音楽ナタリー Power Push - 田中和将(GRAPEVINE)×高野寛

ポップ職人がもたらした 普通じゃない化学反応

GRAPEVINEがニューシングル「EAST OF THE SUN / UNOMI」をリリースした。音楽ナタリーでは田中和将(Vo, G)と今作のプロデュースを担当した高野寛の対談を企画。イベントでの共演経験がきっかけで距離を縮めたという両者にシングル制作の背景を振り返ってもらったほか、高野にはプロデューサーという立場から見たGRAPEVINEのメンバー評を聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 入江達也

 
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注目したのはアウトした部分

──GRAPEVINEが高野さんにプロデューサーをお願いするのは今作が初めてですが、両者はどういうきっかけで知り合ったんですか?

左から田中和将(Vo, G)、高野寛。

田中和将(Vo, G) 山口洋(HEATWAVE)さんが主催の「MY LIFE IS MY MESSAGE」というイベントに呼ばれたとき、出演者一覧を見てたらそこに「高野寛」って書いてあったのを見つけて。以前から好きだったので初対面でしたが「よかったら一緒に1曲やりませんか?」と声を掛けたのが最初ですね。

高野寛 そうそう。リハの前に連絡が来て。セッションも楽しかったし、イベントの日は盛り上がったよね。

田中 盛り上がりましたね。

高野 意外だったし、僕にとってうれしかったのは、田中くんが「アート・リンゼイとのインプロヴァイゼーションの動画がよかったから」と声を掛けてくれたことなんですよ。

高野 僕は「ポップ職人」なんて呼ばれたりしてポップな部分が一番目立っていると思うんですけど、アート・リンゼイとのセッションに注目してくれて。イベントでの共演も楽しかったし、あの日でだいぶ打ち解けましたね。まあ田中くんはすっごい飲んでたんですけど(笑)。

田中 すいません(笑)。それでイベント当日の楽屋裏で「ちょっとプロデューサーを探しているので、今度お願いするかもしれません」と声を掛けていたんです。

──1月にリリースしたアルバム「Burning tree」がひさびさのセルフプロデュースによる作品でしたが、なぜ今回またプロデューサーを迎えて作品作りをしようと思ったんですか?

田中 セルフプロデュースの作品が続いていたので飽きるかなと。また同じ作り方でもいいんですけど、そろそろ第三者の視点を入れたいなと思ってたんです。ただ世の中にいろんなプロデューサーの方がいる中で、自分たちの作品をお願いするなら信頼できて好きな人のほうがいいなと。高野さんが単なるポップ職人だったら、おそらく今回お願いしていなかったと思います。ギタリストとしてアート・リンゼイと一緒にやってたようなアウトした部分を持っていて、かつポップの要素も持っている。どちらも兼ね備えているところが非常に魅力的だと感じていたんです。

高野寛がもたらした化学反応

──高野さんがバンドをプロデュースするとき、まずはどういう工程から作業に入るんですか?

高野寛

高野 僕がバンドのプロデュースをする場合は、まずメンバーやバンドを知ることから入るんです。彼らが何を僕に期待しているのか、バンドで欠けている部分があれば、どういう形で自分が補完できるのか、そういうことを考えながら。だから最初にプリプロを何度か覗きに行って、バンド内のルールみたいなものを把握しようとしたりして。まあ最初は気を使いますよね(笑)。

田中 バンドには暗黙のルールみたいなものがやっぱりありますからね。そういう空気感の中に入ってプロデュースするのは大変なんだろうなあと思いつつ、最初は僕らもちょっと緊張しながら招き入れてるんです。

高野 でも段々回を重ねるうちに見えてくるものがあるんですよね。今回は亀井(亨 / Dr)くんが作った曲のメロディと僕のポップ感、そこにGRAPEVINEとしてのロック観みたいなものが合わさると化学反応が生まれるんじゃないかと思えてきて。みんなもね、「新境地が見えた」みたいに盛り上がる瞬間があったし。

──バンドとしての新境地は見えましたか?

