アイドルネッサンス×小出祐介(Base Ball Bear)「前髪がゆれる」対談|オリジナル曲で踏み出した未来への一歩

“憧れのグループ”から“メンバーの一員”へ

──アイドルネッサンスの無垢なイメージは結成時から変わりませんけど、野本さんと原田さんが加入してから(参照:アイドルネッサンス部、新体制お披露目ライブで15人の「夏の決心」)、グループの雰囲気が少し変わった印象があります。

宮本茉凜 感じます。それはすごく。

小出 どう変わったんですか?

新井乃亜

新井 心強くなったというのはあります。前は7人でやっていて、1人卒業したときに(参照:アイドルネッサンス橋本佳奈、涙と笑顔のラストライブ)少し不安になったんですけど、2人が入ってきたことでまた新しい武器を持てたような気がして。自信が持てるようになりました。

──改めて、お2人はどのような経緯で入ったのか教えていただけますか?

野本 私はもともとアイドルネッサンスのファンで、ライブもよく観に行ってたんです。

──そのときはアイドルネッサンスをどんなグループだと思っていましたか?

野本 新しい存在だなと思いました。それまではももいろクローバーZさんとか、色が付いたアイドルグループさんを観ていたので、色がないことにまず驚いて。それに、みんな歌を心から歌っていて、それが私の心に響いたんです。それで「アイドルネッサンスになりたい!」と思って、SMAのオーディションを受けました。

小出 めっちゃいい話ですね。

──実際にメンバーになってみて、印象は変わりましたか?

野本 入ってみたらメンバーの知らなかった一面が見られて、すっごい楽しいです!

──原田さんはいかがですか?

原田珠々華

原田珠々華 私はずっとアイドルと縁がなかったんですけど、YouTubeで知ったアイドルネッサンスをお母さんと一緒に観に行ったら、私が思っていたアイドル像を覆されたんです。すごく元気をもらって……アイドルさんはそういうものかもしれないですけど、私はその感覚を初めて味わったので、「歌を聴いてこんなに元気になるんだ!」と思ったし、なんと言うか、笑顔が飛んできて……。

小出 うんうん。

原田 めっちゃ感動しちゃって。ライブに行くこと自体、アイドルネッサンスが初めてだったんですよ。それで「私も入れたらいいな」と思ってオーディションを受けて……今その中に私がいるって考えるとすごいことだなって思います。

小出 へえ。2人共すごいっすね。憧れてたグループのメンバーになったんだ。アイドルネッサンスもそうやって憧れられる対象になっているわけで。

新井 自分たちでそういう実感はなかったんですけど、2人から「アイドルネッサンスに入る前はこう思っていて、こういうところが好きなんだ」というのを直接聞いて、私たちの活動が誰かに笑顔や勇気を与えられてるんだなって実感できました。

レパートリーの増加と客層の広がりが生んだエモーション

──2人が入って変わった部分もあると思いますし、活動を重ねてきたことによる変化かもしれませんが、この1年でライブがすごくエモーショナルになりましたよね。以前はもっとおとなしい印象でしたけど、メンバーも観客も熱量が変わってきたように感じます。

石野理子

石野 歌う曲が増えてきて、いろんな時代の歌を歌うに連れてお客さんの層も広くなってきている気がします。お客さんのノリ方が変わってくることによって、私たちのライブのスタイルももしかしたら変わってきてるのかもしれない。

──確かに以前よりも客層は広がっていますよね。それこそ野本さんや原田さんのように同世代のファンも増えていますし。

小出 曲が増えることで、セットリストの構築も変わってきてるんじゃないですかね。

石野 そうですね。曲が増えるたびにセットリストの組み方は少しずつ変わっていきます。

──単純にロックのレパートリーが増えたことで、自然とそうなっているところもあるのでしょうか。自分たちから「もっとエモーショナルにやろうよ」と話し合ったわけではなく。

石野 はい。KANA-BOONさんの「シルエット」とかを歌うときに「もっと激しく歌おうよ」って言うことはあるけど、「全部をエモーショナルにしよう!」とは言ってないです(笑)。

──小出さんの手紙が読まれた秋のライブはバンド編成だったこともあって、なおさら「これはすごいことになってきたな」と思ったんですよ。そのタイミングでオリジナルを、しかも小出さんの曲でやるというのはすごく腑に落ちる流れでした。

