ」でソロデビューを果たした。服部隆之が音楽プロデュースで参加した本作には、「ヘビーローテーション」「フライングゲット」「Everyday、カチューシャ」「ポニーテールとシュシュ」などAKB48のヒット曲カバーや、服部によるオリジナル曲などを収録。クラシカルな楽曲からボサノバテイスト、ニューエイジ色の強いナンバーまでバラエティに富んだ内容となっている。

現役音大生としての側面だけでなく、PerfumeやももいろクローバーZ、アイドリング!!!など女性アイドルが大好きと公言する一面も持つ彼女。そんな彼女のパーソナリティに迫るべく、今回のインタビューでは幼少~高校時代の思い出、ピアノについて、AKB48の話題、ソロデビューについてなど、今の松井咲子が完成するまでをたっぷり語ってもらった。

取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 佐藤類

中学の頃は友達と一緒にいるだけで楽しかった

──小学生の頃はどんな子供でしたか?

家で遊ぶのが好きでした。でも毎週火曜日だけは友達と遊びに行ってました。母がピアノ教室をしていたから、火曜日は友達が習いに来て。レッスンが終わると必ず一緒に遊びに行ってたんです。友達の家に行ったり、駄菓子屋さんに行ったりして遊んで。駄菓子屋さんが小学校の目の前にあったので、行けば誰かしら友達に会えたし。

──その頃、周りで何が流行ってました?

シール集めが流行っていて。女の子なら多分誰しも一度はあると思うんですけど、シール帳とかプロフィール帳とか持ち歩いたり、あとはプリクラを撮りに行ったりしてましたね。

──確かお兄さんがいらっしゃるんですよね?

はい。兄からの影響はかなり強くて、よく兄の真似ばかりしてました(笑)。例えばマンガにしても、少女マンガは全然読まなかったし。

──じゃあ少年誌ばかり?

そうです(笑)。「地獄先生ぬ~べ~」とか「とっても!ラッキーマン」とか、そういう男の子が好きそうなのばかり読んでました。

──なるほど。では中学生の頃、一番興味があったものってなんですか?

興味があったもの……なんだろう……うーん、普通に友達と一緒にいるだけで楽しかったかな。私、中学の頃が一番楽しかったなって思うんですよね。

──友達と一緒にいるというのは、特に何かするって感じでもなくて?

そうですね。ハマってたものでいうと、好きなアーティストさんのCDを買ったり「Hana*chu→」みたいな雑誌を読んだり。

──ちなみに音楽はどういったアーティストを聴いてましたか?

Every Little Thingさんが大好きで、そのほかにもいろいろ聴いてました。あと福山雅治さんも。福山さんは多分兄からの影響ですね(笑)。

本人も無自覚だった反抗期

──ピアノはいつ頃から始めたんですか?

習い始めたのは4歳からです。

──じゃあ既に18年近く続けてるわけですね。今までピアノを辞めたいと思ったことは?

辞めたいというか練習が嫌だなと思ったことはたくさんありましたね。「なんでこんなに毎日弾かなきゃいけないんだろう?」って思ってました。小学校の頃はすごく楽しくやってたんですけど、中学くらいになって「もっと遊びたいなあ」って気持ちが出てきて。部活から帰って体が疲れてるときなんかは「なんでピアノを弾かなきゃいけないんだろう?」って、ちょっと反抗的になったことはありました。

──部活は何部だったんですか?

音楽部だったんですけど、運動部並みに練習をやってたんですよ。夏休みもほぼ休みがなくて、毎日9時から3時半くらいまで結構びっしり練習して。そこから帰宅してピアノの練習をするのが、どんどんつらくなってきて。今考えたらそんなにどうってことないだろうってことなんですけど、当時はすごく疲れた感じがしてたんです。

──ましてや遊びたい盛りですもんね、中学生の頃なんて。

そうですね、遊びたい気持ちはずっとありました。

──ピアノのコンクールにもよく出場していたんですか?

