音楽ナタリー PowerPush - Goose house
“甘み”と“苦み”2作に込められた、多彩な音楽性
歌い手をイメージし、個性を際立たせる
──各メンバーが持つ個性や、それを1つにまとめるスキルが前作からの1年半でさらに研ぎ澄まされたところもあったのではないですか?
マナミ まとまりは多少出てきたのかな。
一同 多少!?(笑)
マナミ いや、なんか今まではいい意味で「絵の具をごちゃごちゃに混ぜました」みたいなところがあったけど、今は多少色がちゃんと分かれてきたというか。前のアルバムに比べると多少まとまりが出たよね。
工藤 「多少」を推しすぎでしょ(笑)。でも確かに、去年1年間はメンバーそれぞれがお互いのことをより深く知ろうとする時間だったように思うんですよ。一緒にツアーを回りましたし。例えば「彼女、彼がこういう曲を歌うとすごく合うんだなあ」とか、そういうことを感じながらライブをし、日々練習していたので、それが今回のアルバムに生かされたところはあったと思いますね。
ワタナベ メロディを作っている段階で「これはこの人に、こういうふうに歌ってほしいな」っていう明確なイメージがより出てくるようになりましたからね。「このメロディならこの人が絶対ハマるな」とか。
齊藤 そこもボーカルが7人いるグループならではですよね。自分が作曲した曲をほかのメンバーに歌ってもらったりするので。
工藤 意外と曲を作った人がボーカルを取っていないことが多かったりするんですよ。
齊藤 そうそう。わりと職業作曲家的に、歌い手をイメージして書くことが多いというか。
──なるほど。
マナミ そういう作曲家的な感覚は前回よりも強かったもんね。今回はどの曲も歌っている人の個性がより際立ってるなと思います。
ワタナベ 中には女子に歌ってほしかったけど、男子が歌うことになったっていう曲もあるし。そういう変化球みたいなものがいいほうに転がることもありますから。
工藤 そこも自由に試してみる感じですね。急きょ女子に歌ってもらうことになって曲のキーが一気に上がることもあったし。
竹渕 それもレコーディング当日とかにね(笑)。
マナミ あったねえ。今回そういうことがけっこう多かった。
やりたいことも、やれることも増えていた
──先ほど工藤さんが「まとめるのが大変」とおっしゃっていましたが、具体的にはどうやって各々の個性やアイデアを1曲に落とし込んでいくんですか?
工藤 そこは結局、メンバー全員で何回もディスカッションして決めていく感じですね。それを地道にやっている。
齊藤 最初に曲の指標を決めることに時間をかけていますね。どんな意味を持つ曲なのか、何を伝えたい曲なのか、そういう最初のイメージプランをじっくり話し合って決めていくんです。で、そこが定まれば、細かい部分でのああだこうだはわりとスムーズにクリアしていけるというか。
竹澤 曲のタイプによってそれぞれ得意分野が分かれているので、そこに合った人が引っ張っていくところもありますね。
齊藤 ディスカッションで煮詰まってきたときに、いきなりジャーンとギターを弾いて「こんな感じはどう?」ってやることもあるし。
マナミ それやるのはほぼジョニーだけどね(笑)。
齊藤 あははは(笑)。でもそういうことで話がまとまることもある。やり方は曲によっていろいろですね。
ワタナベ 今回の作品では1年半前だったらうまく形にできなかったであろうことが、今だからこそやれたっていう曲がすごく多かったように感じたんですよ。やりたいこと自体増えていたし、同時にやれることもしっかり増えていたというか。
齊藤 そういう意味では今の自分たちの身の丈にあった曲をプレイできているなって思いますね。例えばシンセのピコピコした音だって、結成当初だったら絶対使ってなかったと思う。昔なら違和感があったことも、今なら自然と受け入れられるというか。そういう「今の音を鳴らす」感覚はGoose houseとしてこれからも大事にしていきたいですね。
Gooseの持つ楽しさを凝縮した「Milk」
──「Milk」は女性陣がボーカルを取る曲が多く、全体的にガーリーな印象がありました。
竹渕 確かにそうですね。意識したわけではなかったんですけど。
マナミ そういう曲が集まったね。
齊藤 世の中的に女の子が元気なほうがいいじゃないですか。女の子が元気じゃないと盛り上がらないですよねっていう。「Milk」にはスピーディに世の中に広がってくれるであろう、ポピュラーソング的な要素を込めたところもあったので、それが女子の声とうまいことマッチしたんだと思います。それが一番集約されているのが「Pop Up!」という曲かもしれない。
