音楽ナタリー Power Push - 早見沙織

ライブモードのミニアルバムでつなぐ 私の“これまで”と“これから”

早見沙織が提供できるライブの楽しさ

──特典のライブ盤のほうのお話も聞かせてください。ライブCD(11月3日の東京・ステラボールでのライブを収録)を聴く限り、超楽しそうで、かつ非常に堂々としてらっしゃいました。

「早見沙織 1st Concert “Live Love Laugh”LIVE」東京・ステラボール公演の様子。(撮影:西原史顕)

超楽しかったのは事実なんですけど(笑)、一方でとっても緊張してました。特にツアー初日、10月14日の大阪NHKホールは。なにしろ1人で2時間もステージに立つというのが初めてだったので、ライブの絵面というか、自分が2時間歌っている姿が全然イメージできなくて。なので、知らないドア開けて知らない道を歩いてる感じ。その緊張感は最終日の品川公演まで残ってました。ただいざライブが始まってちゃうと、本番中は「うおー!」って駆け抜けた感じかなと。

──あと、お客さんがすごく礼儀正しいというか、真剣に聴いてるのが音だけでも伝わってくる気がして。それでいて、ライブ後半の「僕らのアンサー」などではめちゃくちゃ盛り上がっています。そのあたりちゃんと“わきまえて”らっしゃるというか、聴き方を知っているというか。

そうなんですよ。でも、それもライブが始まるまでまったく予想できなかったことで。なんとなく「『僕らのアンサー』では、お客さんに席から立ってもらおうかな」くらいのことは考えてたんですけど、まさかお客さんのほうから盛り上げてくれるとは。だから、お客さんと一緒にライブを作っていったような感覚がありますね。

──そういうものなんですね。むしろ曲が発するメッセージに説得力があるから、お客さんもそのマナーに則って聴いている。言葉を選ばず言ってしまえば、早見さんが教育してるんじゃないか、とも思ったんですけど……。

あはは(笑)。もちろん、セットリストは「どうやったらお客さんは楽しめるだろう?」って話し合いながら考えながらを組みましたけど、「こう乗ってくれ」ってお願いや強制はしてないですね。だから本当にお客さんには感謝です。

──あと「僕らのアンサー」に関連する話をすると、その直前に「Secret」「ESCORT」「eve」というジャズナンバー3連発を歌ってますよね。それで盛り上がるためのお膳立ては十分できていたのではないかと。

だとしたらうれしいですね。私自身もちょくちょくライブに行くので、自分が楽しかったライブはよく覚えてるんです。だからこそ、自分がいざやるってなったときに「どうやったらいいんだろう?」「どうしてあんなに楽しかったんだろう?」って思ったりしてて。

──「この人たちはどうして私をあんなに楽しませられたんだろう」って。

でも、例えばロックのライブの楽しさと、自分が提供できる楽しさは同じではないし……じゃあどういうステージができるのかなって考えたときに、結局、今ある楽曲が醸し出す空気感やイメージを、ステージ上でさらに広げていくのが正解なのかなと思って、ああいう感じになりました。

ネロになった気分で歌った場所へ、再び

──インタビューの冒頭で、今回のミニアルバム「live for LIVE」の収録曲をまたライブで歌うことによって、過去のライブとは違う完成形ができるとおっしゃっていました。で、直近のイベントとして、12月25日にゲートシティ大崎でリリース記念アコースティックライブがありますね。

そうなんですよ。クリスマス当日ということもあり、どうしようかなと思ってて。でも、5月に1stアルバムをリリースしたときも同じゲートシティ大崎でアコースティックライブをやらせていただいたんですけど、そのときのめちゃめちゃいい記憶が残ってるんですね。

──あそこって、けっこう度胸が試される場所ではないですか?

はい、めっちゃ緊張もしましたよ。ショッピングモールのど真ん中で、おじいちゃんおばあちゃんもいたりして。すぐ脇にテラス席のあるカフェとかもあって。

──つまり、早見さんのファンだけが集まっている環境ではない。

そう。歌ってるときに、普通にお買い物してエスカレーターで降りてくる人たちと目が合ったり(笑)。だからすごいドキドキして、「上手くいくのかな?」ってずっと心配だったんですけど、あの場の空気感がとっても好きで、教会で歌ってるみたいなんですよね。

──吹き抜けだから天井も高いですし、音の鳴り、リバーブのかかり方なんかは確かに教会っぽいですね。

そのときはお昼に歌ったんですけど、よく晴れた日だったんで、パーっと陽の光が射してきて。なんだろう、「パトラッシュ?」みたいな?(笑)

──それ死んじゃうやつじゃないですか(笑)。

ホントに光がきれいで音もよく抜けるし、ネロ的な気持ちで歌いました(笑)。なので、今度のライブも楽しみです。もう年末ですし、私にとっても皆さんにとっても、今年を締めくくるいいライブになればいいなと思っています。

来年、なんらかの重大発表が!?

