ナタリー PowerPush - keeno

伝説のDarkマスター、ついに1stアルバム完成

ギターのアルペジオと柔らかなメロディが印象的なボカロP、keeno(キーノ)が待望のメジャーデビューアルバム「in the rain」をリリースした。本作には、動画共有サイトで90万再生を超える「glow」や60万再生を超える「crack」といった代表曲や、書き下ろしの新曲など全15曲を収録。今回のメールインタビューではアルバムの内容はもちろん、初音ミクAppend dark(通常の初音ミクより暗い表情の声を出すオプション)を使った曲作りの秘訣などもたっぷり聞いた。

取材・文 / 田口こくまろ

リスナーの顔もわからないし、殿堂入りは他人事のような心境でした

──ナタリー初登場ということでまずは自己紹介をお願いします。

初めまして、keenoと申します。ボーカロイドを使用した楽曲制作をしながらのんびりと活動しております。

──2010年6月に動画共有サイトで公開された「glow」がkeenoさんの公式デビュー作ということでよろしいですか?

そうですね。DTMを始めて最初に作ったのが「glow」なんですが、完成した後に誰かに聴いてほしくなって投稿しました。

──初投稿にして殿堂入りを果たされたわけですが、そのときの気持ちを覚えていますか?

ネット越しだとリスナーの顔もわからないので、再生数だけ見てもまったく実感が湧かず不思議な感覚でした。もちろんうれしかったのですが、一方でどこか他人事のような心境でした。

──2010年10月、2作目の「crack」が公開されますが、この曲はわずか43時間43分で殿堂入りしましたね。

なんだかすごい勢いで再生してもらっていましたけど「glow」のときと一緒であまり実感も湧かず……。ただ「glow」が好評だっただけに、あまりに少ないとヘコむなとは思っていたので安心はしました。次の曲を早く作ろうと思うこともできましたしね。

麺類子さん、ke-sanβさんとのトリオは最強ですね

──「glow」では既存のイラストを借用していた絵師の麺類子さんと、今作では正式にコラボしていますね。その経緯を教えてください。

もともと麺類子さんのイラストが大好きだったので、もし次に曲を投稿することがあったらダメ元で頼んでみようと考えていたんです。それで、お願いしたら快く依頼を受けてくださり、本当に感激しました。待っている間も夢見心地でしたね。

──keenoさんの曲調と、麺類子さんの儚い画風は本当にマッチしていると思います。keenoさんの麺類子さんに対する印象を教えてください。

淡くて儚いのに確かな力があって、きっと見る人によっていろんな物語が生まれるようなイラストだと思います。そんなイラストを自分の曲のために描いてもらえるのは幸せなことです。人間的にも、とても礼儀正しい素敵な方だと思いますし、曲のデモを聴いただけで、もうこれしかないと思えるイラストを描いてもらえるのでいつも驚きです。

──ムービーはke-sanβさんですが、こちらの経緯は?

「glow」を発表して間もない頃に「次作の際にはお手伝いしますよ」と声をかけていただきました。いつも曲とイラストを本当に大切にしてくれて、なおかつしっかり雰囲気のある動画を制作してもらっています。

──この曲以降もこの3人のコラボは続いてますが、やはりチームとしてやりやすいんですか?

そうですね。私の中ではこの方たちしかいないなと勝手に思っています。お2人とも声を掛ければ快く引き受けてくださいますし、期待を裏切られることはありません。チームなんて大げさなものではないですが、愛想をつかされるまでは頼りたいなと思っています。

曲ができた時点で満足してしまうのでオケを作る作業が苦痛です(笑)

──keenoさんの楽曲といえば、きらびやかで憂いを帯びたギターのアルペジオをまず思い浮かべるんですが、ギターを始めたきっかけを教えてください。

ギターに興味を持ったのは中学校のときです。音楽の授業でクラシックギターに少しだけ触れて、これならできるかもしれないと思い、おこづかいをはたいて自分のギターを買いに行きました。

──アコギですか?

いえ、その頃はHi-STANDARDをよく聴いていたので当然エレキギターですね。いろんな曲をコピーしたりバンドを組んだりして少しずつ弾き方を覚えていきました。

──やはり作曲はギターで行うんですか?

そうですね。ギターを弾きながら気に入ったメロや言葉が出るまで歌っています。弾き語りで曲ができた時点でたいてい満足してしまうので、その後のPCでオケを作る作業が苦痛です(笑)。

──では、VOCALOIDを利用しようと思ったきっかけを教えてください。

VOCALOIDのことは友達から教えてもらったんですが、想像していたよりもしっかり歌っていることや、楽曲を作って発表している方がたくさんいることに驚きました。作る側も聴く側もなんだか熱があってとても楽しそうに見えたので、すぐにDTMソフトとVOCALOIDを買いに行きました。

──楽曲作成の手順を教えてください。ベースやドラムも打ち込みでしょうか?

ギター以外の楽器は全部打ち込みで作っています。最初にシンプルなドラムとベースを打ち込んでギターのアレンジを固めてからその他の楽器を足したり細かいアレンジをしたりしていきます。アレンジは本当に苦手で何度も投げ出してしまいます。完成したときはうれしいんですけどね。

──アレンジに際して心がけていることはありますか?

ギターが好きなので、ギターがカッコいいものを作れるように努力してるつもりですが、なかなか難しいですね。

メジャーデビューアルバム「in the rain」/ 2013年9月18日発売 / EXIT TUNES / QWCE-00283
[CD] 2000円 / QWCE-00283
収録曲
  1. dusk
  2. longing
  3. crack
  4. lying
  5. glow
  6. recur
  7. fix
  8. fade
  9. bitter
  10. grief
  11. depth
  12. wipe
  13. drop
  14. tears
  15. in the rain
keeno(きーの)

2010年に動画共有サイトに投稿した「glow」が、初作品にも関わらずまたたく間に注目されたボカロP。初音ミクAppend dark(通常の初音ミクより暗い表情の声を出すオプション)を駆使した楽曲で知られ、柔らかなギターの音色、洗練された優しい世界観にも定評がある。その後も絵師の麺類子とのコラボで「crack」「longing」「fix」などの人気曲をマイペースに投稿。2013年9月にはEXIT TUNESより1stアルバム「in the rain」をリリースした。