田中 新境地っていうほど大げさに言っていいのかどうかわからないですけど、今回はいろいろ新しいことがやれたと思ってますね。

──1月にリリースされたセルフプロデュースのアルバム「Burning tree」は、ウォータードラムを使った楽曲などいろいろ新しい試みが盛り込まれた自由度の高いアルバムでしたが、今作は音数を抑えている印象を持ちました。

高野 「UNOMI」に関しては変な音も入れているんですけど、音数が多くても全体で聴くとわりとすっきり聴こえるっていうのを僕が無意識に目指しているからかもしれません。それとGRAPEVINEの場合は、ずっと同じメンバーでやっているバンド然としたバンドだから、全員の顔が見えるような音で構成したいなと思って。だからあまりライブで再現できなくなるようなデコレーションはしたくなかったんですよ。

田中 でもカップリングの「UNOMI」では、高野さんもギターで参加してもらってるんですよ。弾くというか、擦ったり叩いたりしてもらったんですけど。

高野 擦りました(笑)。これはさっき話に出てきたアート・リンゼイとのセッションの延長上にあるものですね。いろいろ試している中で入れた音なんだけど、あるとないとではけっこうイメージが変わる、いいサウンドを添えられたと思っています。

田中 うん。けっこう雰囲気を支配してるんですよ。この音が。

GRAPEVINE ニューシングル「EAST OF THE SUN / UNOMI」2015年12月2日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
初回限定盤 [CD+DVD]1944円 / VIZL-993
通常盤 [CD]1080円 / VICL-37119
CD収録曲
  1. EAST OF THE SUN
  2. UNOMI
初回限定盤DVD収録内容
  • LIVE IN VICTOR STUDIO presented by J-WAVE 「Hello World」
  1. スロウ
  2. 風待ち
  3. YOROI
  4. FLY
  5. 豚の皿
  6. なしくずしの愛
  7. 光について
  • VIDEOVINE vol.3
GRAPEVINE(グレイプバイン)
GRAPEVINE

田中和将(Vo, G)、西川弘剛(G)、亀井亨(Dr)の3人からなるロックバンド。1993年に元メンバーの西原誠(B)を含めた4人で結成。1997年にミニアルバム「覚醒」でデビューし、1999年リリースの3rdシングル「スロウ」が大ヒットを記録する。2002年に西原がジストニアのため脱退して以降は、高野勲(Key, G)、金戸覚(B)をサポートメンバーに加えた5人編成で活動を続けている。2010年にはギタリスト / プロデューサーの長田進と「長田進 with GRAPEVINE」名義でアルバム「MALPASO」を制作。2012年にメジャーデビュー15周年を迎え、9月に初のベストアルバム「Best of GRAPEVINE 1997-2012」を発表した。2014年11月にビクターエンタテインメント内のSPEEDSTAR RECORDSへ移籍し、2015年1月に移籍第1弾シングル「Empty song」収録曲を含むニューアルバム「Burning tree」をリリース。また同年12月に高野寛をプロデューサーに迎えて制作されたシングル「EAST OF THE SUN / UNOMI」を発表した。

高野寛(タカノヒロシ)

1964年生まれ。1988年に高橋幸宏プロデュースによるシングル「See You Again」で鮮烈なデビューを飾る。1990年にリリースした「虹の都へ」のヒットにより、一躍脚光を浴びる存在に。90年代後半からはソロのみならず、ギタリスト/プロデューサーとしての活動をスタートさせる。また2000年に入ってからは、BIKKE(TOKYO No.1 SOUL SET)、斉藤哲也とともに結成したNathalie Wise、宮沢和史率いる多国籍音楽集団GANGA ZUMBA、高橋幸宏が結成したpupa(ピューパ)など、複数のバンドやユニットに参加。また2014年にはブラジル滞在中に自身が撮影した写真によるフォトエッセイ集「RIO」を刊行するなど、豊かな才能をさまざまな形で発揮し続けている。