──その流れで来年の抱負もお聞きしてよろしいですか?

今年は、特に音楽面においては未知のことをたくさん経験した年だったんです。シングルやアルバムのリリースにまつわる諸々のイベントもそうですし、もちろんツアーもそうですし。でも来年は、自分にとって今年以上に大きな意味を持つことがたくさん起こってくると思うので。

──それは、なにがしかの重大発表の予告と受け取っても?

予告になるかわからないですけど(笑)、徐々にそれが見え始めてきてるので、今はツアー初日、10月の大阪ライブの前日のような気持ちにまたなりつつあって。だからこそ、今回出した楽曲たちに助けられながら、また「ふりだし」に戻ったりしながら、一歩一歩前に進んでいきたいです。

1stミニアルバム「live for LIVE」2016年12月21日発売 / ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
CD+Blu-ray盤 [CD+Blu-ray+特典CD2枚] 7344円 / 1000636464
CD+DVD盤 [CD+DVD+特典CD2枚] 6264円 / 1000636465
CD盤 [CD] 1944円 / 1000636466
CD収録曲(共通仕様)
  1. ふりだし
    [作詞:早見沙織 / 作曲:ヤナガワタカオ / 編曲:渡辺拓也]
  2. 雨の水平線
    [作詞:早見沙織 / 作曲:早見沙織・矢吹香那 / 編曲:前口渉]
  3. Secret
    [作詞・作曲:川崎里実 / 編曲:大久保薫]
  4. eve
    [作詞・作曲:矢吹香那 / 編曲:前口渉]
Blu-ray / DVD収録内容
  1. Overture –Live Love Laugh–
  2. NOTE
  3. やさしい希望
  4. 水槽
  5. MC1
  6. ふりだし
  7. その声が地図になる
  8. 雨の水平線
  9. あるゆらぐひ
  10. HAYAMInst.
  11. レンダン
  12. MC2
  13. Secret
  1. ESCORT
  2. eve
  3. MC3
  4. 僕らのアンサー
  5. where we are
  6. Installation
  7. MC4
  8. LET'S TRY AGAIN
  9. ブルーアワーに祈りを
  10. MC5
  11. 星になって –ENCORE–
  12. MC6
  13. To years letter –ENCORE–
特典CD(DISC 1)収録曲
  1. Overture –Live Love Laugh–
  2. NOTE
  3. やさしい希望
  4. 水槽
  5. ふりだし
  1. その声が地図になる
  2. 雨の水平線
  3. あるゆらぐひ
  4. HAYAMInst.
  5. レンダン
特典CD(DISC 2)収録曲
  1. Secret
  2. ESCORT
  3. eve
  4. 僕らのアンサー
  5. where we are
  6. Installation
  1. LET'S TRY AGAIN
  2. ブルーアワーに祈りを
  3. 星になって –ENCORE–
  4. Installation(Acoustic) –ENCORE–
  5. To years letter –ENCORE–
早見沙織 MINIアルバム「live for LIVE」発売記念 アコースティックライブ

2016年12月25日(日)
東京都 ゲートシティ大崎 アトリウム

早見沙織(ハヤミサオリ)

東京都生まれの声優・ボーカリスト。2007年の声優デビュー後、アニメ「セキレイ」の結、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の鶴見知利子、「物語」シリーズの斧乃木余接、ゲーム「ラブプラス」シリーズの高嶺愛花など、毎シーズン主要キャラクターの声を数多く務め、またそれらキャラクター名義で歌う膨大なキャラクターソングにおいて、その歌唱力を高く評価される。2015年8月に自身がヒロイン役を担当するアニメ「赤髪の白雪姫」のオープニングテーマにして自作詞曲「やさしい希望」で待望のアーティストデビューを果たし、翌2016年2月には自作詞・自作曲による両A面シングル「Installation / その声が地図になる」を、5月には初のフルアルバム「Live Love Laugh」を発表。同年秋にこのアルバムを引っさげて全国3会場を回るツアーを開催する。そして12月、そのツアーのために書き下ろした楽曲を集めた1stミニアルバム「live for LIVE」をリリースした。