小出 なるほど。でも皆さん、実際のところどうでした? さっき言ったように、今までやってきたことがにじむわけじゃないですか。

石野 いつか来ることだと思ってたし、ちょうど私たちも「そろそろオリジナルも歌ってみたいよね」と言っていたタイミングだったので、だからこそ驚きもあったし、また未来が開けたなと思いました。

比嘉奈菜子

新井 素直にうれしかったよね。

小出 そうなんだ。不安は全然なかったですか? みじんも? でも「100パーうれしい。イエーイ!」じゃなかったでしょ、きっと。

比嘉 小出さんにもらった手紙に背中を押されたところも大きいです。

小出 あー。ちょっとカマしすぎですよね(笑)。

4曲になった理由

──このタイミングでオリジナルが、しかも一気に4曲できたという状況ですけど……。

小出 そもそもなぜ4曲になったのか、前段の話って皆さんは聞いてます?

石野 あ、聞きたいです!

アイドルネッサンスと小出祐介。

小出 もともとの話では1曲だけだったんですよ。パッケージとしてもシングルで、オリジナル1曲にカバーがもう1曲入るみたいな。そうなると、シングル表題曲的な考え方になりますよね。例えば、キャッチーで、現場で盛り上がれるアッパーな曲が求められる。でも、「アイドルネッサンスのオリジナル曲です」と言って、そういう曲を1曲だけポンと放り込む、ということがまったく想像できなくて。オリジナル曲を歌って「オイ! オイ!」と盛り上がって……それだけでいいのかなと思ったんですね。

──確かに、あまりアイドルネッサンスらしくないですね。

小出 “名曲ルネッサンス”は単純に曲を受け取って歌うわけではなく、楽曲に新たなアングルから光を与えながら、それを束ねる彼女たちの世界観も構築していくという高度な企画だと思うんです。しかも、音楽ジャンルのくくりを借りるのではなく、DJ的な選曲の妙と、彼女たちの表現によって成立させてきた。それって、ほかのアイドルさんよりも、本人たちの受け持つクリエイティブな要素が少しだけ多いんですよね。僕は基本的にアイドルさんというのは、その曲をどううまく歌うか、どうパフォーマンスをするかに徹する職業だと思っていて。“受け取って、表すプロ”と言いますか。逆に、ここに“創る”が芽生えてくると、アイドルという枠からはみ出てくるし、はみ出たくなるという性質があったりするんですよね。でもアイドルネッサンスは、自覚的か無自覚的かはともかくとして、アイドルの枠をはみ出ない範囲でクリエイティブなアプローチを行なってきていた。そんな人たちがいきなり「オリジナル曲です」と言って、現場で即時的に盛り上がる曲を1曲放り込んで終わり、というのは想像できなかった。「じゃあ今までの“名曲ルネッサンス”はなんだったの?」ってことになるなと思ったんですね。そんなふうに、考えれば考えるほど1曲で収めることができなくて、「とりあえず4パターンで提案させてください」って言ったんですよ。

──なるほど。

小出 まずは「交感ノート」みたいなグルーヴ勝負の曲、そして「Blue Love Letter」みたいなアップテンポで盛り上がる曲、「5センチメンタル」みたいなちょっと懐かしい要素のある曲、「前髪」みたいな自分の曲で言う「17才」みたいな曲……というのを4パターン出したんですよ。「ここからイメージに近いものを選んでください」というつもりで。そしたら「4曲で行かせてください」と言われて「おお、マジか」と(笑)。でも、その決断はさすがアイドルネッサンスの運営だと思いつつ、自分たちの新作(4月12日に発売されたニューアルバム。参照:Base Ball Bear、デビュー記念日に新体制初のオリジナルアルバム「光源」)の制作追い込みとプロモーションをロングツアーと並行してやってる状況で、さらにアイドルネッサンスの制作を進めるにはどうやっても無理があって。だから、手紙を書いた段階では春に出す予定だったんだけど、発売が延びてしまったという経緯があるんです。

アイドルネッサンス

──その話を聞くと、この4曲の持ち味の違いがよくわかりますね。結果的に「アイドルネッサンスとはなんぞや」という問いをさまざまな角度から探り当てたような形になっていて。

小出 “名曲ルネッサンス”でカバーしてきた楽曲と、オリジナル曲の決定的な違いは何かと言うと、背景があるかどうかだと思うんですよ。例えば「YOU」(オリジナルは大江千里)は30年前ぐらいの曲でしたっけ?

