音楽ナタリー Power Push - アニメ「コメット・ルシファー」菊地康仁監督×大橋彩香対談

物語とともに成長するヒロインと音楽

即興的なストーリーテリングのほうが楽しいじゃない

ガーディアン

──ファンタジー感あふれる世界とリアリティのある世界、2つの文化が交錯する中でロボットバトルが繰り広げられることになる感じですか?

菊地 いや、実はそのロボットもの、バトルものという側面は、物語上そんなに重要じゃないんです(笑)。たまたまモウラやガーディアンのような存在がいて、また軍事産業が進んでもいる。そんな世界だったというだけなんです。

──でも第1話の時点でロボットの見せ場もいっぱいあるんですよね?

菊地 それでもあくまで“環境”の1つですね。それに“メカメカしい”アニメはほかにもいっぱいあるし、それこそ有名な作品もいっぱいあるので、今僕がやる必要はないかな、と(笑)。

──あくまで物語の軸となるのはフェリアたちの成長である、と。

菊地 はい。繰り返しになるんですけど、モウラのようなしゃべる小動物がいるファンタジー感あふれる世界と、工業が産業の中心になっているわりとリアルな世界がごちゃごちゃっと混ざり合う中で、フェリアがどう成長していくかってお話ですから。だから設定やデザインもわりとごちゃごちゃっとしているというか、流動的なんです。イメージビジュアルにしても美術ボードにしてもメカデザインにしてもそうなんですけど、各担当者がそれぞれよかれと思って提出してきたものをそのまま受け入れたりしてるんですよ。

──あえて物語全体のイメージを均質にしないようにしている?

菊地 それは音楽にしてもそうで、できるだけ日本やアメリカの匂いを感じさせないように気をつけようと打ち合わせしていますから。日本人にとって身近な音楽を使うと、観ている人のイメージが固定されてしまう。世界がごちゃごちゃっとしてくれないですから。だから劇伴作家の加藤達也さんにはラテンアメリカや中東、オーストラリアの民族楽器なんかを積極的に使っていただいていますし。大橋さんのイメージソングも、今後成長していくフェリアを演じる中でどう歌うかによって、仕上がりがどんどん変わっていくでしょうし。それもすごく楽しみにしています。

大橋彩香

大橋 すごい! まさにオリジナル作品ならでは、即興的に物語ができあがっていっているというか。

菊地 そっちのほうが楽しいじゃない(笑)。みんなでいろんなアイデアやテクニックを持ち寄って作ったほうが。少なくとも僕の性にはそっちのほうが合っているんですよ。アニメ本編も、芯には「成長」というテーマがあるんですけど、話数によってとにかくいろんなことをやっていくつもりですし。SFだから、とか、ファンタジーだからとか、バトルものだから、とか、あんまり先入観を持たずに好きなように観ていただきたいですね。ぜひメシでも食べながら、何も考えないで観てほしい。ドタバタしたごった煮の世界を「ああ、今日も面白かったな」くらいの感じで受け取ってもらえたらいいですね。

大橋 この先、そんなにいろんな展開が待ってるんですか!?

菊地 大橋さんにはまだ内緒ですけど、用意してますよ(笑)。

──大橋さんもまたスタッフさんと同じように、“即興的”なお芝居が求められそうですね。

大橋 緊張しますねえ(笑)。今日のアフレコも即興的というか、自分の中の新しい引き出しを開いた感じでしたし。これまではわりと年相応というか、自分とそんなに変わらない年齢のキャラクターを演じることが多かったから、生まれたばかりのフェリアみたいな幼い感じの女の子を演じたのは初めてで。子供の頃に返ったみたいな気持ち……考えるより先に身体を動かすというか、瞬発力で演じてみたんですけど、いやあ、この先ホントにどうなるんでしょうね(笑)。視聴者の皆さんと一緒に、フェリアという女の子の性格をつかんでいきたいです。

左から菊地康仁、大橋彩香。
テレビアニメ「コメット・ルシファー」 / 10月より放送開始
「コメット・ルシファー」

青く輝く鉱石ギフトジウムに覆われた惑星ギフトと、そのギフトジウムの採掘で栄える街ガーデン・インディゴを舞台に繰り広げられる少年少女の冒険譚。ガーデン・インディゴの少年ソウゴ・アマギやその仲間たちと、鉱石の中から現れた謎の少女フェリアとの出会いと、それがもたらす若者たちの成長と絆を描く。

メガホンを取るのは菊地康仁。「マクロスF」など、本格的なメカバトルと音楽を効果的に使った演出で知られる監督作とあり、巨大ロボット・ガーディアンらを巡る戦闘シーンと、ストーリーの進行にあわせてフェリア役の声優・大橋彩香が歌うエンディングテーマが変化する点も注目ポイントとなっている。

大橋彩香 ニューシングル「おしえてブルースカイ」 / 2015年11月11日発売 / Lantis
「おしえてブルースカイ」
彩香盤 [CD+DVD] 2160円 / LACM-14417
コメット・ルシファー盤 [CD] 1296円 / LACM-14418
大橋彩香 ニューシングル「ヒトツニナリタイ」 / 2015年12月9日発売 / Lantis
「おしえてブルースカイ」
彩香盤 [CD+DVD] 2160円 / LACM-14428
コメット・ルシファー盤 [CD] 1296円 / LACM-14429
大橋彩香(オオハシアヤカ)
大橋彩香

1994年東京都出身の声優、ボーカリスト。2011年開催の「ホリプロタレントスカウトキャラバン次世代声優アーティストオーディション」でファイナリストに残ったことをきっかけに声優デビューを果たし、「アイカツ!」シリーズ、「エウレカセブンAO」、「ドキドキ!プリキュア」、「ファンタジスタドール」、「アイドルマスター シンデレラガールズ」シリーズなど人気作・話題作でメインキャストを多く務める。また2014年8月には自身がメインヒロイン・園川モモカ役を担当するアニメ「さばげぶっ!」のオープニングテーマ「YES!!」でアーティストデビュー。2015年2月には2ndシングル「ENERGY☆SMILE」を発表し、また同年11月にはヒロイン・フェリア役として出演するアニメ「コメット・ルシファー」のエンディングテーマ「おしえてブルースカイ」を、翌12月には同アニメのイメージソング「ヒトツニナリタイ」を連続リリースする。

菊地康仁(キクチヤスヒト)

1964年青森県出身のアニメーション監督、演出家。1990年代後半の監督デビュー以来、「異次元の世界エルハザード」、「マクロスF」、「IS 〈インフィニット・ストラトス〉」シリーズなどでメガホンを取る。2015年10月から監督を務めるオリジナルアニメーション「コメット・ルシファー」がオンエアされる。


2015年10月16日更新