本当は殴りたかったんじゃないかなって

──ちなみに、中川さんの方から「甘宿り」についてご本人に確かめたいこと、訊いておきたいことはありますか？

中川　これはどの程度実体験が入ってるんですか？ ゼロから考えられるとしたらすごいなと思っちゃったんですよ。

DECO*27　この歌詞の内容そのままを体験したことはなくて、僕の理想が100％詰まってる感じですね。雨が好きだから、こういうシチュエーションがあったらいいなって。

中川　物語としてこれが書けちゃうって、やっぱすごいなあ。あと、人間の声を扱うときって、ボカロと違ってイライラしませんか？ 殴りたくなりませんか？

──殴りたくなる（笑）。

中川　「そうじゃねえよ！ こういう声が欲しいんだよ！」って。出したい音とかイメージする声の感じとか、ちょっとしたことで歌の感じも変わっちゃうと思うから。実は「甘宿り」ってどういうふうに歌えばいいか最初全然わかんなくて。優しく甘く、でもわざと甘くするんでもなく、みたいな……。言葉で言うのは難しいですが、今までやったことない表現で。歌っていてすごく心地良かったんですけど、それを見つけるまで結構「どうしたらいいのかな」って悩んでたから、本当は殴りたかったんじゃないかなって。

DECO*27　全然、全然。

中川　人間の声の良さってなんですかね？

DECO*27　良いところは、やっぱり感情をしっかり乗っけてくれるところ。ボーカロイドだったら自分でなんとかして感情を乗せるんですけど、やっぱり100％人間の感情が乗ることはないですし。ボーカリストの場合だと、その人が送ってきた人生が乗っかってきた上で返ってくる。何より、一緒にやっていく中で協力しながら一番いいイメージに近付けてくのが楽しいんです。だから全然、そんな殴りたいなんてことはないですよ（笑）。

中川　よかったー。申し訳ないなと思っちゃって。自分でもなかなかコントロールがうまくいかなかったりすると、自分で自分を殴りたくなることがよくあるんですよ。レコーディングしてて。

DECO*27　あはははは（笑）。結果すごくいいものができたなと思います。

中川　最終的にミックスされたものを聴くとまた違ってて、「こうなったんだ！」ってびっくり。出来上がる過程を一緒に見ることができたのも楽しかったですね。

江の島で貝拾い

──では逆に、DECO*27さんから中川さんに訊いておきたいことがあれば。もしかしたら今後、3曲目、4曲目とコラボが続くかもしれませんから、そのためにもぜひリサーチしておきましょう。

中川　それはもうぜひともお願いしたいです。

DECO*27　じゃあ……恋人とデートに行くとしたら、どこに行きたいですか？

中川　えー！ いっぱいありますけど、江の島に貝を拾いに行きたいですね。貝拾いです。

DECO*27　僕も最近江の島ブームが来てて。今放送してる「TARI TARI」ってアニメの舞台が江の島だったり、気になるんですよ。友達もけっこう住んでるし。

中川　最近のアニメだと「つり球」も江の島ですよね。江の島ブームがアニメ界にも。昔から江の島には何度も行ってて。泳いだことは1回もないんですけど（笑）、貝を拾うのが大好きなんです。図鑑と照らし合わせて「この貝、欠けてるけどおそらくこれだろう」みたいな。

DECO*27　あははははは（笑）。

中川　クサフグの産卵時期はびっしりフグだらけになったりとか。貝拾いではツメタガイって貝を主に拾うんですけど、西浜の橋をくぐって東浜のほうに行ったときに、ほら貝を拾ったことがあって。それはすごい衝撃でしたね。そのほら貝はいまだに宝物です。だから、デートだったらまず恋人と江の島で貝を拾いたいですね。

──「これかわいいー」みたいな貝拾いではなく、専門的かつ本格的なやつですね（笑）。

中川　黙々と。それに臭いんですよ。磯臭い。江の島をもっと登ってくと、猫がいっぱいいる場所があったり、ワッフルが美味しいカフェとかあるらしいんですけど、いつもしらす丼とかのお店しか入んない（笑）。たまにはロマンティックな江の島も回ってみたいですね。あと、昔から後楽園ゆうえんち（現：東京ドームシティアトラクションズ）が大好きで。スカイフラワーっていうパラシュートみたいな乗り物があるんですけど、いつかそれに恋人と乗って、てっぺんでキスをするのが子供の頃からの夢です。一度ここでイベントをやらせていただいたことがあるんですよ（参照記事：ナタリー - 中川翔子レベル25記念ライブで幕張メッセ2DAYSを発表）。自分がキューピッドになって、カップルたちに「てっぺんでキスしなさい」とか命令出したりして。それがきっかけでファン同士付き合ったり、結婚して出産した人も結構いるんです。

DECO*27　ええっ！

中川　ライブに子供連れで来てくれたりとか……うらやましくてうらやましくて。私はなんにもないのに、みんながどんどん出来上がって（笑）。だからその夢は叶えたいですね。

DECO*27　今日の話で、さっそく江の島で貝を拾う歌が書けそうだな。

中川　パラシュートで飛んでって空でチューする曲もお願いします！

DECO*27　ええ（笑）。いいヒントになりました。

中川　本当ですか？ 書いていただきたいです。「甘宿り」でやっと念願のガーリー成分がきたって感じだったので。それをすごく求めているので、ぜひとも。その世界観をシングルでやってみたいんですよね。シングルだと死に別れが多いから。

DECO*27　あははは（笑）。

中川　ほぼ死に別れ。だからラブラブな感じを歌ってみたいです。

DECO*27　全然やります。忙しくても、ゲームをいったん封印する勢いで。

中川　ただちにお願いしたいです、本当に。

DECO*27　僕もただちに書きたいです。

みんなが幸せになるって素晴らしいこと

──こうやって話してみると、共通点も、お互い刺激を受ける部分もたくさんありそうですね。

中川　改めてもっとがんばろうと思いました。これまでを振り返っても、人生がなんだかカラッカラだなと思ったので（笑）。ちゃんと恋をしたいなと思いました。そうじゃないと人生もったいないなって思わせてくれるくらい、「甘宿り」は本当にかわいらしい世界観で。「もっとガーリーになりたい」っていう女子はこの曲で気が引き締まると思うし、恋人たちはちゃんと相手を大事にしようって思えるだろうし、片思い中の人は「がんばろう！」って思えるだろうし、傷心の人は「もっといい恋してやる！」って歌に励まされるだろうし。みんなが幸せになるって素晴らしいことですよね。

DECO*27　僕がアルバムで伝えたいことを翔子さんが全部言ってくれたんですけど（笑）。

──すごいプロモーション力（笑）。

中川　「甘宿り」が私の人生の足りない成分に気付かせてくれました。枯れてたサボテンに水をくれたみたいな。鉢植えにさすあの緑の栄養のやつとか。

──緑のやつ（笑）。

中川　すごいよみがえりました。「私……まだ咲いてたんだ」みたいな。

──10周年のタイミングでこれが来たっていうのがいいですね。

中川　自分が吸収したいもの、必要なものってこういうことだったんだっていう感じですね。目が覚めたというか。私もライブで歌ったりしていいでしょうか？

DECO*27　ああもう、ぜひぜひ歌ってください。

中川　いつかステージで歌うときのために、情景が浮かんでくるような歌い方ができるように特訓しておきたいなと思います。

DECO*27　楽しみにしています！