──1987年の曲なので、ちょうど30年前ですね。

小出 30年という時間の経過の中でいろんな文脈や聴き手の思いを吸収してきた曲と、まっさらぴんの新曲を並べるには、あまりにも背景が違いすぎる。厚みでは勝負できないんですよね。だけど代わりに、これまでの活動を踏まえて世界観で提示するという選択ができるのがアイドルネッサンスの特殊さだし、彼女たちらしいオリジナルの始め方だと思ったんです。

アイドルネッサンス「前髪がゆれる」
2017年8月8日発売 / T-Palette Records
アイドルネッサンス「前髪がゆれる」

[CD]
1500円 / TPRC-0165

TOWER RECORDS

Amazon.co.jp

収録曲
  1. 交感ノート
  2. Blue Love Letter
  3. 5センチメンタル
  4. 前髪
  5. 交感ノート(inst)
  6. Blue Love Letter(inst)
  7. 5センチメンタル(inst)
  8. 前髪(inst)

全曲[作詞・作曲:小出祐介 / 編曲:イイジマケン]

ライブ / イベント情報(※終了分は割愛)

アイドルネッサンス サマーツアー 2017「君と夏を交感するネッサンス!! ~Road to Brand New Dawn~」
  • 2017年8月10日(木)東京都 新宿BLAZE
  • 2017年8月12日(土)宮城県 darwin
  • 2017年8月13日(日)愛知県 伏見JAMMIN'
  • 2017年8月20日(日)大阪府 umeda TRAD
アイドルネッサンス「前髪がゆれる」リリースイベント
  • 2017年8月8日(火)東京都 タワーレコード錦糸町店
  • 2017年8月9日(水)東京都 新宿マルイメン 屋上
  • 2017年8月11日(金・祝)千葉県 イオンモール幕張新都心 グランモール1F 屋外グランドスクエア
  • 2017年8月14日(月)大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店
  • 2017年8月14日(月)大阪府 あべのキューズモール3F スカイコート
  • 2017年8月19日(土)東京都 ららぽーと豊洲 シーサイドデッキ メインステージ

アイドルネッサンス×マンガ家西村ツチカ ナタリーストア オリジナルグッズ販売中

アイドルネッサンス
アイドルネッサンス
ソニー・ミュージックアーティスツ設立40周年を機に立ち上げた初のアイドルプロジェクトとして2014年1月に始動。候補生13名でスタートし、同年5月より宮本茉凜、百岡古宵、石野理子、南端まいな、比嘉奈菜子、新井乃亜、橋本佳奈の7名が正式メンバーとなった。古今の名曲を独自の歌とダンスで表現する“名曲ルネッサンス”をテーマに活動し、同年7月にはBase Ball Bearのカバー「17才」、11月には東京スカパラダイスオーケストラと村下孝蔵のカバー「太陽と心臓 / 初恋」を自主制作シングルとしてリリース。12月よりタワーレコードのアイドル専門レーベルT-Palette Recordsに所属し、2015年3月に初の全国流通盤となるシングル「YOU」を発表した。同年9月に橋本がグループを卒業し6人体制に。2016年3月に1stアルバム「アワー・ソングス」をリリースしたあと、6月には野本ゆめか、原田珠々華の2名が新メンバーとして加わった。2017年4月、レギュラー公演「アイドルネッサンスを届けるネッサンス!!」にて、小出祐介(Base Ball Bear)が手がけるグループ初のオリジナルソング「交感ノート」を初披露。8月にはオリジナル楽曲のみ4曲を収録したミニアルバム「前髪がゆれる」を発表した。
小出祐介(コイデユウスケ)
小出祐介
1984年12月9日、東京生まれのアーティスト。2001年にBase Ball Bearを結成し、高校在学中から東京都内のライブハウスを中心に活動を始める。2006年4月にミニアルバム「GIRL FRIEND」でメジャーデビューを果たし、2010年1月には初の東京・日本武道館単独公演を成功に収めた。バンドのみならず作詞・作曲家としても活動し、アップアップガールズ(仮)、東京女子流、チームしゃちほこ、南波志帆、山下智久、KinKi Kidsら多数のアーティストに楽曲を提供している。Base Ball Bearは2017年4月には最新オリジナルアルバム「光源」をリリース。8月に発売されたアイドルネッサンス初のオリジナルシングル「前髪がゆれる」では全4曲の作詞・作曲を手がけている。