小学校の頃から出てました。コンクールが近づくとたくさん練習しなきゃいけないから、友達と遊べなくてちょっとモヤモヤしてましたね。私の周りには同じようにコンクールに出るような子がいなかったので、毎日ピアノを練習しなきゃいけない、そのために遊ぶのを断らなきゃいけないってことをあまり理解してもらえなくて。中学のときなんて、夏休みになると友達とお祭りに行きたいのに、コンクールが近いからダメって親に言われてたんです……。あれ、私って反抗期がなかったと思ってたんですけど、今思い返すと意外とあったんですね(笑)。

アイドルは好きだけど、なりたいとは考えたことがなかった

──咲子さんはアイドル好きとしてもファンの間で知られてますが、最初にアイドルに興味を持ったのっていつ頃ですか?

小学生の頃ですね。当時はモーニング娘。さんが大好きで、休み時間に友達10人ぐらいで集まって、それぞれ担当のポジションを決めて「じゃあ次までにこの曲を覚えてきて」とか言ってみんなで踊ってましたね。

──なるほど。じゃあAKB48を最初に知ったのは?

AKBを知ったのが多分中3のときだったんですけど、確かAKBってその頃にできたんですよ。テレビ電話のCMで初めて知って、「あ、こんな子たちがいるんだ」と思った記憶があります。そのCMに「桜の花びらたち」が使われていて「すごくいい曲だな」と思って、体育館掃除のときによく踊ってたんですよ。

──じゃあ本当にごく初期の頃からなんですね。

でも全然詳しかったわけじゃないんです。ただむちゃくちゃ可愛い子がいるって思ってたのがこじはる(小嶋陽菜)さんだったんですけど。まだその頃はなんとなく気になるくらいの感じでした。

──CDを買ったりはしなかった?

AKBのCDって当時、地元のCDショップに売ってなかったんですよ。

──あ、そうか。「桜の花びらたち」の頃はまだインディーズでしたもんね。

はい。で、中3のときに冬期講習で池袋に行ったときにCDショップに「桜の花びらたち」が置いてあったんですよ。「あ、これだ!」と思って。でも買わなかったんですけど(笑)。

──ええっ?(笑)

そのときは買いはしなかったんです(笑)。買わなくてチラシだけ持って帰ってきて。でもAKBに入りたいとは一切思わなくて。アイドルは好きだけど、なりたいとは一度も考えたことがなかったんですよ。

ニューアルバム「呼吸するピアノ」 / 2012年10月3日発売 / ポニーキャニオン
ニューアルバム「呼吸するピアノ」CD+DVD 2800円 / PCCA-03680
ニューアルバム「呼吸するピアノ」CD 2000円 / PCCA-03681
CD収録曲
  1. 心の譜面
  2. 会いたかった
  3. フライングゲット
  4. 歌う血液~宇津井健の加圧トレーニングのテーマ~
  5. Everyday、カチューシャ
  6. 魂の移動~ぐぐたす民のテーマ~
  7. Beginner
  8. ポニーテールとシュシュ
  9. ヘビーローテーション
  10. 桜の木になろう
  11. ピアノ・ソナタ 第18番,K.576,ニ長調より第I楽章(ボーナストラック)
DVD収録内容
  1. 魂の移動~ぐぐたす民のテーマ~   (Music Video)
  2. 歌う血液~宇津井健の加圧トレーニングのテーマ~ (特典映像)
  3. メイキング映像
松井咲子(まついさきこ)

松井咲子

1990年12月10日生まれ、埼玉県出身。4歳の頃よりピアノを始め、現在東京音楽大学器楽専攻ピアノ科に在学中。2008年にAKB48研究生として活動を開始し、翌2009年8月にチームKへの昇格が発表される。2012年6月の「AKB48 27thシングル選抜総選挙 -ファンが選ぶ64議席-」では53位にランクインし、フューチャーガールズ入り。同年8月の東京ドームコンサートではチームAへの移籍が発表された。10月3日にアルバム「呼吸するピアノ」で、AKB48から6人目のソロデビューを果たした。