工藤 そうだね。あの曲は女の子の応援歌ですから。
──同時にGoose houseというグループの持っている楽しさもぎっしり詰め込まれていますよね。
工藤 詰まってますねえ。クラップの録音にもすごい時間をかけましたから。より生っぽくするためにちょっとクラップをズラしてみようか、みたいな(笑)。
マナミ 深夜にやったガヤ録りも楽しかったよね。
ワタナベ この人(工藤)だけものすごく元気だったよね。ガヤ録りしてるときブースの外でずっと踊ってるし、変な言葉をかけてきたりするし(笑)。
工藤 そこはね、みんなが自然体でガヤ入れできるようにムードを作ったんですよ。リーダーなんで(笑)。
──先行配信されている「コバルトの街」は、男性目線の歌詞を女性だけで歌った曲ですよね。あえて異性の組み合わせを採用したのが印象的でした。
竹渕 そこもGooseの面白さで。「コバルトの街」とは逆に、女の子目線の曲を男の子が歌うことでより伝わりやすくなる場合もあるし。そういう部分でもいろいろ試せるのは本当に強みだと思います。私的には、女の子の声がたくさん入った「Milk」というアルバムが、男子だけの声で歌われる「笑ったままで」で終わるところにすごくグッときちゃいましたね。歌入れが終わったあとみんなで聴いたときに、私はボロッボロ泣いちゃいました。「やられたなあっ」ていう。
工藤 今回は曲順を決めるのにもすごく時間をかけたんですけど、最初は男だけで歌う曲で終わるのはないだろうなって思ってたんですよ。でも実際に並べてみて、通して聴いてみたら「これじゃない?」っていう感じになって。パズルのピースがぴったりハマッた感じがしましたね。
マナミ 確かに。おいしいよね、最後。
齊藤 アルバム全体としてもそうだし曲単位でもそうなんですけど、Goose houseにとってはボーカルの切り替えや組み合わせがすごく大事なんですよね。そこをうまくやっていくことで、リスナーに飽きずに聴いてもらえると思うので。そこもうちら独自の作曲法だと思います。
──沙夜香さんは「Milk」の中で思い入れの強い曲はありますか?
沙夜香 私は「L.I.P's」が好きですね。アレンジがすごくかわいいし、そこにマナミの声がマッチしてるから。キラキラしてて、すごく心に染みる曲だなって思います。
ワタナベ この曲はバンジョーの音を入れたんだよね。初バンジョー。
齊藤 バンジョーを入れたのは僕のアイデアなんですけど、これもやってみてうまくいった例の1つで。この曲は最初のデモからかなり大きく変わりましたね。2コーラス目のAメロの1行だけにあえて男の声を差し込んでいる歌い分けもいいんじゃないかな。
次のページ » チャレンジ盛りだくさんの「Bitter」
- ニューアルバム「Milk」2015年2月25日発売 / ソニー・ミュージックレコーズ
- ニューアルバム「Milk」
- 初回生産限定盤 [CD+DVD]3000円 / SRCL-8750~1
- 通常盤 [CD] 2700円 / SRCL-8752
CD収録曲
- 光るなら
- オトノナルホウヘ→
- 恋するMerry-Go-Round
- コバルトの街
- Perfume
- Pop Up!
- L.I.P's
- 笑ったままで
初回限定盤DVD収録内容
- 「オトノナルホウヘ→」MV
- 「光るなら」MV
- TVアニメ「四月は君の嘘」ノンクレジットOP
収録曲
- Sing 2015
- ドミノエフェクト
- ハルノヒ -合唱-
- Humming bird
- トーキョー・シティ
- セダンガール
- シオン
- 未来の足跡
Goose house(グースハウス)
シンガーソングライターの工藤秀平、竹渕慶、竹澤汀、マナミ、沙夜香、ワタナベシュウヘイ、齊藤ジョニーの7人からなる音楽グループ。ソニーのポータブルプレーヤー「ウォークマン」の「PlayYou.House」での活動を引き継ぐ形で2011年に結成された。UstreamやYouTubeを用いてオリジナル曲やカバー曲の演奏を披露。2012年5月に初のフルアルバム「Wandering」を完成させた。2014年にはソニー・ミュージックレコーズ内レーベル、gr8!recordsより2月にシングル「オトノナルホウヘ→」、11月にシングル「光るなら」を発表。2015年2月にgr8!recordsよりアルバム「Milk」、Goose houseよりアルバム「Bitter」の2枚を同時リリースする。